俺はただスローライフしたいだけなのに 〜無職になった俺は異世界転生して田舎で美少女に囲まれたい!〜

taqno(タクノ)

第1話 プロローグ

 突然だが失業した。いわゆる無職である。ニートである。穀潰しである。

 悲しいことに昨今の不景気の煽りを、とうとう弊社も受けてしまったのだ。

 もう弊社っていうのもおかしいか。だって会社がないんだから。笑えないけど笑っている俺は、かなり精神が参っていると思う。


 これで俺も晴れてうんこ製造機になったということか。全然嬉しくないけど、逆にすがすがしい気さえする。本気で疲れてるなこれは。


「正社員なら安全安心だと思ってたけど、会社が潰れちゃどうしようもないか……」


 せっかく仕事に慣れてきて、職場の人とも打ち解けてきたというのにこれである。

 まったく人生というのは上手くいかないものだ。終身雇用なんて期待するもんじゃない。


 ベッドに体を預けて深く溜め息を吐く。

 これからどうしようか……。再就職といってもどこも不景気、中々簡単にはいかないだろう。

 就活の大変さを思い出すだすと、よくあれほど面倒なことをやりとげたもんだと自分を褒めてあげたい。


 実際褒めて欲しい。今すごく悲しい……。

 こんな時は何か気分を一新させたい。何か新しい刺激を得れば、この虚しい気持ちもなくなるだろうか。


「旅行……とかいいかもな」


 スマホをいじっていると目に入った、”Go旅行キャンペーン実施中!”という広告。それに刺激を受けたのだろうか。

 幸い金はある。今まで仕事で時間が無かったけど出かけることは嫌いじゃない。

 出来ればのどかなところが良い。自然豊かな観光地とかいいかもしれない。


「”くまぜみがなく夏に”ってアニメが面白かったし、聖地巡礼の旅とかやろうかな」


 俺が学生だった頃に流行っていた、田舎を舞台にしたアニメの続編が最近放送されたのだが、それがまた面白かった。

 そうだ、山と緑に囲まれた場所に行きたい。出来ればそこでゆっくりとくつろぎたいなぁ。

 もっと贅沢を言えば美少女! 美少女といっしょがいい!


「美少女、田舎、スローライフ。最近流行ってるし、俺も体験してぇ……」


 そんな風に思いながらスマホの電源を落とした。


 ああ神様……願わくば俺に美少女とイチャイチャスローライフさせてください……。

 山を散策して、川で水遊びをして、たき火で暖を取りながら一緒に寝る。

 そんなささやかな……いやかなり贅沢な気もするけど、俺の願いを叶えてください。


「美少女と一日中ぐうたらしたいぃぃ…………すぅ……すぅ……」


 そんなアホみたいな戯言を漏らしながら睡魔に飲まれていく俺ことうんこ製造機。



 でもまさか、こんなバカの発言を叶えてくれる神様がいたなんて。

 この時は思いもしなかったのだった。

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