第2話
折角着替えようとしていたのにフィーネの言葉に乗っかったせいで制服を脱ぐ事は叶わなかった。
何回も髪型を変えられるし、それに合わせた化粧を施されていく。
それだけで終われば良かったのに。フィーネの楽しそうな声を聞きつけたアードリアンが許可なく戻って来たのだ。
結果二人による撮影会が始まった。
大量の写真を撮られているけど一、二枚あれば十分だと思う。
さっさと着替えたい。そして布団に逃げ込みたい。
「リーゼ様、次は髪を一つに纏め上げましょう!」
「もう解放して」
「駄目です。これは高く売れますから!」
私の写真をどこに売る気なのでしょうね。
そのうち珍しい物じゃなくなる制服の写真に需要はないのに。そもそも勝手に人の写真を売らないで欲しい。
「人の写真を売らないで。そもそも誰に売る気なの?」
「旦那様です」
「父様なら買ってくれそうだね。むしろ給料も上がるよ」
「ですよね」
うんうん、と頷き合わないで欲しい。
もしかして私の写真を売ってまでお金を作りたい理由でもあるのかしら。
どこかの悪い人間に騙されてお金を奪われたとか?
私の知らない誰かに貢いでいるとか?
前世の私が乙女ゲームにお金を落としていたように趣味が出来てお金が掛かっているとか?
もしかして正当な給料を貰ってないは我が家に限ってはないだろう。
「フィーネ」
「はい?」
「誰かにお金を騙し取られたの?」
「え、ないですけど」
あり得ないって顔で見られましたね。
私だってこれはあり得ないと思っていたわ。フィーネなら騙し取れそう…いや、これはないですね。
「じゃあ、誰かに貢いでるの?役者さんとか?」
それならあり得る。
フィーネは観劇に行くのが好きなのだ。たまの休みは劇を観に行ってると知っているし、感想を聞かせて貰っている。私と一緒に行く事もあるくらいだ。
「それも無いですね」
「そうなのね…」
意味が分からないって顔で見ないで欲しい。
私だってこんな事を疑いたくないのだ。
「何か趣味があってお金が足りないの?」
「私の趣味はリーゼ様鑑賞なのでお金は必要ありません。むしろお金を払わせてください」
「それを趣味にするのはどうかと思うわ。後お金は要らないから」
フィーネが私の事をよく見ているのは知っていたけど趣味にされているとは思わなかった。
私の侍女ちょっとおかしいかもしれない。
「念の為に聞くけどお父様から正当なお給料を貰ってないとか…」
「まさか十分過ぎるほど貰ってます」
「そうなの?」
「むしろ要らないと思う事の方が多いですね。私はリーゼ様のお側に居られるだけで幸せですから」
嬉しいことを言ってくれますけど。
じゃあなんで私の写真を売ってまでお金を作ろうとしたのでしょうか。
「リーゼ。フィーネは別にお金が欲しくてリーゼの写真を売ろうとしたわけじゃないよ」
「じゃあ、どうして…」
「需要があるからに決まってるじゃないですか!」
凄い勢いで怒られましたね。
確かに美人顔ではありますが自分だと考えると需要はないと思う。
着飾りたいとは思いますけどね。
「私はリーゼお嬢様の可愛さを色んな人に知って貰いたいだけです!」
私の侍女はかなりおかしいようです。
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