第263話「味噌汁と焼き味噌おにぎりは胃袋がっしり掴めます!」
マイタケの話をしていたら、ビックリしたことに、エルフから味噌が出てきた……いつかはエルフ王国から食材を買って自分で作れれば良いと思ったが……まさか既にあるとは……若干違いがあってもこれは買いだ!
余りの唐突さに、僕は、
「味噌!味噌はもっとありますか!?」
と、尋常じゃ無い素振りを見せたので予備で持っていた味噌を大地のエルフ達が全部提供してくれた。
マッコリーニはすごくソワソワしていた。
「マッコリーニさん小魚の干物は有りませんか!」
僕がそう言うと、馬車へすっ飛んでいくフラッペ………
「コレで如何ですか!この小魚の干物はしばらく前に買い取ったのですが、もうカラッカラになって捨てるしかない………」
僕は両手を広げて『頂戴!』ってする。
「今箱でお持ちしますね!」
そう言って持ってきてくれたが、既にザルでいっぱいの煮干しの様な魚がいたのである意味コレで十分だった……
そこから僕の味噌汁作りが始まる。
「マッコリーニさん『ヌギョ』か『スライム芋』はありますか?」
その問いに『今お持ちしますー!』向こうでは『フラッペ!わたしにもその魚を譲ってください!』と声が聞こえ、逆にフラッペさんからは『ヌギョ』か『スライム芋』と交換で!今お持ちするのはどっち?と死闘が繰り広げられている。
味噌を提供したエルフは作業を見逃すまいと瞬きもせず見ている。
物が来る間に、僕は乾燥小魚を魔力容器に入れて粉砕して粉状にする。
エルフの皆も手伝うと言ってくれたので手分けしてやっていく。
太陽のエルフの戦士も手伝いに混ざってくれて、少しでも早く粉砕できるようにしてくれるのだが、ありがたいが今日はこんなに使わない……
僕はさっきのマイタケをウォーターで丸洗してから手頃な大きさに裂く。
そして鍋に水を注ぎ、粉砕した小魚の粉末を数匹分入れて沸騰させる。
その中に入れる具材の準備をするのだが……マッコリーニが両手に沢山ヌギョを抱えて持ってきた。
こんなに要らないのに!って数だ……まぁ良いとしよう。
コレも水洗いしてから必要な量を刻む。そして、マイタケを投入してまだ新鮮なヌギョも入れ煮ていく。
そして火から離して、そこにエルフ特性味噌を投入すると、エルフ達が慌て出す。
「それは!塗って食べる物です!水で溶かしたら塗れません!」
その言葉を手で制した後、鍋を攪拌して中身を掬ってお椀に入れて差し出す。
「の……飲めと?………」
不安そうな隊長だが期待があるのだろう生唾を飲み込む……と言うか僕も早く飲みたいからさっさと味見して欲しい!まだ味見の段階だ!味噌が濃すぎない良いに調節してる最中だ!
「ゴク……!!!」
一気に飲み干す隊長
僕も木製スプーンで掬った後飲んでみると、懐かしい味だった。
豆の粒が粗挽きで残っているが、小魚の出汁も良く取れて美味しい出来だった。
昆布か鰹節があればもっと上手くなるんだがな……と思っていたが隊長はお椀に沢山掬いなみなみの状態で飲み干す……当然下を火傷した様だ……今は鍋を再度火にかけているから味噌を入れた時の様に味噌の分だけ冷える事はない。
マッコリーニとフラッペにもお椀に入れて出すと、一気に飲み干してから鍋から直接また自分で注いでいた。
大きな鍋に作ったが結局5回も作ることになった。
マイタケは味も匂いもいい。
しかし、話を聞く限りこの食材を、食べたことも見た事も無いとマッコリーニが言ったのが気にかかる。
マッコリーニ達は既に集めた洞窟蟻マイタケを、王都で売る計画を立てている。
ちなみに5回作る事は作ったが、手を動かすのは作成方法を知っている比僕では無い……途中から練習兼ねて、それぞれがやる事になった。
しかし、結局教える立場として居なければならなかった。
「エルフはこの味噌を塗って食べるんですね?確かにコンニャクに塗って食べると美味しいですけど……」
僕がそう言うと、フラッペとマッコリーニが『ナニナニ!!』って顔を覗かせる。ハリスコは自分が武器を多く取り扱うので残念な顔をしていた。
折角なので塗ると言えば焼きおにぎりだとおもいお米の話をすると、食べ方が全く違かった……
エルフはコメを砕きパンのようにしていた……米粉パンの事だ。
だから折角だから食べ方を教えようとしたらマジックバッグから米が出てきた。
飯盒炊飯の作り方を学校でやったのでそれを教える事にした。
折角柔らか焼きがあるのだ!お米で食べたい……と言うのが理由だ。
