第45話 案内します
ヒナとキクの仕事場となる炭焼き小屋の紹介が終わったので、次は農場や牧場、温泉を紹介することにした。
「ユリ、もういいわよ。仕事に戻って。あぁ、お昼はみんなと一緒に寮で食べましょう。みんなにも言っておいてくれる?」
「分かりました」
エリスはユリと別れた後、ヒナとキクを農場に案内した。
「この一角で小麦を育ててるの。収穫した小麦を使ってパンを焼いて貰うことになるわ」
そう言ってエリスが指差した先にあるのは、青々と茂る小麦の穂だった。
「えっ? これから作るんですか? 収穫までかなり時間が掛かると思いますけど...」
「私達、てっきり小麦粉を仕入れて来てそれで作るものとばかり...」
まあそれが常識的な物の考え方だろう。
「あら? 収穫までもうすぐよ? あなた達、この小麦をいつ植えたと思う?」
「そりゃあもちろん春になってからですよね?」
「ほんの3、4日前よ?」
ヒナとキクは絶句してしまった。
「さあ、次は魔獣牧場と温泉を案内するわよ」
一通り案内して貰ったヒナとキクは、その後も驚き過ぎて半ば放心状態のままお昼を迎えた。
◇◇◇
お昼を食べながらやっと復活したヒナとキクは、それぞれ感想を述べ合った。
「いやもうなんて言うか、自分の中にある常識が音を立てて崩れていくような、そんな感覚を味わいましたわ...でも魔獣は可愛かった♪」
「成長促進剤って凄いんですね...だからエリス様はあれだけの食材を街に提供出来たんですね。納得です。それと温泉入りたくなりました♪」
「昼間から温泉っていうのもねぇ」
エリスが苦笑していると、てっきり日帰りするのかと思っていたヒナとキクは泊まっていくと言う。
「親御さんにちゃんと言ってあるの?」
「大丈夫です」
「山の奥だから日帰りは無理かもって言ってあります」
「そう、なら安心ね。この寮には空き部屋があるからそこ使って。夜はみんなで温泉入りましょう」
全員が頷いた。
◇◇◇
午後からは実際に農作業や魔獣の世話をヒナとキクに体験させていると、カイが飛んで来た。
「カイ~! お帰り~!」
「クェッ!」
カイの鳥になった姿を初めて見たヒナとキクは目を丸くした。
「彼はカイ。この農場唯一の男子よ。今は魔獣の子供を捕まえに行っていたの。後で紹介するわね」
捕まえて来た魔獣の子供を牧場に放して来たカイがやって来た。
「やぁ、初めまして。僕はカイ。よろしくね」
「ヒナです。よろしくお願いします」
「キクです。よろしくお願いします」
心なしかカイを見詰める二人の視線が熱い。
「今日は二人とも泊まっていくから」
「なるほど、じゃあ今夜は女子会だね。邪魔者の男はさっさと退散しますか」
カイが戯けた調子で言った。
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