第578話「おっさん?セコイよ!……ビーズの悪知恵」


「ヒロ男爵殿!……ものは相談なんだが………私を生かしてくれると約束してくれんかの?」



「出来る限りはそうします。そのかわり供述はしっかりしてくださいね!無関係なら洗いざらい話せば良いだけでしょう?誤魔化したりすれば、悪影響しかないのはわかりますよね?僕は平和主義でもあるんです!まぁ……伯爵達には相応に言っておきますから……」



 意味が分からない発言をビーズに唐突にされたが、彼が何を得たのか鑑定した時点ですぐに理解ができた……



 ビーズを鑑定した結果『交渉LV1』というスキルを選択していたようだ。


 絶対に死にたくないのだろう……理由はわかるが運良く此処にいただけなのに、なんかセコかった。



 僕は木材加工のスキルを欲していたが、その前に鑑定スキルについて調べた。



 理由は簡単で、鑑定スキルを持っていれば、異世界の皆は僕と同じことができるのだ。


 異世界メンバー全員にそれを持ってもらう方が、この異世界生活が格段に楽になる。



 だが残念な事に選べるのは一般的なスキルだけのようで、鑑定スキルは項目にも出なかった。



 なので次に錬金術を調べると、錬金術は『術』とつくだけあって厳密に言うとスキルではないようだ。


 色々と制約が面倒臭い……と思っていると、エルフの3人は魔力容器を生成し始めた。



「ヒロ殿はコレを持っていたのですね!!製造スキルの一種とは……コレは!!便利ですな!!水魔法を中に入れられるし、素材を炎でも炙れる!!素晴らしい!!」



 僕が欲しいと調べていた木材加工スキルは、製造スキル項目になっていた。


 そして僕の製錬スキルと総称していた物は、そもそも全部が製造スキルに基づく物だった。



 そしてエルフの3名が欲しがっていたのは、僕が毎回無茶苦茶をやる魔力容器だったようで、似た事は出来たがどうにも違うと思っていたそうだ。


 そして、あれこれ相談して探していたが見つからなかったようだ。



 しかし彼等はそれを得る事に成功した!!


 その理由は簡単で、原因は爆弾娘のミミだった……



 彼女は声に出して『お師匠様の持つスキルが欲しい!』と願ったところ幾つか候補が出て、その中でも空間製錬のキモである魔力容器となるスキルを発見したそうだ。


 それを見たエルフ3人はミミを師匠と呼び、やり方を聞き出した。



 そして空間製錬スキルを得たのは、ミミ、エルフレア、エルデリア、エルオリアス、オリバー、マールと……殆どがミミの真似をした。



 僕はと言えば……製造スキルを紐解くと、木材加工スキルに鉱物製錬スキルに別れていた。


 どちらもやろうと思えば自分で出来てしまうが、今の僕のやり方より遥かに簡単で消費MPが少ない。



 木材加工をするとすれば、表皮を剥ぎ樹木を乾燥させ長さを合わせて一度カットする。


 そして必要なサイズやデザインに切り分ける為の工程が入るが、木材加工スキルを持っている場合は乾燥以外は全てを手早く一度にこなせてしまう。


 ちなみに乾燥が一緒にできない理由は、生活スキルだからだ。


 別系統は、一度に一緒には出来ないみたいだ。


 魔力容器で包んでやった場合、重さもなく好みのサイズやデザインに切りたい放題だ。



 僕は古代都市の電池切れゴーレムや鉄巨人と呼ばれるアイアンゴーレムの事を思い出した……


 古代人は今より工具など無いのだ……


 もしかすればゴーレム加工もこの方法で、好きなサイズで加工していた可能性もある……



 悩ましい!非常に!!悩ましい!!



 木材加工を選べば街の発展に役に立つ。


 しかし石材加工を選べばゴーレムを作り放題だ!


 鉱物製錬をスキルとして選べば、あのクリムゾン鉱石の様な難しい素材からの抽出なんか問題なく出来るだろう……今後に役立つ……



 ゴーレム……ゴーレム……と考えていると、『クリエイト・ゴーレム』と言うスキルが出てきた……



 そのスキルに悶絶していると、ミサが笑いながら……



「ヒロさん!!言葉に出てますよ!!それにゴーレムスキルは素材加工から必要では?」



 と言ってくれた……コレは大いにヒントになった!


