第268話「元騎士団の性格テストと爆走のエクシア』
マッコリーニの商団を見るとなぜか全員が起きていた。
しかし理由は一目瞭然で、朝からアリン子の背中に跨ったエクシアが爆走してたからだ。
朝からマッコリーニは大忙しで、この周辺の蟻の討伐個体を集めては持ち帰り、銅級に渡して分解して貰うと言う流れだ。
それもエクシアが4パーティ連合を組んでいるので、全員に経験値がガンガン入っているらしい。
フィールド戦闘なので、ダンジョンと違い目視で基地範囲は経験値が共有される様だが当然寄生になるので100%の経験値は入らず30%程度の様だ。
僕のステータスに先程から経験値が二重に注ぎ込まれているのだ……なんかゾワゾワとするなと思って周りの冒険者を見た時に『経験値ボーナス30%』と出ていたのだ。
簡易鑑定によると、従魔経験値と連合パーティー経験値だ。
この辺りは異世界というより、ゲームみたいな世界だなとしか思えなかった。
そもそもステータスやレベル概念がある時点で僕たちの世界とは何もかもが違うが……
僕が豆粒の様な爆走するエクシアの方を見ていると、後ろから突然声がする。
「ザムド伯爵様!騎士見習い希望19名準備ができました!只今より野営の時間までに魔物を狩って無事帰ってきます!全員伯爵様に敬礼!!」
ザムド騎士団長がそう説明して後ろを見ると全員が整列していた。
1パーティが6人だと1人余るので1・2班が6名で3班が7名の様だ。
全員魔物を狩る場所は把握している筈だ。
分からなかったら……うん!ぶん殴ろう!!ここまでお膳立てしたんだ!そこまで脳筋だったらもっと脳を鍛えてやろう!
この護衛隊が前に進む以上、隊列の後ろ(ジェムズマイン側)で狩れば獲物を持ち込む事になるので間違いなく時間のロスのなる。
なので王都側に全員向かい魔物を倒すしか無い。
しかし、この移動で前の敵が居なくなるので、進行は間違い無く順調に行く。
エクシアがこの周辺の魔物を乱獲して居たのは、彼等がこの先で出るトンネルアントを倒したら、たいした騎士団試験にならない為にボランティアで戦った様だ。
と思いたい……アリン子は楽しそうに爆走しているので、アレはエクシアの意思では無いと思いたい。
今までずっと地中で過ごして景色も全く変わらず、キノコを食べればクイーンに怒られていただろう…だからその鬱憤を今晴らしていると……
「ヒャッハーーーー!粗方片付けて来たよこのアリン子速いし強いし!言う事ないよっ!あたしゃ気に入ったこの子が!」
帰って早々超絶ご機嫌なエクシアは『楽しんでいた様だ』……ボランティア等は関係なくアリン子騎乗で戦えるか試したかった様だ。
しかしアリン子も『ぴこぴこ』と触覚を仕切りに動かしていたので相当楽しかった様だ。
「う……うむ……ではお前達に本気を示すが良い。猶予は虚無の0刻の深夜までだ。力を示せぬ者は本気ではないと看做す。全員出発!」
エクシアの発言に一度は戸惑って、ダラけた出発になりそうだったが、伯爵はなんとか威厳を立て直した様だ。
先に渡していたトンネルアントの討伐部位について、各商団から相談があり手持ちの関係で後払いが可能か聴いて来ていた。
多分ここで『さようなら』とはしたく無かった事があったのだろう。
二人の団長の目が$と¥マークになっていたのでほぼ間違いないだろう。
折角なので店も見たかったこともあり、各商団から街に戻ったらお店にあるものと金額相当分の物々交換と言う話にまとまった。
因みに金額にして金貨2枚での引き取りになった。
状態が極めて良いからだそうだ。
そこで僕は乱獲したトンネルアント各種遺骸の働き蟻26、兵隊蟻14、とプレイン・ウルフ8をどうしようかとマッコリーニに持ちかける。
後払い可能になった為にハリスコとフラッペは即引き取りたいと申し出た。
マッコリーニも合わせて3人で引き取りになった。
