二章エピローグ
メリウスが、ティルファに待ったをかけ、連れて行って貰った先は、フォレストキシニョフにて1番高い位置にあるツリーハウス――――かつて、メリウスが過ごしていた我が家である。
「お父様」
「――!メリウス、か」
音もなく、父の部屋に忍び込むと、父親であるエイデリアンは、ディルクロッドにいるはずの我が娘を見て、目を見開かせたが、直ぐに落ち着きを取り戻した。
「なぜお前がここにいる。お前は、魔法をコントロールするまで戻ってくるなと言ったはずだ」
そう言った瞬間、メリウスが魔法陣を展開し、ひとつの魔法が飛び出した。威力も規模もティルファが見たら鼻で笑いとばしただけで消えてしまいそうな小さな火だったが、しっかりとコントロールされているのを見て、エイデリアンは更に目を見開かせる。
「メリウス……お前、魔法を」
「うん……お父様が先生に依頼してくれたおかげで私……使えるようになったんだよ」
「……そうか。やはり、メルジーナに頼んで正解だったな」
何とか、娘の死刑を回避させるためにディルクロッドへと送り、旧友であるメルジーナに頼んだのは間違いではなかったと確信を持ち、息を長く吐いた。
「……それで、お前はどうしたいんだ?戻りたいのなら今すぐにでも―――」
「ううん………私は、もうこの国には戻らない」
「――――何?」
まさかの言葉に、エイデリアンは僅かに瞼を上げた。
「どういことだメリウス。お前は―――」
「お父様……私は初めて父親に反抗します」
「メリウス………」
すぅー、はぁー、と大きく深呼吸をすると、メリウスはギリっ!とエイデリアンのことを睨みつけた。
「…………大っ嫌い」
「メリウス……」
「大っ嫌い大っ嫌い大っ嫌い!私を貶していたこの国の皆も!ずっと私を騙していたミィも!私を無能にした原因のガレオンも!みんなみんな大っ嫌い!」
今まで貯めていた鬱憤を撒き散らすかのように叫ぶメリウスの言葉を、エイデリアンはただただ黙って目を瞑る。
「この国なんて大っ嫌い!そして、私を庇わないで見捨てたお父様が一番大っ嫌い!」
―――大好き。守ってくれたってわかった時は嬉しかった。
「お父様のバカ!お父様なんて―――死んじゃえばいいんだ!」
―――大好き。でも、今までありがとう、お父様。
ぽたぽたと、両目から流れる銀色の雫を拭うことなくエイデリアンを睨みつけた。
「………そうか。言いたいことは終わりか?」
そして、何をして欲しいかや、その裏にある意図を全て読み取ったエイデリアンは、一瞬優しげな顔をした後に、王の顔へと。
「メリウス。貴様は、王による不敬や、先程の私に対する暗殺未遂の罪により、お前をこの国から永久追放する。二度と、我が国の敷地を跨ぐな」
「…………」
そして、メリウスは何も発することなく部屋を出ていく。
「………これが、親離れと言うやつか、メルジーナ」
エイデリアンの頬に、一筋の涙が流れた。
「良かったのか?」
「先生……」
部屋を出たメリウスを待っていたのは、勿論ここまで引率をしたティルファである。カレンの方は既にガレオンの脅威を無くしたため一足先に帰ってもらった。
「あんな別れ方で、本当に良かったのか?」
「はい、後悔はしてません……だって、これで本当に、この国のことを嫌いになれましたから」
「………そうか」
メリウスの苦しみは、ティルファには全く分からない。メリウスがこの国でどんな扱いだったのか、それを百年余り、この小さな身で受け止めた苦しみなど、まだ18年程度しか生きていないティルファは、分かるはずもない。
「でも、先生………少しだけ、胸を貸してくれませんか?」
その日、一人の王女は、そのティアラを放り投げた。
精巧ステンドグラスによって様々な色に変化した太陽の光が、その中心にて祈りを捧げている。
とある国で、『聖女』と呼ばれるこの女性は、神々の言葉をその耳で聞き、未来に起こる災厄を事前に察知することが出来る。
今日、彼女は朝起きた時から言葉に表すことが出来ない程の不安に襲われ、こうしてずっと祈りを捧げている。
「――――!?」
そして、この目で見る、最悪の未来。
「……いけませんっ……!また、神々の戦争が起きてしまいます!」
また、この世界に新たな災厄が目を覚まそうとしていた。
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と、言うことでこれにて第二章は終了でございます。これでちょうど100話ですかね?ほんと………いやほんと、こんな誤字脱字多め設定ガバガバな作品を読んでくださりありがとうございます!
これからも頑張ります!応援まだまだよろしくお願いします!
新作も読んでくれてもいいのよ!
『天職:TAS』
P.S
全然100話じゃなかった。99話目だった。
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