第164話「下層へ挑む駆け出し冒険者達」

「感動してつい話しちまった……実は俺汚れ仕事やってた事があるんだよ。親父が死んでから口減らしで売られてな。街に行くその途中に商隊が襲われてな……それから『闇組織』に連れて行かれて盗賊の技を教え込まれたんだ。」



「まぁそのお陰で、今この宝箱が開けられるから人生なにが起きるかわからねぇよな……。」



「そうそう、話の続きだが、ある時に硬龍っていうパーティーが『闇組織』の壊滅依頼を受けたらしく、その時に捕まってた俺はロズって冒険者が助けてくれてな……それから買い取った引取先が全員死亡で、行く場所がなくなった所を冒険者ギルドに保護されてそれからロズさんのみたいな誰かを助けられる冒険者を目指す様になったんだ。」



 急な情報量に驚いた僕は彼にとってプライベートな事なのについ質問をしていた。



「そのロズさんて人にはもう合ったんですか?」



「いやまだ会ってないな………噂では、そのロズさんがいたパーティーは、数年前起きた魔物の襲撃で壊滅した村の防衛に回って仲間を半数失ったらしくてな、もうパーティーは止む無く解散したらしいんだ。」


「その時だってすげぇんだぜ!誰も援軍に来ないのにロズさん達はずっと戦い続けたんだ……仲間が傷ついて倒れていく中、最後の村人が避難するまで!その村で戦い続けて……確かエクシアって冒険者と防衛戦は一緒だったとか。」



「ちょっと待って!私エクシアさんがめっちゃ憧れなんだけど!あのファイアフォックスっていうギルドのエクシアさんじゃないの?」



「そうそう!噂聞いた冒険者がそんな事言ってたな?でも村が壊滅した話は表に出なくて皆ダンマリだから聞き出すのに苦労したぜ!」



 ビックリだった……エクシアとロズが彼の話に出てくるとは思わなかった。



 2人の出会いはとロズがファイアフォックスのギルドに加入した理由を聞いた事がないので、今の話が本当であればいつか本人達から聞く事があるのかも知れない。


 誰も援軍が来ない村で戦い続けた冒険者……仲間が倒れる中次は自分かもしれない恐怖だってある、仲間を救えなかった無念を考えればそれは本当に地獄だろう。



「所でなんでチャックはエクシアさんの名前が出たのにファイアフォックスと分からなかったの?かなり有名だし、ロズさんて人のこと知ってる人なら尚更調べるべきなのに。」



 不思議がって当然の話をモアが始める。



「調べようとしたさ!でも教えてもらった冒険者がこの事は絶対に本人にするなって言ってたんだ。まぁ話を聞いた時点で想像がついたけど……村が一つ無くなったんだぞ?周りの冒険者は襲われて居るのは多分知っていたんだ冒険者だから。それにそこに援軍に行った訳じゃ無いんだ……そんな話なんて誰も話したくないだろう?」



「そうね……確かに探し人の可能性があってもそれを元に聞きに行ったら配慮が足りないって言われてしまうわよね……せめてギルドまでは様子伺いにいけば?話せずでも出入りしているかもしれないじゃない?その戦闘がキッカケで。」



「行ったんだが長期の依頼の最中で、ほぼ冒険者の出入りがなかったんだ……話では海辺の街まで行ってたとか聞いた。確かそろそろ帰ってくる筈だから、この試験に合格してから行こうかと思うんだ。」



「なら僕が橋渡ししますよ?ロズさんですよね?ファイアフォックスに居ますよ。僕の盾の使い方はロズさん直伝ですから。それと……あそこを曲がった先に魔物の気配と言うか物音がします。」


