ギャルとバレーボール
「おい徹、ほっ」
「それっ」
「あーん。惜しいな。もう一回だ」
「はい」
今ボクたちは、バレーボールの特訓をしている。球技大会が近いからだ。
けれど、今回教わっているのは、ボクの方である。
「徹も大変だよな。そんな小さい身体でバレーボールとか」
ボクの背丈は、結愛さんより頭一つ低い。結愛さんが女子の中で、大きい方ってのもあるけれど。ボクが並の男子より、背が低いのは事実だ。
クラスに貢献するには、防御に徹するしかない。よってボクは、細かく動く練習をしていた。
結愛さんがコーチ役になってくれている。ピンクの私物ジャージが、すごく似合っていた。ただ、下がTシャツなんだよな。目を奪われる。
「次レシーブな。それ」
高くフワリとボールを上げて、結愛さんは回転の効いたスパイクを放った。
「とうっ」
ボクの回転レシーブは、空を切る。
「回転しなくていいんだよ。普通にやりな。ほれっ」
「はいっ。よっ」
普通にやったら取れた。
「やったじゃん。ちゃんと返せたな。次トスなー」
ぽん、と、結愛さんがボールを上へ弾ませる。
ボクはボールより、ふんわりと弾んだ二つの物体に目を奪われてしまった。
「あいたっ」
「よそ見すんな。もう一回。ほら」
またしても、ボクは弾んだ二つのボールへ目が行く。
「どこ見てるんだ? まったくもう」
「す、すいません」
「ちょっと休むか。こっちに来い」
草むらに並んで腰を掛ける。スポドリで喉を潤した。
「お前、あのデカいワン公を連れても平気なんだから、腕力はちゃんとあるんだ。自信を持ちな」
「ありがとうございます」
息を整えながら、ボクは返答する。
引き続き、結愛さんがボクにアドバイスをくれた。
思わず、スポドリをゴクリと飲み込む。
結愛さんのTシャツが汗を吸って、ピンクのブラが透けていた。
「……だからな。おい聞いてんのか?」
「はいっ。大丈夫です」
「ちょっと暑いな。脱ぐわ」
ピンクジャージを脱ぎ、結愛さんはTシャツとレギンスだけに。
周りにいる男性陣の視線を、釘付けにしてしまった。
「よーし続けるぞー」
「はい。でも、ジャージは着た方が」
「暑いんだよ。それに誰も見てねえよ」
思い切り見られているのに!
「いや、でも透けて……」
「スポブラだからいいんだよ。サボる言い訳すんな。さっさとやるぞ」
結局、結愛さんが飽きるまで、ボクの特訓は続いた。
球技大会当日を迎える。
ボクたちのクラスは、見事優勝した。特訓の成果が出た……んだろなと思いたい。
でもわかっている。本当の勝因を。
相手の男子が、女子コートで戦う結愛さんのスポブラに視線を奪われていたからであった。
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