第37話

歓声が鳴り止まない中アンネの周りに放った氷弾を消す。


「怪我は無さそうですね」


気絶しているアンネの身体を確認してからその場を立ち去る。

特進クラスの控え室に戻るとクラスメイトが出迎えてくれた。

どうして待ってくれているのでしょうか。


「トルデリーゼ様、おめでとうございます!」


まだ一位になったわけじゃない。それなのに控え室にいる全員からお祝いされてしまう。


「強過ぎでしょ…」

「流石リーゼ様、圧勝でしたね」


苦笑いを浮かべるのはユリアーナとフィーネだった。

彼女と話したい気持ちもあるが先にクラスメイト達にお礼を言わなければいけない。


「皆さん、ありがとうございます。でも、まだ試合は始まったばかりですから…」

「トルデリーゼ様なら優勝出来ますよ!」

「強くて格好良かったです!」


どうしてか握手を求められる。

凄いのでしょうか…?

よく分からないが普段遠巻きにされているクラスメイトと仲良く出来るのは嬉しい。

折角の機会だからもっと仲良くなりたいですね。


「あの、もし良ければ…」


私が話し始めるとその場にいる全員から注目を受ける。有り難いけど全員から見られるとちょっとだけ言い辛くなってしまう。しかし言わないと始まらない。


「私の事は、その…リーゼと呼んで頂けると嬉しいです!よろしければ仲良くしてください!」


こういうのは慣れてないので恥ずかしい。

じんわりと頰が熱くなっていく。見えないが真っ赤になっているだろう。


「リーゼ様、かわいい…」

「殿下も惚れるわけだ」

「ベルンハルト殿下が羨ましい…」


小さな声が聞こえてくるが上手く聞き取れない。駄目だったのだろうか。もし拒否されたらしばらく落ち込む。


「リーゼ様、こちらこそよろしくお願いします!次の試合も頑張ってくださいね!」


息ぴったりですね…。

一斉に言われた言葉に驚くがそれよりも嬉しさが勝る。


「皆様、ありがとうございます!」


嬉しさのあまり満面の笑みでお礼を言った。

その瞬間、全員が息を飲み込む。


「あれはずるいだろ…」

「リーゼ様の笑顔、可愛過ぎるわ…」

「ファンクラブ作ろう!」


変な単語が聞こえたような気がするけどきっと気のせいだろう。

それよりも全員の顔が赤くなっている方が気になる。


「あーあ。リーゼ、やっちゃったね」

「え?」

「後で変態王子から変態行為をされてしまいますよ」

「どういう事?」


両隣に立って来たユリアーナとフィーネが同時に肩を叩いてくる。

気軽なユリアーナはともかくフィーネは普段そんな事をしないのにどうしたのだろうか。

私はお礼を言っただけなのに。


「いや、これはベルン様がうるさくなるよ」

「どうして?」

「みんながリーゼの可愛さに気付いちゃったからよ」


訳が分からない。

首を傾げていると後ろから低い声が響いた。


「へぇ、それはそれは…」


振り返ると試合を終えて帰ってきたベルンハルトが扉にもたれ掛かって悪魔のような笑顔を浮かべていた。

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