第340話「協力し合う守銭奴達のアレンジおにぎり」
僕はスライムを肩に乗せて食堂へ急ぐ……ちなみに肩に乗っているスライムは本体の1/3サイズだ。
本体はモンブランとお話中で、話の途中だったので小さな分体を僕に寄越したわけだが、やりたい事を分けられるなんて便利でいいなと感心した。
「ヒロ様……ああ!ヒロ男爵様!おはよう御座います!エクシアさんに聴きましたよ!『爵位』を拝命したのに要らないとか仰っていたそうで……よく不敬罪になりませんでしたね!」
僕は周りを見ると、そこには最近見慣れたハラグロ男爵が笑いながら聞き耳を立てていた……その手には大きな焼きおにぎりを持ち、机にはどんぶりが置かれていた。
多分中身は味噌汁だろう……今日の具はヌギョとスライム芋の味噌汁だ……里芋の様で非常に旨い。
オニギリは種類が選べる様になっていた……4種類だ。
醤油の焼きおにぎりに、味噌焼きオニギリ、塩むすびに、焼いた干物を具にしたオニギリとアレンジ品まで出ていた。
3商団で共同店舗になっていたので多分、より多く売るために効率を優先したのだろう。
「そうなのだ!周りは驚いたもんじゃないぞ?まさか謁見中に爵位拝命に至り、それを『要りませーーーん』などと言う冒険者が現れるとは……昨日から我等はその話でもちきりだ!わざわざ泊まる宿をザムド伯と同じにする諸侯まで現れた位だからな!」
ハラグロ男爵の横で、同じ様にオニギリに齧り付く貴族の女性も笑いながら頷いていた。
「私も変な奴が現れたと大笑いしたよ!ああ!すまないね……わたしゃヘイル家のリジーって言うもんだ!これでも自力で女男爵の爵位を勝ち取った、自力組さ!ザムドに対抗する親の七光り組とは別さ!おっと、横のは旦那のエアジョイ男爵だ!」
そう言ってきたのは、かなり血気盛んな感じがする女性だったが、横の旦那さんは反して凄く物静かだった。
「珍しいだろう?ウチは男女が逆転気味って思われるが、旦那はあたいよりヤベェよ?単騎でワイバーンに斬りかかる馬鹿だ……アンタの同類だね!がはははは!流石に昨日のサハギンは動きが止まったよ……」
「アンタ空手で何すんのかと思ったら『魔法』とか!すげぇって旦那が興奮してな!昨日の真夜中に無理言ってこっちに移ってきたんだ!オイ!アンタが移ろうって言ったんだろう?挨拶しろよ!」
どうやら旦那さんは人見知りがガチの人の様だ……チラチラ先ほどから見るけど声掛けに悩んでいる様だ
「……………よろしく……朝にアリン子見てきた……羨ましい……すまない餌あげた……」
まさかのアリン子と顔合わせが最初だった……それも餌付け済み……
「アリン子に?すいません助かります!餌付けは全然構いませんよ!寧ろ助かりますし、これからよろしくお願いします!」
僕がそういうとエクシアが話に混ざる
「アンタ冒険者っぽいんだね!アリン子は仲良くなると背中に乗せてくれるぜ?めっちゃ最高だよ!トップスピードが得にね!」
「因みに『餌が重要』だよ!アリン子は人間と同じ物でも食うから……て言うか寧ろそっちが好きかな?覚えておくといいよ!ここに居る間にせめて背中に乗れるといいな!」
エクシアがそう言うと、早速マッコリーニに餌となる様にオニギリを多めに注文していた……どんだけちょろいのだろうか……
ハラグロ男爵の説明で分かったが、2人は『ヘイル家』のストーム夫妻で現役のダンジョン探索組らしい。
冒険者に憧れた、貴族特有のトレジャー病の貴族二人がダンジョンで結ばれた結果、出来上がった超好戦的貴族だと言う。
トレジャー病とは、スリルを求めて何処へでも冒険へ出てしまう貴族の病気とされている。
奥さんはリジー、旦那さんはエアジョイという名前で、銀級冒険者のランク持ちらしい。
ちなみに領内は執事に、完全に任せっきりらしい。
かなりやり手な執事の様で、二人はその執事のおかげで好き勝手にダンジョンへ潜れる様だ。
宿をとっていない貴族はわざわざ、朝が早いのに此処まで挨拶に来ていた……
新しく男爵位を貰った者が二人も居る宿だ、今のうちに親密になっておく予定だろう……その理由はザムド伯爵が王へ献上した鉱山の魔獣の討伐部位の為だろう。