米はちゃんと日本で買う時の様に精米されていた……エルフは日本人と同じ様に精米技術を持っているのかと思ったら、僕と同じ魔力容器でガシャガシャできる人がいる様だ。
ちなみに全員それが出来るわけでは無いらしい。
なので、念のため水洗いをしてから充分美味しく炊けるように水に浸しておく。
時期的に冬に移っているので1時進は水の浸しておく。
時期の話は『熱い時』と『寒い時』と分けて話した。
カレンダーがないのだ月の説明も未だに分からない。
そしてそれからは鍋でご飯を炊いていく。
強火から中火で加熱して、頃合いを見て弱火にして蒸気が出なくなる頃合いまで炊いて、あとは蒸らせば出来上がり。
コンロがないので焚き火で強火と中火と弱火を用意しておく。
まぁ多少焦げてもそれがお外ご飯だ。
慣れるまでは仕方ない……学校で飯盒炊飯をやってから、両親がハマりよく鍋で炊いて食べたのでその経験が今生きた。
ちなみにここからが味噌を使った焼きおにぎりの時間だ。
おにぎりを握って味噌をつけて焼くのだが、魚醤とエルフ醤油を使い味の違いを楽しんでもらった。
「何故エルフよりまともな食べ方を知っているのですか!ミソシルとかヤキオニギリは気に入りました!」
「これは絶対にエルフの王都で流行ります!毎回食べ方を思案していたのですが……パン以外に食べ方があったとは……」
大層気に入ったご様子で、彼等は自分のマジックバッグからコメを出して翌日からの食事に使ってくれと渡されたのでマッコリーニにキラーパスをしたが、踊るホーンラビット亭のコックは凄く喜んでいた。
食べ方の種類が増えた上に、『柔らか焼き丼』や『焼きおにぎり定食味噌汁付き』を作ったので冒険者がおかわりを繰り返すのが嬉しかった様だ。
そうしたらレシピを教えて貰った御礼と言われ、エルフ仕込みの醤油までも貰ってしまった。
焼きおにぎりは腹に溜まるし香ばしくて美味しいし味噌は味噌汁にも使えるので、旅をするエルフにはおすすめだ。
因みに僕が食べる分の焼きおにぎりは、三等分されてスライムとアリン子に2/3が食べられてしまった。
今日から仲間入りを果たしたアリン子は怖い顔なのに、冒険者には既に受け入れられている……餌を貰うと必ず『ギチ!』とお礼を言うのが楽しいらしく何故か皆自分の食べぶちから少しを口に放り込んでいた。
スライムも同じ様に貰っていたので、この度では体積が増えているとしか思えない……
食事が終わった僕は、現在タイラントの腕をまじまじと見ている。
トンネルアントクイーンがブレスに最も簡単に着火する仕組みが知りたかった。
腕の部分が節の途中から盾の様な形状になっている。
両方が合わさって盾型になり完全防御になる事もなく、前衛で長く戦える様な作りでしか無い。
そもそも顔が前に出ているので首を落とされると盾の意味がない。
盾状の節には火打ち石の様な形状の石が無数に貼り付いていた。
文字通り張り付いているだけで、元からそうなっている様ではないらしく、様々な鉱石を盾状の節に貼りつけてそれを打ち合わせて火花を出す様だ。
僕がその鉱石を触っていると、意味を把握したのか足元の拳サイズの岩を器用に砕いてから口から接着剤の様な物を出して器用に節に貼り付けていた。
この石だけでも武器の勢いやダメージを軽減する効果も期待できるので頭がいいとは感じるが、基本頭が盾より前に出ているので、そのせいで盾の意味がないと身振りで説明すると、器用に後脚で体制を保ちながら斜めに身体を保ち弱点の頭を上にあげる。
そして盾の様に両方の節と合わせたので、燃料の木材で叩く真似をすると一層理解した様だ。
『愚鈍』がないと相当頭がいいのでは?と思ってしまう……クイーン君は……『絶対使い方間違ってる!』としか言えなかった。
僕がトンネルアントの生態チェックをしていると、氷菓屋とテッキーラーノに雇われている冒険者もここぞとばかりに個体の確認に来る。
冒険者なので王都までの護衛は頻繁にある。
お気に入り冒険者ともなれば、行って帰って他の商団からの王都同行依頼などもあり得る。
アリン子と呼ぶ理由は、このタイラントは『雌』だ。
何故なら『蟻』の生態に沿った繁殖ならば雄は短命なはずだし、蟻の巣の構成は雌社会だ。
手を噛み切られるのでは無いかと大顎を見ると思うが、トンネルアントは他の生物の様に甘噛みをする事はないらしい。
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