 ゴーレムは何も石でなくても良い……それに既に僕はゴーレムをある程度作れるのだ。



 それに木材で作れるウッドゴーレムだって、立派なゴーレムだ!



「ミサさん!今のヒント最高です!!木材加工一択ですね!ウッドゴーレムに街の建築資材!最高だ!!」



 それを聞いた周りの目は非常に白い……『木材加工でゴーレム作成など、発想の転換が絶対におかしい!!』とまで言われてしまった。



 皆は僕のスキル選択を、どうやら待ってくれていたようだ。



 お詫びに僕は頭の休憩がてら『ココア』を人数分作る。



 ダンジョンを一気に進めてきたが、昼過ぎまで魔の森開拓の仕事、そこから1時間ちょいでダンジョンに来て最下層までのダンジョンアタック……流石にくたびれた。



 ココアを飲んだ周りの反応は、飲んだ事のあるメンバーは大喜びで我先にと注いでいた。


 マールにオリバーそしてステイプとビーズは、泥のような色だと嫌がっていたが飲んだ瞬間一気に飲み干しおかわりをしていた。



 そして異世界人のミサは、ココアを飲んだ瞬間またもや泣き始めて………



「200年ぶりのココア!!200年ぶり!!………ココアだ!!ふえぇぇぇ………」



 と言った時点で、僕も異世界人だとマールやオリバーに完全にバレた。



 そしてミサの放浪期間がわかった……200年だ……雛美や茜など比べ物にならない、とんでもない長さだ……



「大丈夫です!絶対に!口が裂けても言いませんから!なぁ?マール!」



「言えるわけないじゃ無いですか!祝福箱のアイテム2個にスキルまで貰ってるんですよ?もう!コレはヒロさんに感謝だし、ミミさんがあの時『ガシッと』って言ってなかったら、私だけ何ももらえてなかったですよ!」



「マールしゃん!でも……ズズズ………あのペイとドロスさんも………ズズズ………あ!おかわりもらいますね!……ズズズ……貰えて無いですよ?」



 ミミはお腹が出っ張るくらいココアを飲んでいる……既に4杯目だ……


 僕はその会話の最中、勝手にだが一応スキルチェックをする……



 アルベイ『スラッシュ』、ミミ・エルフ3人・マール・オリバー『空間製錬』、ビーズ『交渉術』、ステイプ『エクストラ・ゲート』(避難口)、ミサ『調理スキル』



 ミサは何故か調理スキルを得ているが、料理が苦手なのか……はたまたもっと上手にと言うことか……彼女を見ると



「私は調理スキル取ったので、お腹が空いていたら何かあれば作りますよ?素材の味をちゃんと扱えるようになるスキルです。それ以上にも良いことがあって、食材の判別がつくんです!遠方に出る冒険者には、割と助かるスキルなんですよ!」


 と小声で言う……手近にある食材といえばあのワームミートだが、不味い肉について聞いたら調理スキルがあっても不味いものは不味いそうだ。


 そして次に気になったのはステイプの得た『避難口』だが……


 エクストラゲートとはなんだろう……流石に現地民のスキルは聞きたいけどダメなやつだ!



 帰るにも上に三層あるからと思い、重い腰をあげてそろそろ外に……と立ち上がるとステイプが……



「出ますか?そろそろ外に行くんですよね?脱出口のスキル取ったから、皆そこから出られますぜ!」


 と言ってくれた……なんと神がかったスキルなのだろう……



 よくよく聞いてみると、ダンジョンアタックの時に稀に持っている人がいるそうで、重宝されるそうだ。


 冒険者であり傭兵の彼は、安全に外に出る方法が第一だと考えて即座にそれを選択したらしい。



 ……ステイプの様に情報を知るものは強い!



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ステイプのスキルでダンジョンから出ると、周りの樹木の枝には山程のハーピーがとまっていた。



「ふぅ全員出たな!?俺のエクストラゲート役に立つだろう?ちゃんとビーズ男爵も連れて…………うぉぉぉ!ハーピーの群れだと!!くそがぁ!一難去ってまた一難か!!アシュラムの旦那!アンデッド兵で前衛対応してくれ!俺は暗器を投げたら弓を出す!」



 ステイプは慌てて懐からショート・ダガーを抜き、暗器をハーピーに投げようと振り被る。



 寸前でアルベイが止めに入り、それを辞めさせた。

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