第6話 坂城健吾 30歳の質疑応答

 そこにいた全員が拍手をした。

 30歳の彼は照れてはいるが、恥ずかしがったりはしていない。

 さすがに社会人になってしばらくたっている。

 しかも、責任ある仕事を任され始めているときだ。


 ただ・・・

 相変わらず髪はボサボサでシャツはよれよれである。

 とても、この数年後結婚したと思えない。


 20歳の私が聞いた。

「バブル崩壊したのに、まだ更に経済が破綻するんですか?」

「そうなんだよ、ちょっと復活したと思ったら、同時多発テロとかあるし。今度はリーマンショックだよ」

「同時多発テロ?」

「アメリカのニューヨークとか他でも大規模なテロがあって何百人も死んだんだよ。その報復で中東で戦争になって・・・大変だったんだ」

「へえ・・20代の時って、世界中が混乱していたんですね」


 40歳・50歳の私が、考え込む。

 思えば、このころから世界は波乱に満ちていたんだ。

 その後も・・・


「私生活はどうなんです?彼女はできたりしたんですか?」

 20歳の私は気になっているようだ。

「いやあ、ぜんぜんダメだね。大学では研究室に入った後は勉強ばっかりしてた。

 就職してからは仕事ばっかりしているよ。毎日、残業残業の日々だね」

「えぇ・・・」

 がっかりしている20歳の私。


「そこまで、がっかりすることはないよ。そのあと結婚したんだから」

 50歳の私がフォローした。


「え?そうなんですか?」

 20歳・30歳の私が目を輝かせた。

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