第13話飛び付かれ、意識を失う
掛け布団の隙間から杏美がこちらを窺って、ベッドから飛び付いてきた。
俺は、杏美の身体を支えきれずに無様な声をあげ、足が滑り倒れた。
「おおぅわぁぁっ......うっはぁっぐえっ、おもてぇ......マジで......」
「てててぇっ......重たいって言わないで、ううぅぅ......女子にそれは禁句、だかぁらっ......ねえ、ぇぇ」
泣き腫らした目もとを見せまいと俯いて、頬を紅潮させた杏美。
「潰れそう、床が散らかってて背中ももたないからぁぁ、退いてほし......ぃっ」
俺は、杏美の体重と散らかった床に挟まれ、身体が悲鳴をあげていて、意識を失う。
「──っぱい、──かっ、んぱいっ起きてぇっ!」
う、うんぅーうっんううっ......誰だろ、う......呼ばれたような──
聞き覚えのある声がしているが、死んだ、のか......俺、は──
ぴしゃっぴしゃっと音が聞こえ、頬に微かな痛みを感じ、ゆっくり瞼をあげると杏美の涙を浮かべた顔があった。
「なっ、何をして......んの。あず、みは......」
「何をって、平塚先輩が死んだみたいに動かなくなって、必死に起こそうとっ......心配させないでよ、もうっ、うっうううじんばぁっあい、じまじぃぃったぁよぅー、本当にぃっ」
「どれだけ泣くんだよ、杏美は。泣き虫だな、本当に。退いてくれない、杏美」
「うぅっ、うん......」
俺は、起き上がり杏美に目を向けると、ブラウスにスカートという姿の杏美に驚き、声を荒らげた。
「えっ?はっはああぁぁぁっっ!おまっ、その格好っ、風呂入ってないのか?マジかよ、それに少し汗臭いし。早く汗を流してこい、杏美っ!早く行ってこい」
「そっううぅぅ......だぁってぇっ、ひらつっ......振られて、その......」
「ごめんっ、言いすぎっ、てはないけど......行ってきてから話聞くからっ!待ってるから、行ってきて。杏美」
「うっうぅああああ──」
泣き声をあげて部屋を飛び出す杏美。
落ち込んでいたとしても、夏に風呂に入らないのはすごい。
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