捜査3日目~怨恨
マイヤーとクラクスは今日もマイヤーの部屋でこれまでの動きをまとめた。
ついさっきまで、副市長のエストゥス・ヴェールテはハーラルト・ヴェールテ殺害に何らかの形で関与していると考えたが、彼も殺害された。
遺産目当てが二人の殺害の理由だとすると、残されたきょうだいで長女のクリスティアーネと三男のマルティンが怪しいということになる。しかし、長女は父の死による財産分与には不満を持っていないということ。さらに、マルティンは遺産自体に興味がないという。
しかし、昨日聞いた遺言書の内容からすると、副市長に残された遺産は少ないという。すると、遺産目当であれば、わざわざ副市長を殺害する必要があるだろうか。
もし、この殺人が遺産目的でないとしたら、怨恨か? そうなると、また一から推理を改める必要がある。怨恨と言うことになると、ハーラルトを殺害したのは、パーティーの参加者のいずれかか? それとも、もっと他にも犯人が居る可能性は考えられる。
副市長の殺害で、事件は一気に暗中模索となった。
マイヤーとクラクスが頭を悩ませていると、そこにクリーガーがやって来た。
「隊長殿」。
「師」。
クリーガーの顔を見て、マイヤーとクラクスは同時に声を掛けた。
「私が休んでいる間に大変なことがあったようだね。あれだけの騒ぎだと、事件の話は休んでいた私の耳にも入ってきたよ」。
「全くです。まさか副市長が目の前で死ぬなんて」。
クラクスは頭を大きく横に振ってみせた。
「副市長がどこで毒を盛られたのかはわからないんだね?」
「はい。まあ、毒殺だとしてですが。もし、そうなら城内のルツコイの執務室に来るまでなのは間違いないのですか」。
「ルツコイの執務室に来る前はどこにいたのだろうか?」
「ヴェールテ家の屋敷です。馬車で城に到着後、すぐにルツコイに連れてこられたということです」。
「すると屋敷で盛られたんだろうか?」
「とすると、屋敷に居たのは、三男のマルティンと奥さんのスザンネでしょう」。
「あとは、執事と召使二人です」。
クラクスは追加した。
「ヴェールテ家の屋敷から城までは馬車で約三十分。朝食に毒が盛られていたとすると、効き目が出るのも三十分ぐらいか」。
クリーガーは言った。
「毒が入っていたのは、食事か飲み物か。明日、執事に確認してみます」
マイヤーはそう言うと、立ち上がった。そして、話題を変えた。
「隊長殿、よかったらエールでもいかがですか?」
「いいね、いただこう」
その答えを聞くと、マイヤーは棚に置いてあるエールの入った小さな樽を持ち出し、テーブルの上に置いた。
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