第18話 訓練はのんびりするつもりだったのに








7階は特に魔物の大量発生はなく、アクスとミラにサソリの様な魔物『毒矢どくやバァイ』という毒の針を尻尾から噴射させる魔物の倒し方を聞き倒す。ミラが体力を回復してくれたのでどうにかなった。シロは俺の指示通りに毒針を回収後魔物に吐き出させ『オウム返し』で攻撃させたのだが、これが結構上手く行っている。アクスも褒めてくれていたので、これから少しは俺たちもパーティーの役に立てそうで安心した。



 「あれ?シロは?」

 「ん?本当だな、どこ行ったんだ?」



ーーードゴンドゴンドゴンドゴン・・・



 「「「??」」」



横の道から亀の猛ダッシュをしてこちらに向かってくるシロの後ろに、以前見た奴が追い掛けている。



 「ーーなぁっっっ!?」

 「矛牛テイルがまた!?」

 「あの変質者またここに来たんじゃ無いの!!」


 「ーーークソがっっ!!!」


アクスが逃げながら魔銃に魔弾を充填させ、軽いステップで振り返ると構え矛牛テイルに向かって撃つ。以前より格段に魔銃の威力が上がっている。アクスは問題なく新しい魔銃を使いこなせている様だ。


アメリカアクション映画ばりのカッコいい動作にまたしても俺の魔眼が・・・げふんげふん!!いかん!いい大人なのにアクスの動きを見ると、どうしても厨二病が発症してしまう。これだけは流石に誰にも知られたく無い。


 「ミラほらっ!金貨2枚でシロ含めて全員に有償の愛を使え!!」


この間矛牛テイルの報酬をミラに渡した。金は無くなるがみんなが助かるには1番リスクが抑えられる方法だ。前回危険だったから今回は使えるもんは使う!!だって痛いの嫌じゃん!?



 「ひゃっほう!!太っ腹!!大好きセイさん♡みんなに届け緊急支援♪」


前回は金を払わなかったが今回は金貨2枚払ったから効果が下級から中級に変わった様で、身体がめちゃくちゃ軽い。上級になったら光の速度になるんじゃね?

シロも亀の猛ダッシュがビリヤードの球をキューで勢いよく弾いた位速い。これシロの事知らない他の冒険者が見たら漏らすよ・・・。



 「兄貴俺とシロの援護お願いします!!」

 「良いのか!?・・・わかった任せろ!!」



余りにも早く動けるものだから、調子こいて前衛に出てしまった・・・。今更戻る恥ずかしい真似する位なら死ねる・・・やってやらぁっっっっ!!!コンチクショー!!

向かってくる矛牛テイルに中剣を構える。剣を振り自分に注意を向けさせる。


 「シロっっ!!アイツの動きを止めるぞ!!横から石をぶつけまくれ!!」


ーーーーぱこんっっっ!!ぱかっ!!


ーードゴンッッドゴンッッ!!ドゴンッッドゴンッッ!!


勢いよく矛牛テイルの身体に横から大きな石を命中させる。その光景に俺も含めて3人は唖然とする。砲弾位の威力があるんじゃ無いか?最早シロは宝箱型戦車と化している。



ーードッゴーーーーーーンッッッッッ!!!



矛牛テイルは今度は予期していなかった下からの衝撃に吹っ飛ばされた。時限爆弾をアクスにセットする様に言っていたのだがここまで上手く行くとは思っていなかった。



 「おっしゃあああーーーーっっっっ!!!みんな一斉攻撃じゃーーっっっ!!」

 「おーーーーっっっ!!」

 「わーーーっ!!!」

ーーーーぱこんぱこんっっ!!!



みんなで一気に畳みかけあっという間に討伐してしまった。あれ?あんなに苦戦して死にかけたのにめちゃくちゃ簡単に倒せたんですけど??


 「私たち、めちゃくちゃ強く無いですかぁ??」

 「時限爆弾ってああ使うもんだったんだな・・・」

 「兄貴、時限爆弾タイミングばっちり合ってたっすね!!」


さくさく矛牛テイルをバラして回収して、少し休憩を取ることにした。シロに持ってもらっていたサンドやジュースを配りステータス確認をする事にした。




 「あー私レベル24になってる!!」

 「俺は3つ上がって37だ」

 「シロは・・・おっ!!もう19なんだけど!!新しい術やスキルは覚えてないみたいだ」

 「俺のは・・・」

      


      【無慈悲なる運命さだめ

      【セイ】シロの飼い主

        体力 197 魔力 170 力 155

      【媒介者】レベル7

      【術】ー

      【スキル】

       ・シロへの意思伝達

       ・シロの躾   

       ・以心伝心

       ・緩和剤


 「レベル7になったけど体力とか一般人の範囲にしか見えんのですが?」

 「どれどれ?ーーーまぁ、少しづつ一般人の中でも強い一般人になったら良いじゃねーか」

 「そうだよぅ私の補助魔法で強くなれるんだし、どうでも良くない?」

 「まぁお前らがそれで良いっていうならもう良いや」

ーーぱこっ!!


