第4話
いよいよ入学式の日を迎えた。
少しだけ憂鬱な気分だ。
ゲームを気にしているわけではない。電波系ヒロインが現れる事を想像しての憂鬱だ。
ベルンハルトの話を参考にすると主人公も転生者で確定している。
同じ前世持ちとして仲良くなりたい気持ちもあるけど逆ハーレムを目指す人だ。警戒してしまうだろう。
「リーゼ様、よくお似合いです。愛らしいです」
制服を身に纏った私の髪型はストレートにして貰っている。
ゲームだとガッツリ巻いてドリルになっていた。悪役令嬢にありがちな髪型。
見るだけでも変なのに自分がするのは絶対に嫌。だからストレートにして貰ったのだ。
自身の準備の為に自室に戻るフィーネ。一人になった途端に憂鬱な気分に襲われる。そのまま部屋を出るとアードリアンも自室から出てきたところだった。
在学生は本日休みとなっている。しかし春から生徒会長を務める彼は在校生代表として入学式に参加するのだ。
「リーゼ、制服がよく似合っているね。でも、その暗い表情は可愛いリーゼに似合わないよ」
フィーネの前では上手く取り繕えていたのに。
まさかアードリアンに見られるとは思わなかった。
しかし素直に話す事は出来ない。どう言い訳をするべきか。
「ありがとうございます。その、学園の事を考えていたらちょっと…」
「学園の事で不安があるの?僕が一緒だから大丈夫だよ」
私に勝手な因縁を付けてくる人が居るかもしれないから憂鬱な気分になってます。
言えない。言ったら公爵家総出で何をするか分からないからだ。誤魔化すしかない。
「緊張してるだけです」
「僕も入学日は緊張したよ」
「お兄様は新入生代表だったからもっと緊張してましたね」
アードリアンは優秀な人物だ。入学試験で一人だけ満点を出して新入生代表に選ばれた過去を持つ。
今年の新入生代表はベルンハルト。中身が大人なので勝てると思っていたけど無理だった。
魔法実技は勝てたけど筆記のせいで勝てなかったのだ。
「学園で不安に思うことがあったらすぐに言うんだよ」
「ありがとうございます」
私達が部屋の前で話し込んでいると準備を終えたフィーネが来る。学園には侍女も連れて行って良い事となっている為フィーネも一緒だ。
授業中は別行動となっている。食事の準備、身嗜みを整えて貰う為に連れて行くのだ。
「リーゼ様、ユリア様とディルク様がいらっしゃっています」
「通してあげて」
「畏まりました。それからあの王子も来ています」
「ベルン様も?」
一緒に行くと言う約束はしていないのにどうしてベルンハルトは私の迎えに来たのだろうか。
もしかして私がぼんやりしているうちに約束していたのかしら。
「来ている事をリーゼ様に伝えないように言われました」
来ている事を伝え欲しくない?
どういう事なのだろうか?
「どうしてベルン様が来ているの?」
「申し訳ございません。それは聞いておらず…」
「お兄様は何か知ってますか?」
尋ねるとアードリアンは首を横に振って「知らないな」と返された。
彼に用があるわけでもなさそうだ。本当に何をする為に来たのだろう。
「迷惑だから城に返すか」
「これから学園に行くのに…」
相変わらずアードリアンもフィーネもベルンハルトを邪魔者扱いする。
本気じゃないと分かっているので苦笑いで済ませられるのだけど。
「会えば分かりますよね」
「会うのか…?裏門から出ないか?」
裏門から出たらユリアーナとディルクに会えないじゃないですか。
何を言っているのだ。
「ユリアに会えなくなりますよ」
「うっ…」
「とりあえず下に行きましょう」
アードリアンに笑いかけると「仕方ないな」と複雑そうな表情を見せられた。
「ベルンには制服姿を見せるのは初めてですけど褒めてくれると思いますか?」
顔的に似合っているとは思うが似合っていないと言われたらしばらく引き摺ると思う。
「褒めなかったら僕が殴るよ」
「過激ですね…」
「女性の身なりを褒めるのは男性としてするべき行為です」
お世辞として褒められたいわけじゃない。褒められるなら本音として褒めて欲しい。
好きな人には可愛いと思われたいのに。
「可愛いと言って貰いたいです…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。