僅かな量でも周りには王様とお揃いだと自慢になるだろうから、伯爵への根回しは必要なのだ。
ちなみに今は、そのついでとしてマッコリーニから飯まで買って食っている様だ。
僕は、マッコリーニに昼食分のおにぎりを味別に2個ずつ貰い、フラッペからは味噌汁を鍋で貰う。
昨日はオニギリと味噌汁が役に立ったので、アラーネアの話をしたら喜んで更に2個ずつ貰った……量が多いので断ったが、何かあった時の為と言ってきたが『今日も何かあって』は困る。
ひとまずクロークにはしまったが、合計で16個だ今日は予定があってアラーネアに会う予定は無いのだ……吹き抜けから叫んだら壁を登って登って取りに来るかもしれない……最悪処分はそうしよう。
時間は既に風の8刻だ。
僕は皆に挨拶してから部屋に戻り、クロークを羽織り出かける準備をする。
クロークに手を入れると、携帯を出して窓際にかけておいたソーラー充電器で充電をする。
『ねぇ?なんでそれそんな風にしてるの?何か意味あるの?』
モンブランが不思議そうに質問してくるから僕は電気の説明と充電について説明する。
『へぇ!なんか不便だね?電気を流すなら魔法で充電すればいいのに……管を通して送ってるんでしょう?なら魔力容器にその板を入れて浮かした状態で必要な大きさでの電気で挟んで送電すれば充電できるんじゃないの?』
『マジックスタッフの雷の杖とか、雷系のマジックアイテムと同じ原理でさ?』
んな馬鹿な………充電器がなくても出来るなら苦労しない……
そう思って僕は、壊れても良さそうなダンジョンで手に入れた不良品のスマホを取り出して、魔力容器に入れて雷の魔法を唱えようと頑張るが………そもそも雷の魔法を僕は知らない……
「モンブラン……僕……いかづちの魔法使えないんだけど、やり方知ってる?」
『私がそれ使うわけないじゃん!自分に落ちるからその雷………殺す気なの?全く!!』
僕が聴くと即答だった……聖樹の伝導率はピカイチの様だ。
魔導士学院に通って、魔法が使える様になったら試してみよう……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
モンブランと話していると扉の外から声がする。
「ヒロ男爵様、スワンで御座います。お時間には若干早いですが、陛下の指示にて王都冒険者ギルドまでのご案内に参りました。ご用意が済みましたら階下までお願い致します」
どうやら王の使いは、スワンに変わった様だ。
僕はファイアフォックスの新メンバー、ピックとルーナに声をかけ忘れたことを思い出す………
急いで食堂に走るが一足遅く、朝から王都観光に出たとパーティーメンバーから知らされる。
パーティーメンバーは、それぞれにせっかくの王都なので予定を入れていた様だ……当然エクシアも行く場所があったらしく、一緒には行けないらしく箱開けの伝手が聞けない。
チャックに相談しようとするも、チャイと一緒に王様が用意してくれる個人住居の下調べに行ったらしい。
王都にある主要箇所の下調べを兼ねているのだろう……ジェムズマインに帰ってから、直ぐに又ここに来るのだろうか?
僕はやむなく一人で馬車にギルドへ向かう。
ギルド関係者に多少お金を払っても、開けてもらうしか無い様だ。
馬車の前には昨日の側近が居て、今日はスワンさんを伴って来ていたようだ。
単純に僕への連絡指示をスワンさんに出していただけだった。
僕は馬車の中で側近さんに今日の王様の予定を聞かされる……どうやら急いで仕事を終わらせて宝箱を覗きに来るらしい。
「王様の執務が終わり次第来ますが、光の12刻には間に合う様にするとのことで御座います。一応王都のギルドホール及びギルドマスターのご紹介をさせて頂くので、お時間はちょうど良いかと思われます。」
そう話していると急に馬車が止まる……どうやら奴さんが到着だ!……悪辣貴族の仕返しだろう……
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