第524話「異世界で遭遇…未確認動物『河童』」
舞姫によると、北の宮の特産は『川魚や魚の干物』だったそうだが、どうやらその収入源がカッパだった様だ。
河童の話では、巫女は河童の容姿が許せなかった様で取引を一方的に反故にし、住処さえも追い出したそうだ。
それからは地下水脈と入り組んだ水没坑道がある本殿周辺でひっそり暮らして居たが、ダンジョンが出来て急いで逃げて来たそうだ。
地下水脈を遡り行ける所まで行こう……と思ったら、突然天井が崩れて来たそうだ。
そこを何とか登ってみたら壁は石造で5メートルもある水槽で、顔を恐る恐る出したら日光が樹木で隠れて涼やかな場所だったらしい。
当然池でも川でも何でもなく、人工溜池だったのだが……運悪く僕の作業が中途半端だったので地下水源にぶち当たった様だ。
この村とは偶然の出会いだったが覗いて居たら、トレントが居て村を守っていてドライアドは何故か人間の野菜の世話をしている……そして目に前には久々の野菜があった……人と魔物が暮らす村だったら、もしかしてと思い我慢出来ず水から出来て、今に至る様だ。
『オレ達水精霊なら呼べる!畑の水に困ったら言え!水霊の儀式オレらがやる!』
「ほ!本当でございますか!!カッパ様は水精霊様と知り合いなのですか?」
『上級水精霊なら3人で地下水脈守ってるぞ?今は水量管理で連れてこれないが下級なら平気だ!オレ達水の眷属だ!呼びかけには間違いなく来る!』
「水の……水の上級精霊様が!!…………他にも生きていていらした!!………うわぁぁぁぁぁん………………」
ミセラはカッパの前で泣き始めたので、当のカッパは悪いことをしたのかと思い、魚を差し出して来た。
河童の謝罪は魚の様だ……
「カッパ様は此処に居て平気です!私が何があっても守りましょう!共に水精霊様を祀りましょう!!」
『お前!懐かしい匂いすると思ったら水の巫女か!困ったらワタシらを呼べば助けてやる!それが契約!水棲魔物召喚陣『カッパ』後で教えてやる!』
僕はそれを知りたい!と思ったが、残念な事に『水の巫女』限定の召喚らしい……非常に残念だ………このエロガッパが!!
僕は村長に問題にならない様に注意する様に伝えてから、ようやく薔薇村を後にする。
向かう先はジェムズマインだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふぅ……何というか……領内視察に行ったはずだよな?ヒロはさ?」
「そうですね!エクシアさん………僕が問題起こしたくてこうなったわけじゃないですよ?ちゃんと視察して不正を暴き、大問題になる前に皆を救出したんです」
「そこまでは分かるさ!何で精霊が人目を忍んで生きていることが明るみになっただけじゃ無く共同生活始めて……魔物のカッパが懐いてんだよ?」
「知りませんよ!っていうか言ってたじゃないですか!ダンジョンができたから避難した先が地下水脈で、たまたま見つけた出口が村だっただだって……まぁ悪い魔物じゃ無いって事は確かじゃ無いですかそもそも約束反故にしたのは人間ですし!川魚獲るのがうまそうだし良いことばかりですよ?」
「そうも言ってられんだろう?何というのだ?『精霊見つけました!村で暮らす約束したんで宜しく』って王へ言う気か?」
「え?そのつもりでした……王様に『今までなかなか交流を持てなかった精霊と持つことを実現できた村がある』と言って貰えれば済むのでは?」
「それを王が言ったら、王都で精霊を匿うべきだという輩が出るに決まってるだろう?そうなったら精霊は反抗するだろう?人族は間違いなく見放されてしまうでは無いか!」
「王様が足繁く通えば良いのでは?7日もあれば来れるんですから……そもそも移動なんかしませんよ?人の考えで住処を変えているわけでは無いですから……」
「それが出来れば今の話にはなってないだろう?後その事を説明しても、理解しない馬鹿は間違いなく居るのだ!」
