第171話「困惑する僕ら……ダンジョンの不明すぎる原理」

同じく部屋に入った臨時パーティーのメンバーは遠くにいたので見えてない筈だ。


 しかし、バームのパーティーには見られてしまったので、なんとか黙っていてもらえないかと考えていたら勘繰られた。


「だ……大丈夫だ……この事は誰にも言わない……!駆け出しなのにこの威力……何か訳ありだろう?」


「そ……そうだね……言わないよ私も恩人だしね命の!ちなみに……今後の為に聴きたいんだけど目指してるのは剣士?戦士?魔法使い?そのどれとも違うとか……言わないわよね?」


 クーヘンに質問に答えたかった……目指しているのは「お笑い芸人」と……ウケ狙いだが……お笑い芸人がこの世界にいるとは思えないので言わなかったが、『トレジャーハンター』と答えたら『貴族か!』って笑顔でツッコミ返された。


 そんな2人とも怪我が酷い……今僕に心配をかけない様にだろうが……


 至近距離で闘っていたからだが三馬鹿が居なかったらこうならなかった筈だ。


 僕は皆が来るのを待ちながら2人の回復の手伝いをしている間に、こうなった経緯である彼等に恨みを買ったタバサ事件の一部始終を話すことにした。


「いやいや!悪く無いじゃんか!むしろ被害者じゃないか!あの馬鹿共は占有者が居るのに勝手に入っただけじゃ無く、装備放り出して逃げてった時点で俺らとは敵対関係のパーティーだからな!俺達は全員ヒロの側につくぜ!」


「アイツ等が街で喧嘩売ってたら即両腕切り落としてやるから安心しろ!暗黙の了解だからな魔物誘導や横湧き行為は冒険者達では重罪だ!」


「そうね!これでも私達は銅級冒険者には顔が効くんだから!安心してこれからアイツらが馬鹿をしたらダンジョンで細切れにしてやるわ!そもそも女の子にオーク娘とか有り得ないわ!同じ女として」


 バームさんもクーヘンさんも名前がバームクーヘンで美味しそうな割にはやる事が物騒だ。


 輪切りにして売り出すのは、それこそ自分達の親戚一同だろうに……名前を考えてたらバームクーヘンが食べたくなった。


 小麦粉と砂糖がないか探してみよう……竹はロックバード村にあったからこの街の周辺探せばあるだろう。


 そんなことを思っていたら、バームが彼等の装備を持ってくる。


 さっきこのダンジョンで手に入れたみたいなことを言っていたので、僕はこっそり鑑定してみたがなかなかの物だった。


 因みに装備はこんな名前だ。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 +1尖った・ロングソード 1

 +2硬い・ブロードソード 1

 守護のラウンドシールド 1


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 そして周りには山程の討伐部位が転がっている。それを辿り着いたばかりのチャックとタルトが拾い集めてくる。


 「アンタ達のリーダー出鱈目だな」「そうでしょう?組んでびっくりですよ……タルトさんも味わいました?」「まぁ……ね…」と言う会話が聴こえたが、知らないふりをしよう。


 因みに2人が集めたのは……


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 魔石(小)16

 魔石(中)2

 錆びたナイフ3

 壊れた鎧5

 ゴブリンの目玉2

 ゴブリンの耳3

 ゴブリンの指3

 銀貨15枚

 銅貨18枚


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 これは受け取れない!とバームに言われたが「だから!それ言っちゃ……」と肘打ちされた後クーヘンに言われて、慌ててバームがパーティー2つ分にザックリ分配していた。


 本当に申し訳ない……


 パーティーの皆はチラチラ僕を見るが僕は目を合わせなかった。


 彼らが落としていった装備は、迷惑料として彼等が2個をそして僕たちが1個貰う事になったが、悪い事はしたとはいえ僕たちの分だけでも流石に返した方がいいか……と思ったのが伝わったせいで、彼等が代わりの装備を僕たちにくれる事になった。


 彼等が宝箱から得た同じロングソード系と交換になった。


 彼等曰く、冒険者が装備を放棄する事は『死ぬ時』だけだ…その武器は仲間が持ち帰り家族へ届けるのが慣わしだと……


 自分の仲間や家族、そして友人に街の者を助ける装備を何があっても捨てるなどはあってはならない。


 落とした装備をその都度返してもらう者は、今後も何かあった度に装備を放り投げるだから、どれだけ大切かを思い知る必要があると言っていた。


 因みに貰えた装備は鑑定してみると『+1尖った・硬い・ロングソード』だった。


 真ん中に文字が何かついたが形状もほぼ一緒だった。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


・尖った・硬い・+1ロングソード


 刃厚1.9cm ブレード80cm 全長118cm

 攻撃力90 (耐久150/150)(鍛造度120)


