徹底抗戦派の反乱
第1話・占領
大陸歴1655年3月14日
ブラウグルン共和国軍は、ブラミア帝国軍と戦われたグロースアーテッヒ川岸での最終決戦でほぼ壊滅状態となり、その後、無条件降伏した。共和国政府は首都の住民に被害を及ぶことを防ぐための無条件降伏という苦渋の決断をした。共和国の首相は全権委任された帝国軍の総司令官デニス・ソローキンと交渉し、共和国軍の首都防衛隊の武装解除を約束し、帝国軍の首都への入城を承諾した。
交渉後、帝国軍の軍勢が次々と街へ入って来た。
私は、直接見ることができなかったが、その様子は後に私の耳に入ってきた。
一番前を進む一団は帝国軍でも猛勇さで大陸中にその名が轟いている“重装騎士団”だ。さらに、その先頭を進むのは、総司令官を務めた帝国軍第二旅団長のソローキン。十日ほど前の “グロースアーテッヒ川の戦い” で浴びたのであろう返り血がどす黒く変色して赤いマントにこびりついているのが見えたという。
その後、続くのはセルゲイ・キーシン率いる第三旅団の重装騎士団。そして、最後にボリス・ルツコイ率いる第五旅団の重装騎士団が続く。総勢七、八百人ほどが街に入ってきた。
その他の二万近くは居るであろう騎兵部隊や歩兵部隊の一部は街壁の外側で、残りはグロースアーテッヒ川の対岸で野営して待機しているようだった。
街の中のほとんど住民は、帝国軍の略奪などを恐れているのか、家の中に閉じこもっているようで、通りには人影はほとんどない。
共和国の北部にある街、モルデンが帝国軍に侵攻された際は、街のほとんどが焼け野原になるぐらいの戦いがあった上、占領後に帝国軍による略奪などもあったと聞く。
ここでは、今のところ帝国軍の統制は取れているようで、とりあえずは略奪などの心配はなさそうであった。
帝国の重装騎士団をブラングルン共和国政府の一行五名ほどが、馬上から待ち構える。しばらく、政府の一行はソローキンと会話をした後、帝国軍を城内へ誘導するため馬を返した。
翌日、城内で無条件降伏文書の調印式が行われる予定だ。
全権委任されている帝国軍のソローキンは、降伏文章の調印式の帝国の代表として出席するそうだ。共和国側は、無条件降伏を決めた後、すぐさま内閣は総辞職し、降伏文書に調印するためだけの暫定的な内閣が新たに組まれ、その首相が出席する。
こうして無血革命以降、三十四年続いたブラウグルン共和国は滅亡し、ブラミア帝国に併合されることとなった。
私の所属する首都防衛隊は帝国の占領に伴って武装解除された。そして、次の命令があるまで待機とのことで、多くの兵士が兵舎で休んでいた。私も自分のベッドに横になって、横にいるエーベル・マイヤーと話をするなどして時間をつぶしていた。
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