第162話 迷宮に入る前に

 予定通りお昼前にラクーラの街に到着。

 まずは冒険者ギルドへ直行。

 詳細情報を書いた書類、現場を封鎖している騎士団に見せる通行許可証を受け取る。

 ついでに途中で討伐したゴブリン等の褒賞金を貰う事も忘れない。


 更に街中でギルド受付のお姉さん推薦のテイクアウトも購入。

 既に食べきれない位の在庫があるけれど、これはリディナの趣味というか娯楽。


「この街から現場まで10離20kmあるんだよね。なら今日は途中の何処か人目につかない処で泊まって、明日朝1番から迷宮ダンジョン入りしようか」


「それがいいと思います」


 私も頷く。迷宮ダンジョンに入るのは初めてだ。だから少し予習をしたい。勿論予習用の本は予め国立図書館で購入済だ。


 そしてライ君なら10離20kmは1時間程度の距離。だから泊まる場所は途中何処でも構わない。


 そんな訳でラクーラから5離10km程度離れた森の中をいつものように整地して家を出す。勿論3階建てがメインだけれど今回は他に初代のお家、物置小屋改装の方も出す。


 今回の迷宮ダンジョンは中がそこそこ広いらしい。ただし3階建ての家が出せる程の高さはないだろう。だから物置小屋改装の家を3人用に改装して使おうと思ったのだ。


 ただもう1人分の部屋を作るとリビングが狭くなる。その分はリビング専用の小屋か一番小さい家かどちらかを場合に応じて出して使用することにする。


「そんなに簡単に改装できるんですか」


「設計さえ出来ていれば1時間程度」


 木工はもう慣れた。そして今はアイテムボックス内で魔法加工が出来る。だからまったくもって問題は無い。


 そんな訳でリビングの6割を潰してセレスの部屋を作る。基本的にはリディナや私の部屋と同じ広さだ。テーブルやベッドは大きい3階建ての使っていない一室から借用。


 元リビングが単なる玄関程度の広さになってしまった。でもリビングは別の建物を使うから問題無いだろう。


 出来上がった物置小屋改2を収納し、3階建てへ。


「あ、フミノ。ちょうど夕食が出来たところだよ」


 今日のメインは羚羊肉のバター焼きレモン汁かけか。なかなか美味しそうだ。


 ◇◇◇


 夕食を食べたらお風呂、そして寝るまでは読書の時間だ。リディナはお風呂、セレスは人駄目ソファーの一番大きいタイプに埋まって読書。


 私は細長い物を枕代わりに抱きながら読書だ。内容は迷宮ダンジョンについての本。

 迷宮ダンジョンに入るのは今度の依頼が初めてだ。だから迷宮ダンジョンとはどういう場所なのか、一度確認しておこうと思った訳だ。


 ふむふむ、この世界では迷宮ダンジョンとは、

  ① 魔物が異常発生し魔物密度が一定の値を超えた結果、

  ② 魔素マナが異常発生するようになり、

  ③ その事により更に魔物が異常発生するようになって、

  ④ 更に過剰な魔素マナによって地形や空間構造まで変化してしまった状態

になっている場所の事だそうだ。


 そして迷宮ダンジョン攻略の定石は、とにかく内部の魔物を倒しまくって数を減らす事。


 一定空間における魔物の集積度が減るほど迷宮ダンジョンの活性、つまり魔物や魔素マナを生み出す力も減る。

 そして魔物の数というか集積度が一定以下になると魔素マナの発生が止まり、迷宮ダンジョンが消滅するそうだ。


 つまり討伐は魔物が発生するよりも早いペースで魔物を倒していかなければならない。故に一度に多数の魔物に対処可能な魔法使い中心のパーティで攻略するのが定石らしい。

 

 なるほど、確かにうちのパーティは適任だろう。3人とも攻撃魔法を持っているし、魔力もそれなりにある。加えて補給もあまり必要としないし。


 ただ、どの程度まで魔物を倒せば迷宮ダンジョンを消滅させられるのだろうか。そして迷宮ダンジョンが消滅する際、中にいる私達は大丈夫なのだろうか。


 その辺についても本には解答が載っていた。魔素マナが異常発生しなくなるのは迷宮ダンジョンの中にいればわかるらしい。迷宮ダンジョンによって異なるが明らかに変化があるそうだ。


 そして迷宮ダンジョンが消滅した際内部にいた人や魔物、その他物質等は迷宮ダンジョン化前の元の場所に戻されるらしい。だから不明な場所に飛ばされるとか『壁の中にいる』なんて心配はしなくていいようだ。


 つまり、

 ① まずとにかく魔物を倒していく

 ② 迷宮ダンジョンが消滅したら、付近の魔物をとにかく倒して再発生を防止する

という方針でいいようだ。


 さて、迷宮ダンジョンに出る魔物はどんな奴なのだろう。

 迷宮ダンジョンの初期はゴブリンが出やすいが、ある程度発達するとコボルトが中心になるらしい。基本的にはコボルトかその上位種であるエルダーコボルト、アークコボルト。

 更に迷宮ダンジョンが発達するとトロル系も出るようだ。


 なおコボルトはこの世界では犬顔では無い。本のイラストでは邪悪な妖精といった雰囲気。


 ゴブリンとほぼ同じくらいの大きさで緑色の皮膚を持つとある。強さはゴブリンよりやや上で、土属性と火属性の魔法に耐性があるとの事。


 そうなると私の土埋め攻撃は通用しないのだろうか。あれは土属性魔法ではなくアイテムボックススキルだけれども。

 その辺も何処かで試してみる必要がありそうだ。駄目なら空即斬を使えばいいだけだけれども。


 なおコボルトもトロルも攻撃魔法や弓矢等の飛び道具はまず使わないとの事。少なくともスティヴァレで確認された事はないらしい。この本によれば、だけれども。


 なら常に距離を取って攻撃魔法で倒していけば問題無い。

 そう結論が出たところでリディナがお風呂から上がってきた。それでは風呂に入りついでに軽く稼いでくるとしよう。


 それにしてもこの人駄目ソファーシリーズ、いい出来だ。確かに使っていると離れられなくなりそうになる。

 でもお風呂も気持ちいいから。強い意思で立ち上がり、お風呂へ向かった。

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