  鍛造時に特殊な叩き方をすることで、

 通常とは違う高度を持った剣。

  切先に通常より角度を持たせている。


  剣の作りはシンプルだが、とても取り

 回しが良く、扱い易い。


 『特殊技』無し

 特性強化 威力+1・斬撃強化5%


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 彼等が気を利かせてくれた事とに感謝して貰う事にした。


 この武器は落ちている物を回収したわけでは無く、彼等から貰った物だと言う事で僕は納得できた。


 せっかく貰ったので、この武器はスゥが使うことで満場一致で決定した。


 そんな話をしていると階段へ続く入り口を指さすバーム。


「もう少しするとあそこに宝箱が出る……このフロア報酬だ。多分2個は出る筈だ。」


 しかしその説明は、裏切られる事になる…………。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 待つ事数分と言う話だが、急な戦闘で走って疲れた事もあり皆座り込んで待っていた………


「出ないな……」


「出ないですね?」


 そんな受け答えをした時だった……空間感知にあからさまに異常を感じた。


「って言うか……すいません皆さん今すぐ立って武器を構えて!……チャイにモア、ユイ君達はあの下に降りる階段へ通じる門の側に!チャック弓を構え!スゥいいか盾は?」


「皆立って!来るよ!敵だ!」


「んな!馬鹿な!今倒したばかりじゃないか!それも2パーティ分だぞ!」


「あの三馬鹿が何かしでかしたのか!……………」


 バームの言葉の最中に異常が目視される


 突然部屋にど真ん中の床の飾りが瞬いたと思うと、床が門となって魔物が現れる。


 僕は咄嗟に鑑定する。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


襲来条件『迷宮の試練』3/3『解放中』


・3パーティにて攻略(地下5階エリアボス)

・1パーティ『恐怖』で戦線離脱

・戦士4人以上のパーティー


『ガーディアン・特殊個体・通常種』


ゴブリン・キャプテン (戦士系上位個体)

(通常種・小鬼妖精系統・小型種)

(別名: 悪戯小鬼)

『使役可能個体』 第一次系統進化個体 


・ステータスには個体差、系統差あり。


LV.15 HP.71/80 MP.10/10

STR.18 ATK.54 VIT.16 DEF.57

INT.16 REG.23 DEX.17 AGI.41 LUK.35


・スキル

群れの統率(初級)

 下級ゴブリンを統率し指示を出す。

群れ個体10%確率で従わない個体が出る。


    条件により使役可能

 捕縛の魔物罠、使役強制スクロール、

 従魔契約スクロール、使役の絆…etc

 ・必要条未達成により開示不可。


  無骨な武器で攻撃する。

 森で拾った錆びた武具や、木材を加

 工した棍棒が基本の武器。


  稀に人を襲った際に手に入れた装

 備を使っている。


  系統種では、ゴブリンの呪術師や

 戦士、シーフ、アーチャー等武器に

 よって系統が変化する。


  知識レベルはゴブリンに比べると

 飛躍的に向上している。

  常に下位個体に指示を出し獲物を

 群れで狩る。


  進化種には様々有るが一番有名な

 進化先はホブ・ゴブリンであり、寿

 命や知識レベルが大きく変化する。


  オークの知識レベルが高い種に命

 令されて共に行動することも多い。


 ゴブリン棍棒、錆びた武器、錆びた鎧、

 錆びた盾、木製盾、スリング、ゴブ茸

 各貨幣、ゴブリンの指、ゴブリンの耳、

 ゴブリンの心臓、小魔石、中魔石…etc


  上記部位は武器、防具、etcは素材に

 使用可能。


 攻撃・防御:


  斬撃、殴打、薙ぎ払い、強打、連打

 蹴り飛ばし、噛み付き、引っ掻き


 系統変化先(進化先)

 ・ホブ・ゴブリン

 ・小鬼

 LV、経験値不足で鑑定不可。


 稀に宝箱を落とす。(ダンジョン個体のみ)


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 鑑定結果にビックリだった……このダンジョンと言う物は本当に滅茶苦茶だった。

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