第43話 帰途から
山本五十六「やったな晃司、何もかもお前たちのおかげだ。フーヴァーを
説得し、ミッドウェー海戦を勝利に導き、日米和平の協定に
たどり着いたのもな」
岡本晃司「僕たち二人だけじゃありませんよ。
協力して頂いた皆さん、フーヴァー前大統領も含めて
色んな人々のおかげですよ」
山本「もうちょっと功を誇ってもいいだろ」
晃司「いえいえ、やっぱりそんな大それた気分にはなれませんよ」
山本「そうか。まあそれより日米に関しては平和にもなったことだ、
園田少尉にあって来たらどうだ」
晃司「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えさせてもらって、
すぐにでも行かせて頂きます」
山本「おっと、その前にお前にはまだ将棋負け越していたな、逃がさんぞ
行く前に叩きのめす」
晃司「これは手厳しい」
山本「当たり前だ。渡辺と藤井を呼んで来い。渡辺もお前に仕返ししなくては
気が済まんといっていたぞ」
晃司「おおこわ。わかりました、呼んできます」
晃司は渡辺を見つけ、作戦室で山本が待っていることを告げ、
藤井を探したが見当たらなかったので、二人で山本の
所へ戻った。
山本「よし来たか、藤井はいなかったのか?」
晃司「ええ、探したんですが近くにはいなかったですので、渡辺中佐だけ
呼んできました」
山本「まあいい、あいつはお前に勝ち越しているからな。まずは俺からだ
いくぞ晃司、渡辺、お前はまずここで晃司の戦法をよく観察しておけ」
渡辺安次「はい、長官、私も後で、岡本大尉と対局させてもらえるんですよね」
山本「当たり前だ、俺が五部まで持っていくまで、そこで見てろ」
晃司「ひょっとして長官、星勘定をつけていたんですか?」
山本「その通りだ、渡辺の分もな」
晃司「なんとまあ、執念深い」
山本「つべこべ言わずにやるぞ」
山本と晃司が真剣勝負をした。
渡辺「しかしお二人の戦形は、見たことの無い形に良くなりますね」
山本「二人で考案したんだ、名付けて未来の定跡だ」
渡辺「プロみたいだ。というかこれ、プロに高値で売れるんじゃないですか?」
山本「あまり詮索じみたことはするな、渡辺。
よし、俺の勝ちだ。これで五部に追いついたな。
俺は一旦休憩だ次、渡辺行け」
渡辺「よし、いくぞ岡本大尉」
今度は渡辺と晃司が真剣勝負をした。
渡辺「やった、これで岡本大尉と五部に戻した。
これで私も長官と同じ五部に戻しましたよね」
山本「そうだな、これで二人とも五部に戻した、
今度は勝ち越しに行くぞ」
晃司「長官、実戦より疲れました。今回は一旦終わりにさせて下さい。
次回またやりますんで」
山本「そうか疲れたか。軍令部に行ってきてからまたやるぞ」
晃司「わかりました」
結局この三人の勝負は丸一日かかったのである。
だがなぜか、晃司はこれが二人との最後の対局であるような
気がしていたのだった。
そしてその日はぐっすり寝て、次の日を迎えた。
晃司「おはようございます、長官」
山本「おう、俺も今起きたところだ。南雲から詳細を聞いてミッドウェー作戦の
功績を書いた書面がここにある、永野総長に直接手渡すように。
いくら和平が成っととはいえ、ここまで詳細を米国に知られる
わけにはいかんからな」
晃司「わかりました。ありがとうございます」
たまたま宇垣纒と黒島亀人がそこへやってきた。
宇垣纒「今回はほんとによくやってくれた。軍令部にも我々から礼を言って
いたように伝えてくれ」
晃司「はい、宇垣参謀長」
黒島亀人「お前さん間違えなく少佐になって帰ってくるぞ。
楽しみにしてるからな」
晃司「まだ分からないですよ、黒島首席参謀。
でもありがとうございます、お二人とも」
山本「じゃあ行ってこい、晃司」
晃司「はい山本長官。ではお三方、行ってまいりますのでこれにて」
晃司は何だか切ない気分になって三人に出発の挨拶を
したのであった。
そして軍令部へ到着して、永野の部屋に行った。
部屋にはいつもの通り、一花もいた。
晃司「岡本晃司大尉入ります」
永野修身「やあ岡本君、今回は本当にご苦労だったね。
君たちのおかげで日米の和平が成ったよ。
本当によっくやってくれた」
晃司「私たちだけの功績じゃありませんよ。
総長こそ今回の政界への、ご介入お疲れ様です」
永野「いやあ、今回は伊藤次長に任せっぱなしで、私はほとんど何も
やっとりゃせんよ」
晃司「そうは言われましてもやっぱり永野総長なくてはの軍令部ですよね。
