魔王討伐のパーティを追放された俺が故郷の村に戻ったら親父が結婚してて幼い義妹ができたけど、えっ? この子って魔王の娘なの? この子を守るために発動した力は俺の能力ではなかった。俺の能力ってなに?
渡 歩駆
第1章 神と魔王
第1話 パーティを追い出されて故郷の村へ帰る
「悪いんだけどさぁ、お前もう出て行けよ。マオルド」
宿屋の裏に呼び出されてのこのこ来てみたら、第一声でとんでもないことを言われる。言ったのは魔法使いのレイアス。その左右には取り巻きの女剣士ミリアと女僧侶のサクラがいた。
「な、なにを急に……」
「前から言おうと思ってたんだ。弱いんだよお前は。はっきり言って邪魔だ」
確かに俺は他の仲間にくらべて劣っている足手まといの戦士だ。……まあ実際は戦士とは肩書ばかりで、戦闘はまったくできない荷物持ちだが。
しかし俺はこの勇者パーティに初めからいる古参だ。女神から剣を譲り受け、共に故郷の村を旅立った勇者のティアに言われるならわかるが、あとから入ってきたこの男に出て行けと言われる筋合いは無い。
「弱いのはわかっている。けど……」
「ちょっと天パだし」
「足短いし」
「胸毛生えてるし」
「あとデコ広いし」
「将来たぶん禿げるし」
「それ関係なく無くないっ?」
取り巻きの女2人に真顔で身体的特徴を馬鹿にされて落ち込む。いや憤る。
「とにかくお前は弱い。男のくせにミリアより力が弱い。役立たずだ」
「それはわかってるけど、俺が出て行くかどうかはティアの判断だ。お前が決めることじゃない」
「はあ……」
レイアスが呆れたようにため息をつく。
「鈍いな」
「なんだと?」
「幼馴染のお前に出て行けなんて言えない彼女の気持ちを察しろ。お前だってわかっているだろう。みんなの足を引っ張っている。迷惑だ。仲間のことを想う気持ちが少しでもあるなら出て行くべきだと思うがな」
「……」
言っていることに間違いは無いのでなにも言い返せない。
俺は他のみんなより劣っていて役に立っていないどころか足を引っ張っている。俺が弱いせいで魔物退治に手間取ってしまったことだって一度や二度ではない。荷物持ちとしても、力の弱い俺はあまり役に立っていないとわかっていた。
顔の良い男に言われたのは癪だが、良いきっかけにはなった。
魔王を倒すために村を出て3年。ティアと共に旅をしてきたが、ここらが潮時だろう。
「……わかった。出て行くよ」
「賢明な判断だ。ティアにあいさつはして行くか?」
「いやいい。あいつの顔を見たら決心が鈍るかもしれない。このまま行くよ」
俺は3人に背を向け、宿の部屋から荷物を持って外へ出て行く。
これからどうするか……と、考えるほど選択肢も無い。
故郷の村に帰って親父の農家でも継ぐ。弱い俺にはそれが無難な選択肢だ。
……
お金が無いので1週間ほど歩いてようやく村へ帰ってくる。
疲れた。
早く家に帰って休もう。
子供のころから慣れ親しんだ道を歩いて家へと向かう。
やがて見えてきた我が家の姿に、俺は安心感を得る。
親父の畑だ。懐かしい……というほどでもない。たったの3年だ。
俺はひとり苦笑し、畑を眺めた。
3年ぶりか。親父は元気にしているだろうか? まあまだ30代だし健康の心配はないが、ひとり身で寂しさに心を病んでやしないか心配ではある。
「……おや?」
畑の前で誰かが屈んでいる。
親父ではない。黒いドレスを着た女の子だ。切り揃えた前髪に短い髪をした金髪のその子が、畑の端に生えた花をじっと眺めていた。
どこの子だろう?
隣近所がやたら離れている敷地の広い村だが、住んでいる人間は少ない。どこの家に子供が生まれてどこの年寄りが死んだなどはすぐにわかる。
女の子は7歳か8歳くらいか。俺が村を出たときには生まれていたなら知っているはず。しかし記憶にない。どこかから引っ越してきた家族の子供だろうか。
「んー?」
俺に気づいた女の子がこちらを向く。
綺麗な子だ。
村育ちの野暮ったさなど無く、まるでどこかのお姫さまのようであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます