第30話 老若男女オールオッケー?ーーな訳あるかっつんじゃ!!







 2時間位買い物が終わり、昼食をみんなで食べようと言うことになり一旦ユリアナを捜しに宿に向かう。



「いやぁーセイが来てくれて良かったぜ!今までリーダーの買い物に口出す奴居なかったからな」


「今まであんな不要な買い物放っておいたのか?」


「まぁ、私達にくれたりするしぃ?自分で買わなくて済むからっ♪」

「(元の世界ならミラはマリアから貰ったものフリマサイトに出品してるだろうな)」



 荷物はシロに持ってもらい、手ぶらでのんびりと歩きながら話す。



 マリアはお金はギルドに預けていたらしく、俺たちから借りずに色々買い物を結構していた。マリアはとにかく無意味な買い物をする。雑貨屋に行って何を買うのかな?と見ていると消しゴム1ケース買おうとしたり、野菜屋で異常な量の乾燥キノコを買おうとした。それで何か作るのか聞けば「みんなにお土産ーっ」とか言って来るもんだから必死で止めたよ・・・。

なんせそのキノコ臭いんだよ。臭いくせに高い。椎茸やポルチーニ茸が人によって受け入れられない香りを放ってるわけで・・・。自分が好きだから人に贈りたいって気持ちは嬉しいが、くれるなら調理した物にしてくれ。調理前はいらんとはっきり伝えたら渋々ながら使う分まで減らしていた。

可哀想だがこれははっきりしておかないと後々困るのは俺たち自身だ。


 にしても、良くそんな無駄に買うだけの金持ってなぁー。

鳴かず飛ばずの冒険者パーティーだったのに・・・。

う、裏でヤバい事やってないよね??


 セイは嫌な想像を首を振り振り払った。




「・・・ところでユリアナは帰ってるのかな?」


「どうだろう?ミラちょっとお前だけ走って行ってこい。女部屋なんだから俺ら宿に戻っても意味ねぇし」


「先輩人使い荒いぃっ!女にモテませんよっっ!!」


 ぷりぷり怒りながら1人宿に駆け足で戻って行った。

その後ろ姿に「早くしねーと置いてくからな!」とアクスが追い立てていた。


 幼馴染の絡みっぽくて羨ましいなんか別に思ってないし。

この後「もぅっセイのいじわるっ!!」って機嫌損ねた後「バカだな、お前を本当に置いていく訳ねーだろ?」とか言ってみたいけど実際言ったら恥ずか死するな!!




 セイが妄想していると急に人が側に寄って来たかと思ったら、急に腕の中が軽くなった。


セイの腕の中からシロがいなくなっていたのだ!!







「ーーなぁっっっっ!?」

「ーーあ゛っっ!?」






 セイとアクスが驚いた声を発し、マリアは目をまん丸にして固まっていた。

泥棒は身なりは普通の一般人的な男であったが、その道のプロといった風であっという間にシロを持って逃げ去った。

恐らくセイ達が宝箱シロの中に買ったものを入れていたのをどこからか見ていたのだろう。買い終わって油断するのを待っていた泥棒にまんまと盗まれてしまったのだ。



「絶許じゃあっっっっ!!クソドロがぁぁぁぁぁっっっっっっ!!」


「コソドロじゃなくクソドロって・・・。セイって結構口調荒い時あるよな」

「セイさんは元気元気〜!」


 泥棒が走り去った方向にセイが怒り狂って走り出すと、残りの2人もセイに遅れる事無く軽く走りながら追いかけて行く。



 すると、遠くの方で城壁が攻撃された様な轟音と共に土煙が空高くまで上がった。

3人で急いでその土煙の上がる方向に向かっていくと遠巻きに多くの人だかりが出来ていた。土煙が徐々に引いて来ると瓦礫に埋もれた先程シロを奪い去った男が伸びている。

シロを捜すとシロは反対側にひっくり返って転がっていた。ここの建物の色と違う瓦礫が落ちているので、シロが吐き出した物である事は間違いない。吐き出した勢いで男の手から離れ転がった様だ。

セイはシロを抱き起こし手で土汚れを落とす。



「ーー怖かったなぁ?ごめんなシロ。よしよし!良い子だシロ!」



 セイが銀色の宝箱を大事そうに頬擦りしている様子に、遠巻きに見ていた野次馬達は顔を顰め半数程が去っていった。入れ替わる様に警邏が駆けつけてきた。



「これは一体・・・?誰か見ていたものはいないか!?」



警邏の一人がまだ残っていた野次馬達に向かって問うが、皆「騒ぎがあって来たから」「さぁ・・・」と首を傾げる人たちしかいなかった。他の警邏隊員達が伸びている男の息を確認したり瓦礫を退かせたりと忙しい。そしてセイ達もこの状況について聞かれた。