それから山本長官より、総長宛てに書面を持参しましたので、
手渡します」
永野「うむ、読んで見よう」
園田一花「先輩」
晃司「やあ、今回は君もお疲れやったね、実戦を経験したんやね」
一花「それが角田少将がダッチハーバー空襲前に、私を龍驤から旗艦那智に
移乗されてくれたんです」
晃司「そうやったのかあ」
永野「書面は読んだ、二人とも昇進だ。
岡本君は今回のミッドウェー作戦の功績。園田君は今まで
岡本君に詳細な情報を提供したのと、今回のミッドウェー作戦の功績だ。
二人とも後日正式に、書面で辞令を渡す」
晃司「ありがとうございます」
一花「ありがとうございます、総長」
そして間もなくしてから二人に、奇妙な声が聞こえた。
・・よくやった君たち・・君たちの今回の試練は終わった・・
晃司「またこの声、誰なんやあんた?」
一花「この声、誰なの?教えて?」
永野「どうしたんだね?君たち」
晃司「総長はこの奇妙な声がお聞こえにならないですか?」
永野「はて?なにも聞こえんが?」
一花「私たち、ここへ来た時もこんな体験をしたんです」
・・君たちを開放しよう・・
そして、永野の前から晃司と一花が忽然(こつぜん)と
姿を消した。
二人は今度は意識を失わずにそれぞれの場所へ飛んだ。
防衛大学校女子寮
井上胡桃「あ、一花。今日どこに行ってたのよ。
講義来ないから突然の発熱って言ってごまかしたんだから。
でその恰好なに?コスプレ?軍服じゃないのそれ」
一花「胡桃ー!」
一花は胡桃に思わず抱き着いた。
胡桃「どうしたのよ、一花」
一花「どうしたって、今いつなの?ここどこ?」
胡桃「2019年12月じゃないの、防大の学生寮じゃないの。
どうしたっていうのよ」
一花「そっか、ちょっと私着替えてくる」
一花は予備の防衛大の制服に着替えたが、もう一日終わった
ことを知らされて私服に着替えた。
防衛大学校男子寮
渋野忠和「おい、晃司、お前どこ行ってたんだ?今日一日」
晃司「忠和か、ここはどこや?今いつなんや?」
忠和「防大学生寮じゃないか、今、2019年12月じゃないか、
どうしたっていうんだ?でその恰好はなんだ?」
晃司「そうか」
晃司は大体の状況を把握(はあく)した。
そして私服に着替えた。
忠和「お前今日来ないから、ここ探してみてもいないし、
突然の下痢ってことにしておいたぞ」
晃司「下痢って・・まあちょっと出てくるわ」
忠和「どこいくんだ?もう暗いから明日にしたらどうだ?」
晃司「ほなちょっと」
晃司は外に出て座り込んだ。そして、いろいろ考えた。
晃司「あれは一体なんやったんやろ、この記憶は夢やない」
そこへ聞きなれた女性の声がした。
一花「先輩」
暗くてわかりづらかったが、それが一花だと分かった。
晃司「一花?」
一花「はい、晃司さん」
晃司「記憶はあるんかい?」
一花「もちろんありますよ、晃司さんとキスをしたことも覚えてますよ」
晃司「やっぱり夢や無かったんやね。なんやったんやろね、あの体験は」
一花「よくわかりません。でも私勉強になりました、自信もつきました。
国防に対しても、そして女としても」
晃司「一花・・俺決めたよ、任官するよ、自衛官になるよ」
一花「それが晃司さんの意志ですよね、それが宜しいかと思います。
晃司さんはその若さで、軍人としても、少佐にまでのぼりつめたん
ですもんね」
晃司「あれは君のおかげでもあるからね。
一花かって女性ながら昔の軍隊で中尉までなったやんか」
一花「あれこそ晃司さんのおかげですよ。
それどころか今回晃司さんが居なければ、私どうなっていたかも
わかりませんよ」
晃司「一花、今いつか知ってるかい?」
一花「2019年12月って聞きました」
晃司「俺もそうきいてきたよ、今度の正月連休は暇かい?」
一花「ああ、この時代が前のままなら今度の連休は予定が
はいってるんですよ」
晃司「そっか、じゃあ連休後、来年の最初の休日一緒に外出しよう」
一花「はい晃司さん、嬉しいです、晃司さんとデート出来るなんて。
来年の最初の休みですね」
晃司「うん、そうやね来年の最初の休みに、校門出たすぐの
茶店で待ち合わせしよう」
一花「はい、そうしましょう。じゃ私そろそろ戻りますね。
今年は本当に色々、ありがとうございました」
晃司と一花はそれぞれ寮の部屋に戻ったのであった。
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