第3話

 二週間が経った。今回、全世界魔法対抗試合が行われる都市は、マベラという街である。


 全世界魔法対抗試合は、毎年毎年開催される場所が違うが、その土地の特性としてウチのディルクロッドとは真逆の、土地に魔力がふんだんにある場所が会場となる。


 土地に魔力が多いいと、普段よりも少ない消費量で魔法を使えるということや、回復の際に掛かる時間も少なく、生徒の負担が少ないという点がメリットがあり、ド派手な魔法がドンパチ出てくるこの試合ではうってつけの場所となっている。


 マベラはその点、ほかの開催場所よりも多く魔力が空気中に含まれているため、魔法使いにとっては普段以上の力をだせる場所となっているだろう。


「はい、到着」


「……これが学校にあったと噂される転移魔法陣……一方通行とはいえ、普通に行ったら五日はかかる道も三秒……」


 今回の移動手段は、魔法学校の地下にある転移魔法陣を使った。一方通行で、決められた場所にしか飛べないが、一瞬で離れた場所へ行くことが出来る。


 帰りは俺がセルフ転移で連れて帰るため、長旅をする必要もないのである。


「ここがマベラ……初めて来たけど、以外と活気があるのね」


「こんな光景が見れるのも今の内だけだ」


 後ろから着いてくるルーナがそう呟くが、これが本来の姿ではない。


 今回は魔法対抗試合があるからこんなに活気があるように見えるだけで、普段は人が溢れる程いる訳ではないのだ。


「とりあえず、開会式が一応あるからな。急いで試合会場のホールに向かうぞ」


 会場は、ここから真っ直ぐ見えるドデカい会場である。目視できるのなら、こんな人混みをわざわざ突っ切る必要は無い。


 指をパチンと鳴らすと、俺はルーナ、アリス、カレン、メリウスをテレポートで会場の入口まで移動をさせた。


「ここからは分かってるよな?」


「はい。大丈夫です、先生」


 ここから、生徒と教師は一度別れることとなる。生徒は開会式があるため、一度生徒同士で集まらなければいけないが、教師陣は教師陣に割り振られた部屋があるため、そこに移動しないといけないのだ。


「気をつけろよ」


「分かりました!」


「先生……あの、きちんと見ててくださいね」


「おう。しっかりと見させてもらうよ」


 開会式が終わったらすぐさま初日の競技である魔法コンテストが行われる。最終日のトーナメントを除けば一番盛り上がる種目である。


 それでは、と言って手を振って立ち去るカレンとメリウスを見えなくなるまで見送り、俺たち三人はくるりと踵を返す。


「さて……それじゃ行きますか」


「そうね」


「メリウスちゃん達の魔法を見て驚く姿が目に見えますね。楽しみです!」


 この二週間、アリスとルーナにはみっちりとカレンとメリウスを扱いてもらった。俺はちょっと色々と手続きとか、呼び出しとかあったため、あまり顔を出せなかったため、実はあまり二人の成長を見れていない。


 カレンとメリウスには話していないが、この呼び出された理由についてはアリスとルーナには話しているため、驚く顔が楽しみである。


「……ほんと、楽しみね。二重の意味で」


「おう、驚く顔が楽しみだな。二重の意味で」


 会場の近くで、少しだけ悪い笑みを浮かべた三人が居たとか居なかったとか。


 観客が入る入口とは別の入口から会場の中に入っていく。魔法学校の教師であることを示す特別なカードを警備の人に見せてから中に入っていく。


 構造的には学園の訓練場をそのままどデカくしたような感じである。こちらのスペースは控え室やらシャワールームやら医務室やら、選手のバックアップを完全にサポートする施設がある。


 このマベラの会場にくるのは初めてなので、俺が先頭に立ち、地図を見ながら歩いていたのだが、そのせいで曲がり角からくる人の影に気が付かなかった。


「キャッ」


「!おっと……」


 ドンッ、と体を軽く押されたが、俺はそんなに体勢を崩すことなく耐えたが、ぶつかってきた人が倒れそうだったので咄嗟に目の前の人の腕を掴んだ。


「すみません、大丈夫でしたか?」


「えぇ、こちらこそすみません」


 ぶつかってきた人は、長い金髪が特徴的な女の人だった。服装から見るに……ここの医務担当でやってきた人だろうか?


「すいません、お怪我はありませんか?」


「えぇ、大丈夫です。支えてもらいましたので」


 後ろからひょこっとルーナが目の前の女性を見て声を掛けたが、その瞬間に顔が強ばったのが見ないでも分かった。まぁこの人、びっくりするくらい美人だからな。


「その、すみません。それでは」


「こちらこそすみません」


 そして最後に何故か、俺の顔を二秒ほど凝視してから俺らの横を通り過ぎて行った女性だった。


「ティルファさん。余所見してたらダメじゃないですか」


「いやぁ……面目ない」


 1つ言い訳させてもらうとここって魔力が潤沢だから魔力の気配で人を感じることが出来ないのよ……。






「あのお方が、私の――――」




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新作を投稿してます!作者にしては珍しく一話、二話じゃなくて、話数ごとに題名つけてます。作者にしては珍しく。

『トンネル抜けたら異世界だった~訳ありエルフと異世界チャリ旅~』


さて、最後の人、一体誰なんでしょうねぇ(すっとぼけ)

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