第52話 整備します

 翌日、時間通りに職員達と合流し、作業を開始した。


 まずは1階から。エリスはテーブルとソファーセットをストレージから取り出し、それらをロビーの端にセットした。


「ここは待ち合い室というか休憩所にしましょう」


「これはまた...高級そうな家具てすね...」


「えぇ、最上階のスイートと同じ物を使ってますから。ロビーはホテルの顔ですからね。出し惜しみはしませんよ」


「なるほど...」


 次にエリスが向かったのは、1階の客室だった。


「内風呂はこの辺りにしましょうか」


 部屋の奥に風呂を造って配管を通す。そして職員達を振り返り、


「この作業を繰り返すことになりますが、全部ご覧になります?」


「そうですね...我々がゾロゾロ連いて行っても邪魔になるだけでしょうから、外に居ます。その間、お土産物屋のレイアウトを考えておきます」


「お願いします。カイは私に連いて来てね」


「分かった」



◇◇◇



 全ての客室に内風呂を設置し終えたエリスは、最後に最上階の展望大浴場に来て、水道管の蓋を開けた。温泉が勢い良く吹き出す。


「カイ、4階の内風呂に温泉がちゃんと流れているか見て来てくれる? 私は3階を見て来るから」


「了解」


 その要領で1階までちゃんと温泉が流れていることを確認した。


「良し。上手く行ったね。じゃあ職員さん達と合流しようか」  


「うん」


 職員達と合流すると、スケッチブックにレイアウトを書き込んでいるところだった。


「もう終わったんですか!?」


「えぇ、上手く行きました。レイアウトの方は如何です?」


「すいません、まだ途中なんですが、こんな感じです」


「なるほど...大体分かりました。早速造ってみましょう」


 まずは1軒目を造ってみた。


「こんな感じですかね?」


「はい、バッチリだと思います」


「じゃあこの調子で造っていきますか」


 あっという間に5軒完成した。


「次は公衆浴場ですね」


「あ、エリス様、少々お待ち下さい。今、仲間が馬車を用意してますから」


「分かりました。あ、それと、ホテルやお土産物屋さんで働く人達ですが、募集の方はどうなってます?」


「はい、徐々に集まりつつあります。ただ、お土産物屋はともかく、ホテルの従業員は専門の教育が必要になりますので、街にあるホテルで当分修行させようと思っています」


「了解しました。その教育に掛かる経費も全て私が負担しますから、請求書を回して下さいね。ホテルの内装に関しても全て」


「ありがとうございます。あ、馬車が来ましたね」


 馬車に乗って10分程で公衆浴場に到着した。


「まだ誰も利用してないみたいですね」


「宣伝はしてますので、週末になれば人が来ると思います」


「なるほど、ではそれまでに2階を整備しましょうか」


 2階は階段を上がって右に3部屋、左に3部屋という間取りになっていた。


「まず壁をくり抜いて大部屋にします。右側を休憩所、左側を娯楽室にしましょう。ビリヤードや卓球の台って用意出来ます?」


「大丈夫だと思います。すぐ手配します」


「その他、遊戯したい物があったら適当に見繕って下さい。もちろん、請求書は私に」


「ありがとうございます。そうさせて頂きます」


 次に1階に下りて設備を確認する。


「ここは使用人の更衣室ですね。このままロッカールームとして使えるんじゃないでしょうか?」


「えぇ、確かにイケそうですね」


「何か不具合があれば言って下さいね」


「分かりました」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る