第34話

無事に午前の部を終えた体育祭は休み時間に入った。

特進クラスはベルンハルトとユリアーナの活躍で一位となっている。

ベルンハルトが参加したのは前世で言うフェンシングに似た競技。余裕で一位を勝ち取っていた。

五分間の剣術戦に参加したユリアーナも女子の部で圧勝していた。ちなみに男子の部の一位はディルクだ。


「意外とギリギリですね」


特進クラスは特に優秀な生徒が集められている。圧勝になるかと思っていたけどそうでもないらしい。

午前の部ではディルクが大活躍した為、彼のクラスとは僅差の点数となっているのだ。


「午後はリーゼ無双になるから大丈夫でしょ」

「しないわよ…」


楽しそうに笑いかけてくるユリアーナに苦笑いで返す。

魔力は飛び抜けていると思うけど競技では何が起こるか分からない。活躍出来るか分からない状態だ。


「いや、絶対に活躍するでしょ」

「出来たら良いけどね」


肩を竦めて笑うと「もっと自分に自信を持ちなさないよ」と背中を叩かれてしまう。


「リーゼも午前の部に出たら良かったのに」


ベルンハルトに言われるので首を横に振る。

午前も午後も出るのは勘弁願いたい。


「どこのクラスも剣と魔法の担当は分かれているじゃないですか」

「両方出ている人はベルン様くらいですからね」


ベルンハルトはミニ魔法戦にも参加するのだ。ちなみに私も同じ競技に参加することになっている。


「ベルン様とリーゼはお互いに試合が観れないですね」 


魔法戦は男子の部と女子の部の時間が重なっているせいで彼の応援が出来ないのだ。


「後で映像を見せて貰うよ」

「私も同じです」


体育祭の様子は全て録画されている。

後から見る事も可能なのだ。


「はいはい、仲良しですね~」


ユリアーナに揶揄われる。しかし揶揄われ過ぎて若干慣れてきた。

慣れちゃいけないような気がする。


「リーゼ、さっきの事はユリアーナ嬢にも伝えておこう」

「さっき?」

「また面倒な事に巻き込まれたの?」


ユリアーナの目つきが鋭くなる。巻き込まれたというか巻き込まれに行ったというか。


「私が説明致しましょう」


私の後ろで控えていたフィーネがユリアーナに事情を説明していく。

全てを聞き終えるとユリアーナは呆れたような表情をこちらに向けた。


「護衛が居ないところで面倒事に巻き込まれるのが好きなのかしら?」

「そういう訳じゃないのですが…」

「緊急時は私を呼んで。そうじゃなくても呼んで護衛の意味がなくなるでしょ」


強めに言われて「分かったわ」と首を縦に振る。

ユリアーナは陛下にも認められた護衛だ。近くに居なくて守れなかったとあっては首が飛ぶ可能性がある。考えなしの自分に呆れた。


「ごめんなさい」

「面倒臭がり屋なのに真面目で優しいリーゼが好きなんだけどね」

「ベルン様みたいな事を言わないでよ」

「あら、リーゼをよく知っている人なら誰でも思っている事よ」


どうやら私が面倒くさがり屋なのは確定らしい。淑女としては複雑だ。


「じゃあ、面倒臭がり屋なりに午後の競技は頑張るわ」


悪戯っぽく笑ってみせました。

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