 「あ?なんだ?シロが6階の階段見てっぞ」

 「本当だなんかあんのかな?」


静かにそっと階段を上り何が6階にあるのか覗き見る。


 「(あれって変質者じゃね!?なんでこんな所にいるんだ??それにアイツ領主の息子だっけなんでアイツが変質者と一緒に・・・)」



6階の通路の先に居たのは変質者と領主の息子フィレックスだった。何やら揉めている様だが内容までは聞こえない。一旦7階まで戻る事にした。



 「あれって領主の息子じゃね?」

 「あぁ。なんであの野郎が変質者と一緒にいたんだ?」

 「揉めてたっぽいよね?」

 「怪しいな・・・でも話の内容わかんねーしな」


シロが遅れて戻ってきた。


 「あれ?シロどこ行ってたんだ?」


ーーぱこんぱこん!!ぱかっ!!


 『話が違うでは無いかっっ!!貴様に協力したら最上位の闇の力を私に与えると言ったであろう!!』


 『コノ町ヲ対価ニ 与エルノダ・・・。・・・モウスグ手ニ入ルゾ』


 『本当であろうな?嘘であった場合は容赦せんぞ』


 『嘘デハナイ。シカシ・・・オマエノ仲間ノ命ハ本当ニイラヌノカ?』


 『あんな腰巾着共、仲間では無い。私は一人で最強になってみせるのだ!!こんな片田舎の領主に収まる器では無いわ!!』


 『気ニイッタゾ・・・。オマエハ心ノ底から闇デアルノダナ・・・闇ノちから楽シミニスルガ良イ・・・』



ここで終わった様でシロが口を閉じた。なんでも回収出来るんだなシロ・・・。


 

 「マジかぁーーーー・・・。早く戻らないといけなくなったじゃん!!」

 「そうだな、もしかしたら町に魔物を召喚した可能性も十分あるな・・・。ーーっ!?セイ、マズイぞ!今日はギルドの定例会議でギルド長が町に居ねぇんだ!!」

 「マジかっっっっっ!!!」

 「うぅ・・・二人とも大丈夫かなぁ・・・」

 「仲間の命とか町を対価にって町を消す気か?取り敢えずまだ有償の愛が消えて無いうちに戻ろう!!」



6階に上った時には既に二人は居なかった。気にせず有償の愛の効果で一気に地上までかけ上がる。



 「なんでこんな事に・・・」


ダンジョンを出て町の方を見ると、火の手が上がっていたり叫び声や怒声が聞こえてくる。血生臭い匂いも辺りに漂い吐き気がしてくる。何かが目の前に降りてきた。



ーーーgyuuuuぎいぇーーーーーーーーっっっ!!!



いきなり現れたプテラノドンみたいな魔物が俺たちに向かって口を開くと魔法陣が展開した。



 「ひぃーーーーーーっっっっ!!ーーうぐっっ!?」



後ろ襟を掴まれ強い力で引かれ横に押し飛ばされるとミラが受け止めてくれた。うう・・・ミラに遥かに劣る体力・・・。俺を押し飛ばしたのはアクスだった様で、展開した魔法陣に向かって魔銃を構えていた。こんな時だがやはり厨二病を発症させる格好良さだ・・・。


ーーーードォォォーーーーーンッッッッッ!!!



魔物は氷系の攻撃で、アクスは火の魔弾を撃ち込み大爆発を起こした。


 「あれはレベル25の魔物で魔飛竜。魔法以外にも爪で引っ掻かれたら麻痺するから近寄っちゃ駄目!!」


ミラが目の前の魔物の危険性を教えてくれた。それでアクスが引き寄せて押し飛ばしたのか・・・。



ーーードゴォォォーーーーンッッッッ!!!



再度爆音がするものの水蒸気や砂煙で全く見えない。アクス大丈夫だよ・・・ね?異世界に来て早々に仲良くなった人が亡くなるのはマジで勘弁してほしい。旅する気力無くなるわ。



 「ーーーふぅ・・・。画像識別誘導ミサイル便利だな。視界が見えなくても最初に目標を確認していたら問題なく追尾攻撃したな」

 「今まで使った事なかったんだよな?」

 「そうなんだけどよ、セイがパーティーに加わってからなんか術の事が分かって来たんだよな。不思議だよな」

 「なんか知らんけどそれなら良かった!マリアとユリアナ捜しつつ、魔物を倒そう!」

 「そうだな!!」

 「行こー!!」


有償の愛がまだ切れていないので急いで町の中に入った。金貨は一枚で3ヶ月宿屋で暮せる程の金額だ。それを2枚使っただけあって中々効果が切れる様子がない。緊急時はコスパ良いのでは真面目に思う。


 


ーー町の中は外から見たより一層惨状であった・・・。





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