第6話 住まいを快適にします

 エリスは早速小屋の補修を始めた。


 まず、家の内壁と外壁の穴が空いた部分を土の魔法で塗り潰して塞ぐ。次に風の魔法で積もった埃を吹き飛ばし、水の魔法で濡らした雑巾で丁寧に拭き掃除をした。


「フウッ、これでなんとか住めるようになったかな? さて後は台所を...ありゃ? 鍋もフライパンも包丁も無いのか。後で街に行って買って来なきゃだね。まぁ、当面の食事はストレージにあるから何とかなるとして、次は家の周りを快適化しようかな」


 カルデラだけあって農耕向けの肥沃な大地が広がっている。エリスはまず、火の魔法で雑草を焼き払った。そして土の魔法でゴーレムを何体も作り出し、土地を耕すように指示を下す。


 その間、山に入り必要なモノを探す。サツマイモ、ジャガイモ、サトイモ、ヤマイモなどの芋類だ。畑に植える為だ。最初に作るのは芋類と決めていた。炭水化物として主食になるし、貴重な甘味も取れる。更に非常食にもなる優れ物だ。エリスは見付け次第片っ端からストレージに放り込んだ。


 時折、柿やリンゴ、梨などの果物が木に生っているのを見掛ける。それらも全て風の魔法で切り落とし、ストレージに入れた。


「結構貯まったなぁ。そろそろ戻るか」


 戻ってみると程良く耕された畑が広がっていた。エリスは取って来た芋を、当面自分が食べるだけの分を残し、全て畑に植えるようゴーレムに指示を下す。そして水の魔法で畑に水を撒きながら、同時に風の魔法で成長促進剤を散布する。


 これはエリスが自分の領地に居た頃に開発したもので、様々な肥料と土の魔法を組み合わせ、試行錯誤を繰り返しながら完成させたもので、植物の成長に劇的な変化を齎す。さっき植えた芋類なら一週間もあれば芽が出るだろう。早ければ一ヶ月で収穫可能となる。


「良し、次は温泉だぁ~♪」


 エリスは大の温泉好きである。自分の領地には残念ながら温泉が湧かないので、わざわざ温泉に入りに隣の領地まで足を運んだくらいだ。ここに来て硫黄の匂いを嗅いだ時から温泉に入りたかった。


『サーチ』


 温泉の水脈をスキャンする。するとすぐ近くに反応があった。


「見付けたっ!」


 小屋から5分程離れた場所に温泉の反応は定まった。


『ボーリング』


 すぐさま土を掘り返す。やがて水脈に届いたのか勢い良く温泉が吹き出した。


「やったぁ~♪」


 エリスは急いで周りの土を固め、簡易な露天風呂を完成させた。


「早速入ろう~♪ おっとその前に」


 服を脱ごうとして、周りから丸見えなのに気が付いた。慌てて周りを土の壁で覆う。誰も見てないのは分かっているが、そこは淑女の嗜みということで。だってエリスは女の子なんだもん♪


「はぁ~♪ 極楽極楽~♪」


 温泉に浸かってのセリフがたとえオッサン臭いとしても。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る