アップルパイの女ーのらびとー
門前払 勝無
第1話
アップルパイの女
ーのらびとー ①
ペットボトルでペロペロの練習してるんです。百円ショップには毎日行ってます。ヴィトンの財布が欲しいんです。男の人が怖いです。東京に来れば楽しいかなと思いましたー本気でそう思って来ました。
数人の男に強姦されている所を撮影している。
「龍ちゃんも参加する?」
監督の徳重がニヤニヤしている。
俺は無視して煙草を灰皿に押し当てた。
ベランダに出てプランターに実るトマトをもぎって食べた。
最近は仕事が無くて働く女達の送迎アンドボディガードをして食いつないでいる。一日三万で朝から晩まで女達にくっついて廻る。
マンションの入口で煙草を吸っていると声をかけられた。
「おつかれ!」
「お疲れ様はエリさんの方だろう」
「龍ちゃんいるから安心して仕事が出来るよ。ありがとね」
俺は照れながらサングラスをかけた。
俺はエリさんを練馬のアパートまで送った。
「寄ってく?」
首を横に振って断った。
「明日もよろしくね」
「はい」
玄関が閉まるまで見送ってからその場を立ち去った。
何事も無ければ楽勝な仕事だー。
エリは静岡から出てきて身体を売りながら暮らしていたが色んな男に食い物にされて、何度も自殺を図っていた。俺はエリにフリーになればいいとアドバイスして色んな仕事を紹介してあげた。送り迎えと変な男が近付かないようにしてあげて金を貯めさせている。金を貯めさせて田舎に帰って子供とやり直させようとしている。
だが、俺も金が無いからエリに雇ってもらっている。
一ヶ月前ー。
久し振りにバー“フリット”でエリに再会した。半年間、千葉の風俗店で働いていたらしいがかなり疲れ切っていた。気晴らしに夜のドライブに連れて行ってあげて海を見た。
エリは田舎に子供が居て翌々は一緒に暮らしたいと思っていると言っていた。
こんなクソみたいな世の中だけど、こんなゴキブリみたいな俺だけどなんか良いことしたいと柄にも無く思ったのだ。いや、ただの暇潰しかも知れない。
「はい今月分」
俺はエリから封筒を受け取った。やたらと分厚い。
「いくら?」
「百万」
「多いって!」
「だって龍ちゃんには感謝してるんだもん」
「だめだ!今月は12日だから36万だ!残りは返す」
「それじゃ悪いよ」
「何言ってんだよ!ちゃんと金貯めろよ」
俺は封筒から36万を取って残りはエリに返した。
つづく
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