「まじか!……リーダーはロズさんの知り合いだったのか!!早く魔物始末してその話の続きをしよう!」


 僕達は話しながらダンジョンを進んでいたが、突然空間感知に敵性判定が現れたので注意を促した。


 しかしチャックは情報を得る目的のために本気を出した様で、射角が取れる場所に小走りで向かいロングボウを構えると片っ端から殲滅していく。腕は凄く良く狙いは確かの様だ


 相手からは見え難い暗がりを選んだ様で、敵個体からは充分距離を取っての射撃の様だ。



「もういいぞ!安全だ!」



 チャックが手招きするので全員で向かうと、撃ち出した全ての矢は額に見事に命中していた。



 放った矢を回収に向かうチャックに対して、皆の称賛がすごい。



「凄い!3匹のゴブリンに何もさせないなんて!」



 ユイとモアが先程と同じように歓声をあげる。



「君達もスリングの扱い覚えれば似た事ができるよ!だから凄くもない。慣れだよ慣れ!」


 照れた感じで戻って来たチャックはゴブリンの部位と魔石に銅貨を照れ隠しがわりに見せる。



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 魔石(小)3

 ゴブリンの耳1

 ゴブリンの目玉1

 ゴブリンの指1

 銅貨5枚


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 手に入れたのは3匹分の部位だった。


 敵の殲滅が早くて僕はまたもや鑑定できなかった……


 僕は話せそうな内容をチャックに伝える。


 あくまで知っているだけの情報なので今ジェムズマインの街に帰って来てエクシアの同じパーティーで活動していると言うことぐらいだ。



 それでも相当嬉しかったのだろう。両手握手をチャックにされて『有難う!是非お礼を言いに行きたいんだ!橋渡ししてくれ頼む!』とまで言われた。


 自分を助けてくれた人なのだからこの気持ちは当然なのだろう。しかし現在鉱山にいるので直ぐに行っても会えない可能性があるだから明日以降がいいだろうと思った僕はそのまま伝える。



「只、今連合討伐戦に参加する予定です出向いている筈なので、今日行っても会えない可能性もあるから、確実なら明日以降がいいどうしてもだったら夕方過ぎなら万が一があるかもかな?」



「そうなのか!大丈夫だ!今日でも明日でも明後日でも!リーダーの都合がいい時で!」



 そんな感じで予定が決まった。



 僕達は地下二階のチェックポイントを1箇所巡り終わったので全員チェックが終わっている。



 できれば僕はこのダンジョンで戦闘訓練を兼ねて出来るだけ下を見てみたかった……危険であれば全力で魔法を使って逃げ帰ればなんとかなると思ったのだ。


 だが、皆と共に行動している以上は一度皆と地上に帰る必要がある。


 チェックが無事終わって皆若干ゆとりができているので、和気藹々と手に入れた宝物の話をしているが僕は早くダンジョン探索を続けたい事もあり皆を地上に帰さなければならない……なので意を決して話をする。



「皆ごめん!僕は少しでもこのダンジョンを多く探索したいんだ。出来るだけ下まで!でも今はパーティーを組んでいる以上此処で別れるわけにもいかない…皆に危険をさせる訳に行かない……これより先は戦闘も多くなるし危険も増える。だからここで切り上げて一回地上へ戻ろう!」


「リーダー狡いんじゃないか!?経験値独り占めは!俺は一緒にいくぜ!このロングボウも試したいしな!まぁ一度地上に出るのは皆の為にしないとならないから……下目指すなら一旦解散のために、まぁ急いだほうがいいな。」



「私もカイトシールドとチェインメイル貰って活躍もなしは流石に虫がいいから付き合うわ!昨日タバサって子が5Fまで降りたの見たのよ!そこまでは最低限私も行きたいわ!私だって行ったんだからって言いたい!」



「はははは!奇遇だな!?スゥ!俺も同じこと考えてたぜ!」



「私は……モアちゃんが行くなら行きます!このダンジョンで何もしていないので……少しは回復師として役に立ちたいし!!戦闘に慣れないとこれから先もパーティー組めなくなっちゃうし……」



「私は……ユイ怖がりなのにごめんね!でも…6階まで降りたい!可愛くて強い!って所をギルドの皆に見せたい!駆け出し冒険者なら5Fクリアは全員夢見てる筈!だからこそ私は6Fに降りて魔物の討伐部位を持ち帰れば記録更新よね?」



「ぼ…僕も皆と一緒に降りたいよ……怖いけど……薬師として成長したいし!デカイのに肝っ玉が小さいっていつも馬鹿にされるんだ!だから……戦える所を皆に教えたいんだ!リーダー!チャックさん!戦闘方法を教えて僕を鍛えてください!」



「うはっ!チャイ!やる気満々だな!よし!簡単なナイフの使い方から教えてやるよ!こうなるとまぁ…闇ギルドに居た時間の全てが悪かったわけじゃないな……こんな風に役に立つとは思ってもなかった!ははははは!無駄にならない人生だったぜ!ロズさんのおかげで!」



 変な感じだが意見は勝手に押し切られる感じで纏まってしまった……雰囲気からして一度地上に上がる感じだったのだが……



 ひとまず僕達は地下二階にあるもう一つのチェックポイントへ向かう…地下3Fの情報ならば少しでもこのダンジョンに詳しいギルド駐在員に聞くべきだろう。



 それまでに階段があれば降りて僕が前衛で闘い皆が戦えるか確かめよう。

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