内訳で言うと、マッコリーニは端数分少ない数になり働き蟻8体は金貨総額16枚で、兵隊蟻4体は金貨3枚買取の総額金貨12枚で、プレイン・ウルフ2体は肉を含めて買取で総額金貨2枚で引き取った。
そして今回初取引になる事になったフラッペとハリスコは、マッコリーニが花を持たせるという事で其々が働き蟻9体を総額金貨18枚で兵隊蟻5 体を総額金貨15枚で、プレイン・ウルフ3を総額金貨3枚で引き取る事になった。
端数はマッコリーニが2組の商団に譲る感じだった。
ちなみに、先ほど出た騎士団見習い達だが先に飯を食わされた様だ。
その理由はこの周辺が肉の香りで充満しているからだ。
マッコリーニはエルフ達から肉を分けてもらっていた様で、その肉をヤクタ元騎士団の弁当として持たせて、朝の早い時間のうちにたらふく食べさせていた。
戻って来るまで何も食べれないでは可哀想だった様だ。
僕は彼等の皮の水袋にウォーターの魔法で満杯にしておいた……水は旅の必需品だ。
至れり尽くせりの状態で申し訳ないと謝ったら、
「すいませんじゃないんじゃないかい?謝るくらいなら任務こなして街を守る騎士団になればいいだろう?それに至れり尽くせりだと思うなら言う言葉は『期待に応えます』だろう?」
「アンタ達はこの飯の恩を騎士として街を救うことで返すんだよ!なっちゃいないねぇ!早く魔物倒してきて騎士団長に鍛え直してもらいな!まったく……」
っと、エクシアに怒鳴られていた。
姉さんが見え隠れしている……本当に面倒見が良いエクシアだった。
騎士が全員で任務をこなしに出た後、皆で食事になった。
マッコリーニは食事を皆に提供し、その代わりフラッペとハリスコのお抱えの冒険者に魔物部位の解体をお願いしていた。
彼等が抱える冒険者ならちゃんと『部位別解体』出来ると踏んでの話だが、当然出来る冒険者しか雇ってない。
理由は狩った魔物を解体してすぐお金に変えるのが『出来る商人』なのだ。
無駄に持ち帰れば、街に着く前に更なる討伐部位で持ちきれなくなるのは分かりきっている。
それどころか、今回はエルフのウルフの討伐部位買い取りもあったので、凄く取引量が豊富な遠征になっていた。
それもお金を消費しない物々交換なのでかなり助かる取引だ。
エルフが欲しがる魚醤などの食材は、街や王都にはどの店もかなり在庫がある。
大店の欠品補充や個人取引を視野に持ってきているので、在庫を無くせれば寧ろ有難いのだ。
調味料と言えども腐るのだ。
2500
食事後の休憩をしていると、商人達は休みもせず働き始める……朝一番でフラッペがレモップルを選別し、表皮が腐っている物を取り除き今日のデザートにしていく。
僕の所に食事時に2、3個必ず持ってくるので、最近では食事時の飲み物にしていた。
今日は趣向を変えて、すり潰した後に圧縮濾過する。
そして残渣と液を分離した後、水を加えて液体の方を氷魔法で凍らせてまたもや魔力容器で粉状にする。
果汁50%即席かき氷の出来上がりだ。
濾過の過程で残った部分はスライムが粘体を伸ばして欲しがるので、あげるとご機嫌だった……味が殆ど抜けているのにと思うがスライムが溶かすのは体積を増やす目的なのだろう……溶かすものは溶けやすければなんでもいい様だ。
折角なのでかき氷をあげると、冷たいせいかもじもじ悶えていた。
僕が食べていると、少女5人が気になって見ていたので一口ずつあげる。
レモップル1個の果汁に対して、水の量は半分くらいしか入れてないので量が少ないのだ。
出来れば果汁の濃い味で食べたかったのが理由だ。
「これすごく美味しいです!フワッフワで口で溶けちゃいます!」
「甘酸っぱいけど、冷えっとしてて喉が気持ちいです!今まで食べた事がないですが……なんて言うんでしょう?」
「魔法で作るんですか?さっきレモップルが粉々になっていきましたけど……フワッフワになって美味しくなる魔法すごいです!」
などと、それは二口目を欲しがる催促だった……
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