第200話「男爵御令嬢アープの護衛と初めての単独任務」
どうやらアープちゃんは男爵別邸でお腹いっぱいになり寝ていたようだが、起きた時に明日の用意を始めたらしい。
その明日と言うのが、さっき伯爵が言っていた魔導士学院での魔法講座らしいのだ。
そして広間に行った時に、テロルが付き添えない事を本人から聞いた様だ。
要は『秘薬の護衛』に出ねばならないのだ。
流石にこの任務は伯爵も誰でも良いわけではないらしい。
そこに男爵からエクシアを通じて『輝きの旋風』に依頼が入り、最低枠の銀級冒険者の枠が埋まったそうだ。
後もう1枠の銀級冒険者グループと銅級冒険者グループを3グループの大所帯で王都まで向かうらしい。
途中はなかなか魔物が多いらしく、連戦になるらしい。
伯爵が王都からこの街に急ぎ帰ってきた時は『魔物避けのお香と範囲陣』を使っていたらしい。
なら僕が各金貨3枚であのチャームを5個くらい売っておけばと思ったが、結局それはやめにした。
理由は魔物がいる平野を傷一つなく護衛もあまりつけずにやってくれば、既に何かがおかしい!と王様だったら気がつくはずだ。
しかしテロルが来ないのを納得がいく訳でないアープちゃんは、父を屋敷中探したらまだギルドだと言う事で、勝手に向かってきてしまった………と言う事らしい。
勿論屋敷から出る時は衛兵が4人も後を追いかけてきたらしい。
衛兵の1人が広間に飛び込んで夫人に知らせて、その夫人は急いでイーファンとウーファンを起こして連れてギルドまで来たらしい。
おチビちゃん2人は執務室の外で欠伸している。
アープちゃんがくる直前まで魔法話をしていたので男爵は『俺で良いんじゃね?』って事で勝手に名前を出したそうだ。
エクシアさんには事後報告で依頼決定通知を出すらしい。
ちなみに、エクシアは断らないそうだ。
理由は貴族依頼枠をこなしてギルド等級を上げたくて仕方ないらしい。
既に要件は満たしているらしい、『番犬』事件と道中の魔物退治の件で既に要件を満たし裁量待ちらしい。
ここで追加の功績を挙げると判定結果が一段上がるらしい。
この結果待ち状態で最低3件貴族任務をこなすと、無条件で今のギルド等級が一つ上がるらしい。
今のところ、
1、輝きの旋風の王都までの護衛任務『伯爵家任務』
2、僕のアープちゃん『護衛』付き添い『男爵家任務』
で最後の1枠が埋まれば確実にランクアップらしい。
既にエクシアからは何か依頼がないか?と男爵には連絡が入っていたらしく、先程エクシアに会った時にテロルの話をして出来れば『護衛任務を』となっていたらしい。
エクシアは見繕って派遣すると言ったらしいが突然だが今ここで決まったと言う事だ。
「因みに護衛は何回とかあるんですか?」
「日程は後程マッジスに作らせるからそれを見て男爵家別邸に来てくれ。毎回男爵家別邸から出発するんだが、出発するのは風の9刻(朝9時)だよ。馬車で移動なので風の8刻に別邸に来てくれればいいぞ。」
「じゃあ、僕はそのテロルさんの代わりで学院まで付き添えばいいんですね?それで付き添ってから座学中は何をしてても構わないと?で帰りは昼食を食べた後の光の1刻か2刻(午後1時から2時)と言う事ですね?」
「そうだな、基本的に講義中は付き添いは外で待つかどっかで適当に時間を潰している。テロルの場合は学院内に食堂があるのでそこで待っているか、運動場で身体を鍛えていたと言っていたな。」
「まあ送り迎えだけだから、魔物を退治するような冒険者がやる仕事ではないがすまんな……娘のアープに免じて引き受けてくれるか?」
「全然良いですよ!うっかり魔物と戦って死ぬよりは、送り迎えでお金貰えるなら安全ですから!」
「本当に君は変わってるな!?普通冒険者は『そんなの冒険者として恥だ!!』って断られるんだ……でも助かるよ。娘のお付きも居ない送り迎えをみられては周りから娘が屈辱的な辱めを受けかねないからな!」
「待っている間は魔導士学院内部を見て回ってますよ!さっきの話で実は興味があったので、それに僕の本当のパーティーも銅級に上がるまでは一緒に活動できないのでどうしようか考えてたところなんです。」