「あー、そいつが仲間の抱えていた宝箱を奪って逃げたんですよ。追いかけていたら宝箱が怒って瓦礫を泥棒に向かって吐き出したんだと思いますよ」



「宝箱が瓦礫を?・・・貴様ふざけている牢に入ることになるぞ」



 事情を調べていた警邏隊員はふざけていると思われる発言をしたアクスに顔を顰める。



「お兄さん。シロちゃんはね、呪いで宝箱の姿になっているけど宝箱じゃないんだよー?わんちゃんなの。ほんとだよー」



 マリアの上目遣いの説明に警邏の男は少し頬を染めている。

後少しで納得させられそうである。



「あ!シロのステータス見たら犬だって分かると思いますよ」


「そ、そうだなっ!!ステータスを見させてもらうぞ。ウエルズ、エルス様を連れて来てくれ」

「はっ!!」



 警邏は誰かを呼びに行った数分後誰かが、セイ達の元に空から降り立った。



「何だい、え?この宝箱のステータス?何で私が宝箱のステータスなんか見なきゃならないんだい!!こっちは仕事放り出して来てやったのにふざけてんじゃないよ!!」



 元気の良いおばあさんである。服装は魔道士の様なローブで高級感のある生地だ。地位は高いのかもしれない。歳は取っているものの三つ編みに一つに結って肩から前に垂らす白髪の髪は手入れが行き届いており纏まりツヤもある。女子力はミラよりは高いことが伺える。



「ん??んん????」


 おばあさんはシロを抱えたセイに寄って来た。


「…うわっ!めっちゃ良い匂い…」


 シロに興味が引かれたのか近寄って来たおばあさんから女子力の高い良い香りが漂い、セイはうっかり口から声が漏れてしまう。



「ーー何だい、可愛い坊やじゃないか。アンタ名前は?」



「せ、セイと言います」



 今までシロを見ていたおばあさんはセイの発言にセイに興味を示した。

迫ってくるおばあさんにセイはたじろぐ。

おばあさんに頭から足先まで舐める様に見るとジリジリとセイとの距離を詰めて来た。

シロを持つセイの手をシワシワの指でツーっと撫でられ、セイは身震いする。



「ほぉ、ダーリンのステータスは低いが、シロのステータスは中々じゃないか。仕方ないね、ダーリンは私が守ってやらにゃあならんね。ダーリン、ここに署名しな。」


 どうやってステータス確認をしたのか不明だがいつの間にか、シロだけでなくセイのステータスもチェックされていた様だ。

 おばあさんは一枚の紙を大きく広がった袖から取り出しセイに署名を促す。



「(何でダーリン呼びなんだ!??つか字読めないんだよな・・・怖いな)」


「さっさと署名しな!!!シロを連れてかれたくなかったら早く書くんだよ!!」



 紙を力付くで押し付けてくるおばあさんに不信感しか無いのはしょうがない。

アクスが覗こうとすると文面が見えない様に上手く避ける。これはもう真っ黒である。





「あのっ!俺字が読めないんでよく分からない契約書には署名出来ません。アクスに見てもらってから判断します」




 セイがはっきりおばあさんに告げると、おばあさんが舌打ちしたのがセイの耳に聴こえ思わずセイはおばあさんを二度見した。おばあさんは証拠隠滅とばかりにさっさと紙を片付けた。



「まぁ今日は見逃してやらぁね。アンタ達、そこの伸びている奴が盗人で間違いないよ。この宝箱は確かにこの男のものだ。それからその盗人から身を守るためにこの子が反撃に出た事に間違いは無さそうだから、それで調書をまとめときな!!」


「「「エルス様御足労頂きありがとうございました!!」」」


 警邏が全員でおばあさんに敬礼をした。

彼女が来てからずっと警邏隊の雰囲気がピリっとしていたのだが、敬礼をする姿を見てもおばあさんは彼らより地位が高いのだろう。



「私はちょっと出てくる用事が出来たからね。ダーリンとの逢瀬はまたつぎの機会に取っておくとするかねぇ。じゃあね、マイダーリン☆」



 エルスと呼ばれていたおばあさんはウインクとキスをセイに投げた後、浮遊した瞬間姿を消した。転移魔法であった。

セイはとんでもない人に目をつけられた事に顔色を悪くしていた。



「兄貴…俺って守備範囲広そうに見えるんですかね・・・?」



「ーーーーーー」



 アクスはセイの顔から目を逸らした。



「(なんか言えよーーーーーーっっっっっっ!!!)」



 セイはこの日この世界でまともな恋愛は出来ない現実を認めた。






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