第85話 地平線と椅子
物心ついた頃の話。
廊下に引き戸があり、戸を潜ると地平線まで一望できる乾いた土地に出た。
そこにぽつんと一脚置いてある椅子が好きだったが、ある時から立て付けが悪く開かずの間となり、成人してから力任せに開くとただの物置だった。
中に同じ椅子だけ置いてあったのを今でも覚えている。
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