前のエピソード――第4話　お手て繋いで

「では本日はここまで。気を付けて帰りなさい。」

相模先生がそう宣言したことによりホームルームが終了した。その瞬間クラスの男子は明日香の席に急襲をかけた。

「姫野さんあんなしょぼい男じゃなくて俺と付き合ってよ。楽しくしてあげるからさ～」

と茶髪のちゃらいクラスメート

「姫野ちゃんあんな顔できるんだったら俺にもして欲しいな～これからうちにくる？親いないからさ～」

と下心全快のチャラ男B

「姫野さん男欲しいなら言って欲しいな～あんなしょぼい奴より俺、上手いからさ気持ちよくさせるからさ～」

とクラスカースト上位のイケメンA

その時、教室の温度が急激に下がった。今は春下旬の暖かな日なのにである。その凍てつく空間にさらに凍てついた汚物を見るような視線が一つ。

「猿以下の知能で話しかけないでください。いえ、お猿さんに失礼でしたね。生きる価値の無いゴミでしたね。」

そう言い放つと明日香は周りの男子へ威圧をかけ佑介の席に向かったのであった。

「ゆうくん。一緒に帰ろ。えへっ。」

明日香は先ほどとは正反対の表情、甘ったるい言葉で佑介に抱き着きながら言った。

「殺す。絶対殺す。」

「おお東川。いい度胸だな。殴るわ。」

「おいみんな東川を囲め！ぼこるぞ！」

本当にやめてほしい。かなりめんどくさいと佑介は思った。

「ゴミ虫。一応警告しとくけど、ゆうくんに暴力はやめておいたほうがいいわよ。」

「くそが！そんな暴言はいていいと思ってるのか！お高く留まりやがって、東川をぼこったら次お前だからな！裸になって待っててもいんだぜ。おい、撮影班準備しろ！」

そう言ってイケメンAは明日香の髪を引っ張った。しかしその引っ張った手を横から強力な力で引きはがされそのまま３ｍほど投げられた。

「おおこら。お前ら死んだわ。俺の女に何手をかけてるんだよ。撮影だ？なにしようとしてんだ？あ～？」

佑介はチャラ男Ｂの胸倉を掴み上げ宙に浮かせながらそう言った。佑介お怒りモード発動である。

「ゆうくん。私は大丈夫だから落ち着いて！ゆうくんが本気で殴ったらこのゴミは本当に死んじゃうわ。ゴミはどうでもいいけど、ゆうくんが罪を背負う事はないわ。」

「あっちゃんに手をだしたんだぜ？許せないよ。」

「ゆうくんは昔から喧嘩めちゃくちゃ強かったし、中学の時、空手で世界大会優勝したの知ってるんだから！しかも、中学2年生の時高校生を何人も病院送りにしたのも知ってるから！私は本当に大丈夫だから落ち着いて。」

そう、佑介は普段は穏やかな陰キャだが幼いころより空手を習っておりめちゃくちゃ喧嘩が強かった。大切な人に危害が及ぶときエリートヤンキーへと変身するのであった。

「おい、お前らいい加減にしろ。東川と姫野は事情を聞きたいから職員室に来い。そしてそこの男女の6人は生徒指導の小笠原先生と指導室に行けお前らは完全にアウトだ。」

相模先生と小笠原先生の二人は教室に入ってきてその場を収めた。その横には小岩井が息を切らせながら立っていた。クラスの異変を感じ取りすぐ教師をよんできたのであった。

佑介も明日香の安全が確保されたのでその手を放し、明日香を守る位置に移動した。その時には風紀委員も数名、教室に入ってきており、大事に発展したのである。

「風紀委員長の春日よ。数日前に特定の女生徒へ婦女暴行計画があることが密告された。ストーカー行為も確認できたので他の関係している生徒は確保したわ。女として言わせてもらうけどあんた達、最低よ。特に首謀者の女生徒達！いくら嫉妬したと言っても男に襲わさせるなんて最悪よ。恥を知りなさい！。」

「姫野さん怖かったでしょ？今からは私たち風紀委員と生徒会と先生たちで警護するので安心してね。まあ、あの東川くんが付いていれば大抵の犯罪者は大丈夫だろうけどね。」

「え？春日先輩、ゆうくんのこと知ってるんですか？」

「ええ。といっても直接の面識は無いの。私、空手習ってるんだけど、格闘技する人は大体知ってるんじゃないかな。最強の中学生空手家として・・・」

クラスメイトは戦慄した。いつも大人しく机で本を読んでいるイメージのある東川が有名人だったとは思わなかったのである。

その後、2人は職員室で事情聴取を受け、呼ばれていた両親とともに警察の事情聴取まで受け両親とともに自宅へ帰ったのである。

その日、調査がおこなわれ、この計画に参加していたものは各学年合わせて15名関わっていたことが判明した。その計画は学校で襲撃し、失敗したときは明日香の1人の時を狙って自宅で襲うというものだった。これは普通に犯罪だったので15名は逮捕及び補導され行政の裁きを受けることになった。学校側の処分は退学処分であり、数回にわたり保護者への説明会も行われたのであった。