第15話 月が奇麗ですね

「ゆうちゃん。少し二人で話したいんだけどいいかな?」


「ん?いいよ~少し離れる?」


「うん。そうして欲しいな。明日香に話したら明日香は佐島さん達と一緒に居るからって言ってくれたから。」


鬼畜仕様の林間学校の2日目の夜、小岩井たちと焚火を囲んでいた佑介は亜紀から誘われたのであった。


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「ゆうちゃん。私の事嫌いだよね・・・。」


「ん?どうしたの、急に?」


「私、分かってたの。ゆうちゃんが昔から明日香の事好きだってこと。」


「ん?まー、そうだね・・・」


「だから、私、少しでもゆうくんに振り返ってもらえるように努力したわ。苦手だった勉強もしたし、少しでも意識してもらえるために体中のお手入れもしたわ。ゆうくんの好きそうな服も選んで着たわ。だから、中学生のとき、告白して付き合ってもらったとき、物凄く嬉しかったの。それが、たとえ、明日香の代わりだったしても・・・私は嬉しかったの。だけど、私、馬鹿だから調子に乗って他の男子からの告白も受け入れてしまって・・・本当に、私って嫌な女よね・・・ゆうちゃんに見放さられるのも道理よね。あんなにゆうちゃん、私の事、怒ってくれたのに。うふふ

ゆうちゃんが泣きながら{自分の体を大切にしてくれ。頼むから}って言ってくれたの思い出しちゃったわ。」


「まーあれは、なんだ、正直、悔しかったんだよ。あきちゃんが安売りしてるみたいに思えてしまってさ・・・嫌だったんだよ。」


「だから私の彼氏になってくれたの?男遊びを止めさせるために?」


「んー確かにそんな気持ちはあったと思うよ。だけどね・・・あきちゃんの事、確かに好きだったんだよ。あきちゃんの天真爛漫な笑顔が好きだったんだ。」


「もう・・・この女たらし。そんなこと言われたら・・・本気になるじゃない・・・けど自業自得よね・・・明日香に負けちゃった・・・えへへ」


その時、亜紀の顔が月明かりによって照らされた。その大きな美しい瞳から一筋の涙が溢れたのであった。


「あれ?はは。なんだこれ。泣かないって決めてたのに・・・嘘ぽくなるじゃない・・・嫌だ・・・嫌だ・・・・うええええええええええん」


亜紀は佑介の肩に顔を埋めしばらく嗚咽を繰り返していた。


「ははは。泣いちゃった。ゆうちゃんに迷惑かけちゃったね。明日香とさ、仲良く幸せになってよ。応援するわ。」


「ふうーたくっ。僕はだめな男だ。」


「あきちゃん。月が奇麗ですね。」


「え?それって・・・その意味なわけないか・・・うん!月がとっても光って物凄く奇麗ですね!」


「ふふふ、あきちゃんらしいな。じゃ、僕も言い直そうかな・・月がとっても天真爛漫に輝いていつも僕を導いてくれる大切な本当に大切な月がとっても奇麗ですね。」


「え?え?それって・・・」


「うん。夏目漱石先生が言われた訳の意味だよ。アレンジしちゃったけど。」


「そのさ、倫理的に間違ってると思うけどさ、この際、あのモンスター達の計略に乗っかろうとおもってさ。それでもいいかな?」


「う、うん・・・・」


「小路亜紀さん僕はあなたのことが好きだ。大好きだ。幼いときからとっても大切に思ってる。だから、僕と恋人になってくれませんか?」


「はい。私、小路亜紀は東川佑介さんのことが好きです。大好きです。うーんもっともっともっと大好きです。私を恋人にして下さい。」


そして二人は2度目になる大人のキスをしたのである。


「ううう・・・グス・・・・ううううう」


「明日香。邪魔しないでよ。私のターンなんだから!」


「うううう、よかったね、本当によかったね。亜紀。」


佑介の彼女の2人はお互い泣きながら抱き合ったのであった。


「ゆうくん。けちつけるつもりじゃないけどさ、なんか私の時よりもロマンチックじゃなかった?」


「気のせいだとオモイマスヨ。」

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