第11話 見つけた手段と行動 その1

岡本晃司「話してると尽きないね。でもそろそろなんとか動かないとね。しかし

     園田さん、君はほんと知識があるね。

     内容も詳細に記憶してるし戦史の研究までしたいってことやし相当知識が

     あるんやろね。そのうち戦史も含めてまた色々教えてよ」


園田一花「先輩こそよくご存じじゃないですか。私なんて大したことありませんが、

     とはいえ私でよければお役に立てればと思います」


晃司「うん。ありがと。でも何か方法がないとどうしょうもないよね」


一花「ほんとどうにか方法はないものでしょうかね」


    そうこうしているうちに晃司はふとしたことに思い当たるのである。

    

晃司「ん。待てよ。そういえばうちの爺さんが言ってたけど爺さんの父親、

   つまり俺のひい爺さんが軍人やったらしい。

   確か海軍兵学校の教官やったとか」


    晃司はなぜ今まで思いつかなかったのかとも思ったが、しかし今の

    うちに思いついてよかったと思うのである。

    また海軍兵学校とは、第二次世界大戦終戦まで存続した、

    大日本帝国海軍の将校たる士官の養成を目的とした

    教育機関である。

    海軍兵学校と並んで将校の養成機関には陸軍では

    陸軍士官学校がある。

    更には密偵(スパイ)の養成機関として

    陸軍中野学校がある。  


一花「ほんとですか?先輩のひいお爺さんに会えればひょっとすると何か

   できるかもしれませんよ。

   お爺さんのお名前はご存知ですよね。

   ひいお爺さんのお名前はどうですか?」


晃司「爺さんの名前は哲司。ひい爺さんの名前は確か、誠吉やったかな。

   苗字は同じ岡本のはずや」


    晃司と同じく一花の心にも希望が生まれた。

    期待に震える声を整えつつ一花は言った。


一花「行ってみませんか?何か方法が見つかるかもしれません。

   場所はお分かりになりますか?関西ですか?」


晃司「いや、福岡や福岡県内の郡や。町まで聞いているから分かると思う、

   行ってみよう」


    ただ一花は2人とも今は防衛大の制服以外なにも持っていない

    ことを改めて気づく。


一花「はい。でもこの時代の金銭がありませんね」


晃司「仕方ない、踏み倒そう。なんとかなるやろ」

     

    晃司と一花は、福岡の晃司の田舎に移動するため、

    こっそり鉄道に乗り込んだ。列車の中。

      

一花「なんだか罪悪感がありますね」


晃司「しー。あまりでかい声では。それにそんなこと言ってたらこれから

   何もできんようになるよ、罪の意識で」


    一花は晃司の考えと覚悟を改めて知り、この人は本気でやる気だ

    と思うのであった。


一花「ですね」


晃司「もうちょっと人気のいないとこに移動しよう」


一花「はい。でもどうしてです?」


    晃司は一花の戦史や歴史の詳細な知識をもとに戦略をたてる

    つもりであり、そのことはうっすら一花にもわかったのである。


晃司「言ったやろ、君の知識を参考にしたいんや」


一花「あー、わかりました」


    二人は人気の全くと言っていいほどない列車に移り、

    話をした。

    晃司は一花の戦史の知識に驚き、このとき同時に既に

    おぼろげにだが戦略を練っていたのである。

    そして晃司は一花にAL作戦について提案もしたのである。

    AL作戦とは、第二次世界大戦中にアリューシャン群島

    西部要地の攻略又は破壊を目的として行われた日本軍の

    作戦である。


晃司「相当細かく知ってるね、ほんとに俺、自信無くすくらいよ」


一花「先輩こそよくそこまでの戦略をこの短時間で思いつきますね。

   こっちが本当に自信無くしますよ」


晃司「まだざっくりしか思いつかないけどね。今言ったことはこれから

   考える一部でしかないと思うよ。

   まあ何か書くものとメモるものがあったらよかったけど」        


一花「そうなんですか?書くものとメモ用紙、私持ってますよ。

   差し上げますよ」


    晃司はこれは助かったと思ったのである。


晃司「紙何枚くれて、書くもの貸してくれたらええよ。君も無いと

   こまるでしょ」


一花「じゃあ先輩が必要なことメモって下さい。さっき二人で話したことや、

   その中で足りないことを、私が追記します」


晃司「分かった」

   

