プラトニックラプソディ
みなみくん
第1話 上野唯我(うえのゆいが)
世界は不平等だ
まあそんな事は当たり前だし大抵は不満を持ちつつも受け入れている
拒否する僅かな部類の人間を除いて
そんな反発したって個の力じゃどうにもならないって
そんな事もう、数えるのもアホらしいくらい言われた
僕は僕の人生を生きる
なんて響きはちょっとかっこいい感じだけど子供が駄々をこねるそれと等しい
不平等さを受け入れてふつーとやらになれないんだ
進路なんてなにも決まらないし浮かばない
見かねた世間体を気にする公務員の両親は、僕を東京の馬鹿でも受かる大学へ放り出した
片田舎の地元でフラフラされてちゃ近所の目が気になると
まあお金を出してもらって、学生という肩書きをもらって、4年間という免罪符付きの自由を手にして僕は毎日を過ごしてる
学業なんて単位なんてなんのその
BARでアルバイトをしながら
マリファナや色んなドラッグをガンガンに摂取してバンドに熱を注ぎ込んで
好きなだけタトゥーを彫って
新宿に染まって1年
抗い続けてる
何に対して抗うか、不平等さに
その不平等さがなにかって、自由への
なにをもって、なにへ到達したらその答えになるのかは分からないけど
やれる事を好きなだけやる事が世間への抵抗とか
一種のアイデンティティ、もしくはそれに近しいものなのだろうか
なんにしても、ふつーとやらでいられない
なにをもって普通と定義付けるかは人によるし明確でないにして
とにかく、理由なんて吐ける程のことも無い衝動だけが湧いて、抵抗したい
それだけの事
「唯我、今日スタジオ練習終わったら代々木くんのサークルの集まり行こーぜ」
休憩中、ベースの赤羽駿(あかばねしゅん)に声をかけられた
「嫌だよ、【俺】別に代々木くんとそんな接点ねーし」
「大丈夫大丈夫、なんか色んなサークルのやつとかほかの大学のやつ集めてワンフロアカラオケ貸し切ってやるから身内ムードみたいなのもないって。唯我も誘って欲しいって言われてんだよ」
代々木くんは顔が広い、爽やかで明るくて男女共に好評なやつだ
面識はほとんどない
講義でたまに一緒になるが、軽く挨拶を交わした程度
会話らしい会話をした覚えがない
というか学校のやつと会話をした事なんて数える程度だし
なんで【僕】を誘うんだよ、1人で行けよ
「唯我さ、なんか好きな事して気ままに生きてるように見えるけど、なんか違和感あんだよな。無理してるわけじゃないけど、実は無理してるような風に感じるんだよなぁ。それに、お前極端に学校のやつと関わってないだろ?だから、ちょっとはふつーのやつの輪に触れてみてほしーなって思うのよ俺。いらんお節介だろーけど、まあなんだ、気にしてんだよ俺も。」
ちょっと真面目なトーンで言う駿
なんか断りづらいじゃないか
「はあ、、、ちょっとだけだよ。パリピや陽キャくん達に合わせる気はないからな」
聞くや否や嬉しそうに電話をかける駿
代々木くんだろう
学校ではかなり浮いてる僕になんでそこまで
まあ、バンド仲間だし、駿も気遣ってくれてるんだし無下にするのもなんだかな
その時は思いもしなかった
ちらっと顔を出して挨拶程度に1杯飲んだら帰ろうと軽く考えてた
この日の夜から僕の人生が大きく変わるなんて
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