第26話

 ある日の朝、いつもより早く目が覚めた俺の目の前にあったのは最愛の人の寝顔だった。

 俺の腕を枕にし、穏やかな寝息を立てて幸せそうに眠る姿はまさに女神以外の何者でもない。空いている左手でスマホを操作し、時間を確認する。


「5時……」


 普段よりも2時間早い目覚めだった。本当なら二度寝をしたいところだが何故か目が冴えているのでもう一度寝ることは出来なさそうだ。加えて紅愛が俺に抱きついているので動くことも難しい。


「んふふ……蒼太くんったら……甘えん坊さんなんですから……」


 紅愛の方が甘えん坊だと思うけどね。一体どんな夢を見ているのだろうか。


「んぅ……えへへ……」


 すりすりと頬擦りをして笑みを零す紅愛。やはり俺よりも紅愛の方が甘えん坊である。

 スマホを枕元に置き、左手を紅愛の腰に回して抱き寄せて密着する。お互い全裸なので紅愛の柔らかい肌の感触がダイレクトに伝わってきた。


「んっ……んんっ……」


 艶めかしい声を漏らして紅愛が身じろぎをする。流石に今ので起きてしまったか?そう思ったが杞憂だったようでまた直ぐに小さな寝息を立てて眠った。


「はぁ、びっくりした………ん?」


 だが俺は先程までの紅愛の呼吸と今の呼吸に違いがあることに気づいた。具体的に言えば、吐く息の量、そして呼吸の周期が早くなっているのだ。そしてよく見ると紅愛の顔がほんのりと紅潮していた。


「……起きてる?」

「っ!……(ふるふる)」


 気が動転しているのか寝ていれば反応するはずもない俺の問いかけに首を振る紅愛。思わず笑みが溢れてしまいそうになる。


「そっか……起きてたらおはようのキスしようって思ってたんだけどなぁ」


 これは嘘じゃない。俺が先に起きるなんて珍しすぎるからな。それくらいのサービスはしようと思ってたんだ。

 案の定キス魔の甘えん坊紅愛は狼狽えた様子を見せる。そして……


「い、今起きました……だから、き、キスを」


 丁度タイミングよく起きた体にしてキスを強請ってきた。


「ん?今起きたらキスの話なんて分からないと思うんだけど」

「あぅ……」


 何故こういう時だけポンコツなのか。まぁそんな所も可愛いので良しとしよう。


「……嘘だよ。おはよう紅愛」

「んっ♡」


 体を回して紅愛に覆い被さるような体勢になった俺は紅愛の頬に手を添え、唇を合わせる。

 俺は数秒唇を合わせるだけにしようと思ったのだが、しばらくすると紅愛が首に腕を回し、舌を絡ませようとしてきた。目を見るととろんと蕩けており、朝、しかも寝起きだと言うのにヤる気スイッチが入っていた。しょうがないので紅愛の望みに応え、舌を絡ませる。


 部屋に響くキスの音が激しくなるに連れて俺達の気持ちも高ぶっていく。


「ぷはっ♡蒼太くん……来て♡」


 四肢を広げて俺を受け入れる姿勢を取った紅愛からの甘い囁きが決め手となり、俺達は休日の朝から交わった。









「あ〜ん」

「あ〜んっ♡」


 朝っぱらから盛っていたので当然の如く俺達は水分補給だけして朝昼飯を食べていなかった。運動もしたことで腹の空いた俺達は昨日作って余ったカレーを晩ご飯として食べていた。


「あっ……」

「蒼太くんが取ってください」


 紅愛の口元にカレーが付いてしまった。それを紅愛も分かったのだろう。俺に取るように言ってきた。


「はいはい……」


 口元に付いたカレーを指で掬い取り、口に運ぶ。


「蒼太くん、明日は何しますか?」

「ん〜?紅愛は何したい?」

「蒼太くんとゴロゴロしたいです」

「じゃあゴロゴロしよう」


 ということで明日も紅愛とゴロゴロすることに決定。いや今日はゴロゴロしてた訳じゃないから明日もって言うのは違うな。


「あっ…そういえば調味料を切らしてたんでした」

「じゃあ明日買いに行く?」

「お買い物デートですね!行きましょう!ついでに新しい服なども買いませんか?」

「いいよ。行きたいとこ全部行こ」


 こうして一度変更したが俺の明日の予定は確定した。ゴロゴロするのも良かったが買い物デートも良い。どちらかしか選べないなんてあんまりである。


「ふふっ♪また今日みたいに起こしてくださいね」

「今日みたいにしたらまた家から出れないじゃん」

「大丈夫です。我慢しますから」


 翌日、頑張って早起きした俺は今回のように紅愛を起こした。その結果、俺達が買い物に行くことはなかった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

皆さんお久しぶりです。約3ヶ月ぶりといったところでしょうか。作者のおひとりです。この3ヶ月間、執筆活動を止めて様々なことに挑戦していました。またゆっくりと更新を再開していきたいと思っておりますので応援よろしくお願いします。

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