エクシアとの会話中にザムド伯爵が混ざって来た……その話の多くは精霊についてだったが、悪辣貴族の利権争いに拍車がかかり精霊の気分を害するという物だったが、あるがままを受け入れる精霊にはその心配自体が無駄な気がする。
あそこに居た森精霊にしてみれば、滅ぶのを受け入れた末あの森周辺に居たが、偶然トラロックの我が儘が始まり恵みの雨を貰えたのだ。
滅ぶ事を受け入れた結果、予期せぬ事で延命した。
村周辺にいた森精霊や魔物に類する扱いのトレントも、村民の踊りで気を良くした風精霊が空高く巻き上げた恵みの雨を浴びて、トラロックの存在に気が付き集まって来たのだ。
人間など正直どうでも良い。
だから人間が何と言おうと言うことなどは聞かない……彼等はこれから千年を、村がある場所を守る為に存在する事を決めたのだから貴族が文句を言って、騎士団を派遣すれば嫌われるのでは無く捻り潰されるだけだ。
彼等にとってあの地を守りるのが使命であり、土地の上に暮らす人間を護るのは事のついでなのだ。
逆に言ってしまえば、土地の住人がこの全域を滅茶苦茶にする様な輩だった場合は、争いになってもおかしくは無い。
精霊は渋々受け入れてもトレントは純粋な精霊では無いそうなので、人間とは敵対関係の魔物になってしまうだろう。
「まぁなる様にしかならないよね?アタイが思うに馬鹿は何があっても馬鹿をやる……ヒロを見ていれば分かるだろう?悪辣貴族もある意味同じさ!奴等は金に目が眩んで手を出してしまえばその後は自滅する……」
エクシアは伯爵達にジャーキーを放り投げながらそう言った。
心配することでは無い、寧ろ相手を憐れむべきだ……と言う空気まで出している。
そしてすぐに実例を語った。
「それは精霊と戦うのではなく、史上最悪の人間を敵に回す事になるんだからね!自滅で家名が滅ぶだけなら良いが、場合によっては魔物の餌だよ?まぁそれが分かった頃には遅いけどね!ヤクタは動物の糞を持ち帰り、家名断絶の上極刑だよ?ああなるのがオチさ!」
伯爵達はそれを充分理解して居たが、あの時とは状況が違う……ヒロは冒険者では無く、既に男爵の爵位持ちなのだ。
貴族の悪巧みで立場的に利用されて不利な事を言われかねない……と危惧していた。
そんな話を延々と続けていたらジェムズマインに着いた。
「ウ!ウィンディア領主様!!よ……良かった!今早馬を出すところでした。迎賓館へお急ぎください!ドワーフ王家の使者が1刻も前からお待ちです!」
「な!?何だと?何故こんな早く………」
「ケイブ・リザードの馬車を使い大幅に時間を短縮させて来たそうです!重要な案件で時間を守らず申し訳ないとは言っておられましたが……」
とんでも無い事に予定を大幅に繰り上げてドワーフの使者が来て居た。
それも王家の使者となれば、待たせるだけでも大変な事だろう。
「すまん!ヒロ男爵とエクシア話はまた後でだ!ヒロ男爵すまぬが相手の状況次第では紹介さえできぬかもしれん!既に王家の使いを1刻以上待たせている……機嫌が悪くなってなければ良いのだが………」
「ウィンディア!急ぐのだ!今はそれを話している場合では無い……これだけ早く来ると言う事は『何か理由がある』と考えるのが筋だろう!行くぞ!!」
伯爵二人は何を何処から話すか相談しながら迎賓館へ向かっていった。
このジェムズマインの街にある迎賓館はドワーフ王国の為に作られた特別な物だ、鉱山で取れた宝石をふんだんに使いドワーフを迎えるためのものだった。
光物が大好きなドワーフはそれを見ているだけで満足するそうだ……そこに酒気の強い酒を差し入れて機嫌を取るのだから満足しないはずが無い。
しかし今日来ているドワーフには何の意味もない事を伯爵二人は知る事になる……
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