    晃司は今度、必要になるであろう、自分の知ってることに

    加えて、知らなかった情報をメモ用紙に書き、一花に手渡して

    色々と追記してもらった。


晃司「ありがと。役に立てるといいね。まあぼちぼちこの辺の駅かな」


一花「ちょうどお互い仮眠もとれましたしよかったですね」


晃司「やね、次の駅で降りよう、人気も少ないはずやし」


一花「はい」


    晃司と一花は下車してから、駅をこっそり出て、祖父の

    実家に向かった。


晃司「この辺かな。あのーすみません。この辺に岡本誠吉さんのご自宅があると

   思いますがご存知ないですか?」


近所の人「ああ、岡本さんの家ならここから歩いて行けますよ。この先を

     まっすぐ行ってから左へ折れて、しばらくいってから右に

     曲がってすぐですよ」


晃司「そうですか、ありがとうございます」


    そして晃司と一花は、晃司の曾祖父(そうそふ)の家に

    たどりついたのである。


一花「先輩、やっとでしたね」


晃司「うん、ひい婆ちゃんか誰かいたらええんやけど、ちょっと

   声かけてみよう。

   すみませーんどなたかいますか?」


岡本時枝(おかもとときえ)「はーい」


    声の主は晃司の曽祖母(そうそぼ)岡本時枝(おかもとときえ)

    であった。


晃司「あのう、こちら岡本誠吉さんのご自宅ですか?」           


時枝「そうですが、どちらさんですか?」


晃司「誠吉さんの奥さんですか?」


時枝「はいそうですが」


    晃司はやっと見つけたと思うと同時に自分の曽祖母に会えた喜びと、

    果たしてうまくいくかどうかという不安の気持ちがあった。


晃司「私、あなた方の遠い親戚のもので、岡本晃司と申します。

   こちら後輩の・・」


一花「園田一花と申します」


時枝「え、私達の親戚の方ですか?」


晃司「はい、大事な要件で、横須賀から来ました。もし宜しければゆっくり

   お話しがしたいのですが、宜しいでしょうか」


    時枝は若い2人がひょっとすると夫の岡本誠吉が所属する軍の関係者か

    何かかもしれないと思ったが話を聞いてみてから怪しく思ったら

    お引き取り願おうと思ったのである。

       

時枝「お二方変わった服装ですが、見た感じ信用できそうですし、

   宜しいですよ」


晃司「ありがとうございます」


時枝「こちらへどうぞ」


    晃司は自分の祖父の実家が思ったより大きな家だと思って言った。


晃司「大きな家ですね」


時枝「ええまあ、家族が多いもので。主人は仕事で今は居ませんが」


晃司「すみませんが、それなら子供たちや、他の人に聞かれては困ること

   なんで、3人でお話ししたいのですが。宜しいでしょうか」


    この家なら内密の話が出来る場所があるはずであると晃司は思ったが

    念のために時枝に言った。


時枝「なんだか訳ありみたいですねえ、わかりました子供たちをみんな外に

   出しますので少しお待ちください」

      

    時枝は子供たちを、庭で遊ぶようにし、戻ってきて、

    部屋には3人だけになった。


時枝「すみません、お待たせしました。他に誰も聞いていないのでお話し下さいな」


    晃司は話を切り出すのである。


晃司「息子さんに哲司さんと言う方がおられますよね、それと旦那さんの

   誠吉さんのご職業は海軍兵学校の教官ですよね」


時枝「はいそうです、夫は今、広島の江田島で勤務中のはずです。

   あと哲司はうちの三男です」

 

    晃司の心に嬉しさが増幅したが本当にいざとなると緊張する。


晃司「やっぱりそうですね。これから話すことは、旦那さんの誠吉さん以外

   他言無用にお願いします」


時枝「わかりましたどうなされたんでしょう」


晃司「単刀直入に申し上げます、僕は哲司さんの孫です、

   つまりあなたのひ孫です」


    時枝は一瞬耳を疑ったが頭の中が整理出来ずもう少し話を

    聞いてみようと思うのである。


時枝「え、どういうことなんでしょう?」


晃司「信じられないかもしれませんが、僕ら2人は、75年程未来から来ました」


    時枝も通常だったらこの時点でお引き取り願うところであったが、

    晃司と一花のあまりにも真剣な顔に何かあるのかもしれない

    と思い追い返すようなことはしなかった。   


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