「そうか!なら、君の持っている身分証を使えば魔導士学院の書庫も自由に閲覧できる。と言っても『男爵』まで閲覧可能なものに限るがな」
「ウィンよ……なら私が手を貸そう!『伯爵位』まで閲覧できる様に範囲を変更させておこう!これで時間を潰すには寧ろ足らないほどになるはずだ!」
面白そうに聴いていた伯爵が『自分の番だ!』とばかりに会話に入る。
伯爵のことだから多分事細かく話す内容を聴き逃さないようにしてたと見える。
明日以降も一波乱起きるかもしれない。
何故なら先程言っていた、伯爵の息子も通い始めたと言っていたからだ。
「ラル!すまない!来てくれ!」
「すまんな、明日一番で銅級冒険者『ヒロ』の施設利用権限を『伯爵位』に替えるように通達してくれ。間違えないように君が処理してくれ」
「はい!旦那様。では明日一番で変更して参ります。明日のギルドまでの付き添いは『グラハム』に申しつけます」
ラルと言う執事は要件だけ言うと部屋からすぐに出て行く。
出た先の扉を見るとうつらうつらしているちびっ子2人が居たのでアープに飴を6個渡して部屋で座って食べてるように言う。
アープが部屋から出て2人に見せると『クワァ』と見開きフガフガ言っていた。
彼女達は双子だがそこまで似ているようだ……ナニカを発したが言葉になっていなかった。
「お給金はファイアフォックスのギルド経由ですね?護衛って事は………誰かに襲われそうって事なんですか?」
「ハハハいやいや番犬のような事はそうそうない。単純に見栄のようなもんだより素晴らしいと思わせるだけの虚しいバカシアイだよ。」
「それなら僕なんかじゃない方が!?年齢的にもですし、経験的にもですよ?」
「君はそう言えば幾つなのかな?」
「僕ですか?17ですね、今年18です……あっ!今天ですね……ははは慣れないなぁ」
「変わった村だったのだな?天が動くから天道説で1天と数えるが……君の故郷は地動説派かい?」
びっくりだった……天道説と地動説があるとは………
「そうですね地動説です。びっくりしました……その言葉が出るとは……」
「まぁ学者がよく言い争っているからな……まぁ我々としては地面だろうが空だろうが今を生きるのが精一杯で正直どっちでも良いんだがな」
「わかります……魔物が多い世界ですからね……1日生きてまた明日も生きないとってなりますよね!」
「君は17なのに嫁は持たないのか?遅いくらいだろう?……さっきの話では18になるんだろう『今年』」
伯爵は笑いながらわざと『今年』と言っていた。
結婚させられそうな雰囲気だけはどうにかせねば………と言う事で無理矢理話を変えてみる。
「そう言えば先程の息子さんの話でですが、呪文書と魔導書の違いがあるんですね?」
この質問に逆にびっくりしたのが伯爵だった。
「君は魔法をどこで教わったのかな?私は専門知識が多い方ではないが知っているのは、呪文書と魔導書はさっきの上級鑑定スクロールと高級鑑定スクロールの違いぐらいあると言う事だ。」
「呪文書はマジックスクロールに書かれた呪文を読む力で、基礎呪文学を知らないと読めないではないか?それに君が読んでいた『魔導書』だが、そっちは精霊や神そして悪魔の力の一端を利用する力だろう?呪文書に比べて極めて難しいと思うんだが……?」
「バームとシャインの話では水魔法それも特大の攻撃系だと言う話だ……スピードも威力も桁違い……そんな魔法を人の身で使えるとは……どんな訓練をすれば良いのか想像もつかない。」
「それが我が家系の宿願である土系魔法だったら是非養子になって貰いたいとさえ思うぞ?」
「それにそもそも君が読んでいるのは、既に私たちの人智を超えた、あの伝説の……………」
「ちょっと待て!ザム!!!しばし待て!と……扉が……………」
その声で、ハ!っとした伯爵が扉に目を向ける……それに合わせて僕たちも扉を見ると、側に控えていた執事達と夫人含めて全員コッチを凝視していた。
そしてアープに関しては、目をキラキラさせて話の続きを聞きたがっていて……手をひたすらブンブンさせていた……
興奮していた伯爵はアープが飛び込んできた事を忘れていた……
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