第14話『変なお○さん』


 勢いって怖いな~と思いながら、アーリアは見知らぬ小人達に囲まれて、死のダンスを踊る手前まで来ていた、かもしれない。


(まあ待て、時間はたっぷりある……)


 どう見ても、まともな思考能力を残している奴は少ない。


 きら~ん。


 アーリアの青い眼が怪しく光る。



 飲んだら飲まれるな。


 飲まれるなら、飲め!



 すっと一呼吸。


 うろんな目で、上から目線。確かに頭一つはこっちの身長が高い。


「あたしが誰だって~? 誰だか、知りたいのか~い?」


 ふっと薄ら笑いを浮かべ、言葉に間を置く。


 この無音の一拍に、スッと気の流れが自分に集まるのを感じた。注目されている……


 やおら、それに応える様に右手を高く掲げ、うやうやしく一礼。面を上げると同時に、マントの下からリュートを引き出し、ばらら~んと一撫で。

 その無造作な余韻が消え入る前に、これから始まる大馬鹿な歌が引き立つ様、情感たっぷりに掻き鳴らした。


 そして……



 変な小人がいるよ♪ 変な小人がいるよ♪


 草むらで太鼓叩く♪ 変な小人がいるよ♪


 あ~っはっははははぁ~っ♪


 変な小人がいるよ♪ 変な小人がいるよ♪


 輪になって太鼓叩く♪ 変な小人がいるよ♪


 あ~っはっははははぁ~♪



 思いっきり脚を上げて足踏み。単純陽気なリズムで高笑い。笑う時は、目の前の小人を思いっきり指差して笑った。


 いきなり指差された方はびっくり。慌てて太鼓を後ろに隠して照れ笑い。


「な、なんだよ~」


 そんな仲間が何ともおかしくて。

 すると、一人、また一人と、同じ節で音頭をとったり足踏みしたり、次第にアーリアと一緒になって歌いだした。



 変な小人がいるよ♪ 変な小人がいるよ♪


 当たらない弓引く♪ 変な小人がいるよ♪


 あ~っはっははははぁ~♪


「お、俺じゃねぇよっ!!」


 指差されて真っ赤になって、逃げ出す小人。どうやら、本当に当たらなかったらしい。

 その様に、どっとみんなで大笑い。

 歌はまだまだ続く!


 変な小人がいるよ♪ 変な小人がいるよ♪


 そこで、アーリアはまた別の小人の前に立ち、口をぱくぱく。歌詞の続きを求めた。


「い~っ!?」


 目を白黒させる小人は、周りをきょろきょろ見渡し、観念したか両手を高々と上げて手拍子しながら歌い出した。


「すっころんで腰を打った変な小人がいっるよ!」


 すると、少し離れたところで怪我の手当てを受けている、壮年の小人を指差して叫んだ。


「ジュペット! お前の事だよ!」


 みんなで一斉に、ドッと大笑い。



 すっころんで腰を打った変な小人がいっるよ♪


 あ~っはっははははぁ~♪



「次はお前さんだぁ~っ!」

「おおうっ!」


 とうとう歌詞のバトンリレーが始まった。

 こうなったら、もうアーリアは演奏しているだけで場が持つ。みんなで勝手に盛り上がってくれるのだ。



 変な小人がいるよ♪ 変な小人がいるよ♪



 変な小人さんの歌は、ず~っと続くかに思えた。



「こらっ!! いつまで油売ってりゃ気が済むんだ!! 肉が腐っちまうだろ!!」



 わっと逃げ出す小人達。

 慌てた連中は、わたわたと転がりながらある方向へ走って行った。

 ぽつんとアーリアを残し。



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