童話【少年と青い鳥】
砂上楼閣
第1話〜出会い
昔々のある日、嵐が去った次の日の朝のこと。
数日ぶりに空は雲一つなく、青々と晴れ渡っていました。
強い風と雨が吹き荒れていた森も、今では穏やかなものです。
そんな清々しい空気が満ちた森の中。
一人の少年が、笛を吹いていました。
少年は貧しい貴族の家の長男でした。
落ち込むとよく屋敷を抜け出して、森に笛を吹きにやって来ていたのです。
少年は勉強が苦手でしたが、音楽は得意でした。
少年が笛を吹くと澄んだ音色が響き渡ります。
小鳥のさえずりのような笛の音は、遠く遠く、森のどこまでも届き、時折仲間の声と勘違いした小鳥たちが訪れてはうっとりと聴き入ります。
雨上がりの空気を震わせて、今日も笛の音は森に響き渡りました。
…………。
笛を吹き始めてから少しした頃。
少年の耳に、小鳥の鳴き声が届きます。
どこか悲痛な、助けを求めるような鳴き声でした。
少年は辺りを見渡します。
昨日までの嵐で倒れたのでしょう。
近くにまだ青々と葉を茂らせた若木が倒れていました。
どうもそこから鳴き声がするようです。
近付いてみると、そこから少年の笛の音によく似た小鳥の鳴き声がします。
ピィ…
見れば若木の枝と地面に挟まれるように、一羽の鳥がいました。
嵐が過ぎ去った後の青空のように、鮮やかできれいな青い羽をした鳥です。
どうやら片方の翼が挟まってしまって、動けないようです。
「大変だ!今助けてあげるね」
少年は慌てて木を持ち上げようとしました。
しかし…
ピィ!ピィ!
青い鳥は助けに来たのが仲間ではなく人であったことに驚き、バタバタと暴れます。
辺りに抜けた羽が飛び散り、このままでは挟まったままの翼に傷がついて飛べなくなってしまいます。
「大丈夫、怖がらないで」
少年は優しく声をかけます。
「傷つけたりしないから、安心して。木を持ち上げるから、ゆっくり翼を外すんだよ?」
何度も何度も優しく声をかけるうちに、青い鳥も落ち着いてきたようです。
少年は青い鳥が傷つかないようにゆっくりと若木を持ち上げます。
木の下から出てきた青い鳥は、軽やかに飛び上がり近くの木の枝にとまりました。
少年は青い鳥が無事だったことを喜びます。
青い鳥はお礼を言うように少年の周りを羽ばたき、少年の肩にとまりました。
そして一枚の青くきれいな羽を抜くと、少年に渡して飛び立っていきました。
少年は大きく手を振って青い鳥を見送ります。
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