第16話 剣の柄、咆哮
「……ッ」
場所は闘技場。
観覧席から、ウィルの表情は見えない。
聖騎士となったのに、また彼は
「いいのかぁ……」
ウィルは闘技をするにあたって武器を新調しなかった。義手以外、武器無し。
隣にはいけ好かない信仰の聖女。頭に被ったベールからはみ出した黒髪ときついつり目。高校の時とかいたなーこういう奴。
「「……」」
二人とも無言。
険悪な同僚が喫煙所にそろった時こんな感じ。
*
~闘技場内~
「貴方の古巣ですね」
皮肉じみた、イフィリストの声。
「ーッ」
「……そろそろ、明かしてくれたらどうです?」
「?」
「あなた、喋れるでしょう?」
「……」
イフィリストの言葉に、ウィルは返さない。
「……ふっ、結局声を聞かせてはくれないのですね」
分厚い二振りのロングソードを鞘から引き抜く。
「本気で行きます」
二振りの剣を、正面に構える。
「
瞬間、『盲信』の聖騎士の目が開く。
蜥蜴のように縦長の瞳孔。
「ェェェ」
合わせるようにウィルは屈み、吐く。
口から出てきたのは、何の変哲も無い剣の
「そうぞう、しんに、奉る。ワレは、理想を、貫かん。ここに、剣を」
無い舌を喉で補い、詠唱。
剣の柄に触れ、まるで鞘から剣を引き抜くかのような動き。
剣の柄から、刃が生える。
曲剣、どこかの蜥蜴人が使っていた物と似た形。
試合開始を告げる鐘がなる。
最初に動いたのは、イフィリスト。
「ーーーーーーーーーーーーー」
口から出す衝撃波。
合わせてロングソードの斬撃を飛ばす。
ウィルはただ走り回避。
重量装備を取り外した彼の動きは、ユースが初めて見た動きとはまったく別の物。
「?!」
口からの衝撃破を躱した場所が大きく崩壊。続く斬撃は、曲剣で切り伏せる。
「……」
「その剣の型。どこかで……」
ユースだけが気付いていた。
その剣は、ある蜥蜴人の物であること、彼はおもったいじょうに高名な戦士であったということ。
「……!!!」
無言の、詠唱。
「なっ!」
ウィルはイフィリストとの間にあいていた距離を一気に詰め、曲剣で切りつける。かろうじて受け止めたイフィリストには焦りの表情。
「……あ」
気付いたときには、ウィルの左手がその腹部へと当てられていた。左手に仕込まれたのは
「ガハッ!!」
火薬の爆発と衝撃。
イフィリストの纏う、教会騎士の鎧すら貫いて。彼の内臓はぐちゃぐちゃに、その向こう側が見えていた。
「ま……だ」
流石は聖騎士といったとこ、心臓その他諸々の臓器を失ってもまだ動く。
「……」
偽善の聖騎士には何の感慨もない。ただ目の前の聖騎士がこれ以上苦しまなくて良いように、その首を跳ね飛ばした。
割れるような女の悲鳴がこだまする。この日闘技場にてそ『盲信』聖騎士は破れ、殺された。『偽善』の聖騎士によって。
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