第2話

『おい。聞いてんのか?』


「聞いてるよ。聞こえてる」


左脚と、あと、右の脇腹。もしかしたら、首元も。


『よりによって、なんでその街なんだよ。官邸の掩護も受けられないぞ』


「いいんだよ、それで」


なるべく動かさないように、ひきずって歩く。首元があやしいので、左しか向けない。


「官邸に迷惑はかけられない」


この街にも、官邸の息がかかった人間はいる。しばらくじっとしていれば、敵か味方か、とにかく誰か来るだろう。


『傷は。いたむか?』


「いたまない。それが逆にこわい」


固まっている。動かない。こわさから動かせないのか、それとも、本当に動かないのか。

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