ポーション屋を追放されたので、お茶屋をはじめたい。だってそれどう見てもお茶の葉ですよね?
とまと
第1話
20歳 大学の同級生浩史と交際開始
25歳 プロポーズされ婚約
27歳 浩史と新入社員♀との噂を耳にする
28歳 友達と電話中の浩史「結婚するなら若い子がいいじゃん」
29歳 婚約破棄を言い渡される←NOW
覚悟はしてた。
25歳でプロボーズされ、婚約してから4年。全然具体的な結婚の話がでないから。
「あのさ、涼奈……お前のことが嫌いになったわけじゃないんだけど、あの時は俺も若かったっていうかさ」
違うでしょ。あの時は私も若かったっよね。
30歳目前になった彼女が、老けて見えてきたんでしょ?若い新入社員に鞍替えしたんでしょ?
噂はきいていたし、なんとなくこのまま結婚はしないのかなと思ってもいたし。別れる覚悟もとうの昔についていた。
だから、何を言われてもやっぱりなぁと思うだけだと、思ってたんだよね。
「お前の実家、農家じゃん」
へ?
実家?
「若い頃ってさ、結婚はお互いの気持ち一つだと思ってたけど、やっと最近実家とかも関係するんだなあって思ってさ。やっぱ、農家って、無理だわと思ったわけ」
農家が無理?
「えっと、別に私が継ぐわけじゃないよ?それは知ってるでしょ?兄が継いでるし……」
「あー。うん。だけどさぁ、知り合いとの会話で、奥さんの実家は農家なんですって、かっこ悪くて言えないだろ?」
は?農家が、かっこ悪い?
「実家からネギとか白菜とか段ボールに入って送られてくるんだろ?送料考えたら買った方が安いってwwとか、結局腐るし迷惑なんだよねwwとか、もうみんな大爆笑よ」
な……何?実家が農家って、笑いものにされるようなこと?
「だからさ、わりぃな。涼奈、結婚できねぇわ」
こっちこそ……あんたみたいな男と結婚なんて願い下げよっ!
全国の農家に謝れ!もう二度とお前は農産物食うな!石油で作った油でも飲んで生きてけ!
私が可愛げがないとか、老けたとか、他に好きな子ができたとか、そんなことを言われるのは覚悟してたけど……。
大好きな実家をディスられるなんて、夢にも思っていなかった。
私は両親のことが大好きだし、両親の仕事にも誇りを持っているし……。
自分の浮気を責められないように、責任をこちら側に押し付けたいのは分かるけど、まさか実家を罵るなんて!
悔しくて、悲しくて、何より腹立たしくて、目の前が真っ白になった。
……って、あれ?
真っ白?
本当に目の前が真っ白。いや、世界が真っ白で、目に映るものは浩史の姿しかない。
29歳のわりに若く見られるのを自慢していた浩史。180センチの細身で、イケメンの部類ではないものの、優しそうな笑顔と口のうまさで女性にはそれなりに人気者。
今になって分かった。若く見られるんじゃなくて実際に中身が幼稚だから容姿がそれに引きずられていただけなんだって。フード付きパーカーに、腰履きジーパンにリュック。学生のころと変わらない服装。優しそうな笑顔ではなく、調子のいいへらりとした笑い顔だって。
「な、なんだこれ?」
驚いた顔の浩史が口を開いた。
ああ、どうやら浩史の視界も私のようにおかしなことになっているようだ。
真っ白だった1、2秒後、今まで立っていた新宿の駅近くの路上の景色はなくなっていた。
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