第220話 にっこり
見物客が月蝕を見て口々に「おかしい」と言う。
少し赤みがあるが普通の部分月蝕では?
そう感じたところで私も漸く気がついた。
明るい部分の中に丸い何がある。
まるで瞳のようだ。
たしかにおかしい、と納得したと同時に、月は空に浮かぶ巨大な単眼のように皺を寄せてにっこりと微笑んだ。
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