第1話

「————え、いきなり過ぎない?」


「俺もそう思う」


 だって思ったのも今日の出来事だしなぁ……。


 その夜、アリスとルーナを部屋に読んだ俺は、二人の両親に挨拶に行くことを話した。予想通り、思っていたような反応が返ってきた。


「でも、実際結婚するんだからいづれ行かないといけないだろうし、なんだかんだ俺二人の両親と会ってないからな」


 結婚をする際に、両親に挨拶をしに行くのは常識。色々とやることも終わってるし、タイミングとしては充分だろう。


 それに————


「二人も、家族の様子とか気になるだろ?」


「……まぁ、そうね」


「そう、ですね。家族が大丈夫かどうか……邪神騒動の後処理で忙しかったですから」


 邪神騒動で、あの時邪神が生命力を吸い上げていた中には、王都に住んでいる二人の家族もいた。エリメラ様からの報告で、国民全員に命の危険がなかったことは伝えられていたけど、やっぱり心配だろう。


「だから、明日早速王都に向かおうと思うが……いいか?」


「はい、そういうことでしたら分かりました」


「着替えは絶対に準備したほうがいいわ。私のお父さん、絶対泊まるように言ってっ来るから」


「勿論、二日三日はいる予定だよ。一日目ルーナ、アリスは二日目の感じで」


 具体的な予定は決めていないが、多分家が近いほうから先に行くことになるな。


「それじゃ、明日に備えて寝るか」


「はい!……あの、久しぶりに一緒に寝ませんか?」


「そうね……最近、ご無沙汰してたし、ティルファを独占できる機会が減っていたものね」


 チラッとルーナが俺を見た。その視線は何故か下へ向かっていき————


「おい、明日挨拶行くって言ってるじゃん」


「大丈夫大丈夫。私たちの旦那様だもの————頑張って二回やりましょうね」


「ちょっとま————」








「うーん!いい朝ね!」


「そうだな……」


 あぁ……太陽が眩しい。あと眠い。


 その後、二回といわず五回くらい絞られた俺は、寝不足だった。元気に会話しているアリスたちを見て、何が違うのだろうと思う。だって寝たのほぼ同じ時間じゃん。


「久しぶりの旅、なんだかワクワクしますね」


「そうね。まぁ移動手段は転移魔法だから旅の醍醐味はほぼないけれど」


「馬車使ったら七日間かかるからな」


 帰ってきたあの時のように、二人に膝枕してもらいながら馬車に揺られるのも魅力的だが、あんまり時間はかけられない。


 なぜなら、二人の後にはラミュエールや、カレン、メリウスと大陸中を移動しなければいけないからだ。


 メリウスは国から追放されているが……まぁばれないでこっそりと行ってこっそり帰ってくるのなら問題ないだろう。あの国王もメリウスには会いたがっているだろうし。


 問題はラミュエールである。彼女の両親は既に他界しており、親代わりがあのおっさんどもなのだ。絶対に話し合い(物理)になるのは目に見えている。


「……あ、なんか憂鬱になってきた」


「どうしました?」


「いや、ラミュエールの挨拶を考えるとな……」


「……あぁ」


 アリスとルーナもあの時のことを思い出したのか、アリスは苦笑いを浮かべ、ルーナは遠い目をした。


「あの人たち、問答無用で襲ってきたものね」


「きっと、今回も荒れ狂う————いえ、この言葉で収まるでしょうか」


「確かに」


 荒れ狂うという生易しい言葉ではすまない。そんな気がした。

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