第86話「マッコリーニ大感激!特権商人とったどぉー!!」

「エ!エクシアさん!貴女は我が商団にとって女神です。まさか…貴族との特権が結べるとは…男爵邸の特権商人枠ですよ!」




「よ…良かったね!マッコリーニさん…顔が近すぎるよ!取り敢えず落ち着いたらどうだい?頂いた紅茶でも飲みな!一先ずね!」



「我が代でこの様な誉れ…本当にお礼の言葉もないですよ!」


「男爵様と魔法契約を結ぶとベンさんから言われた時は私は首を刎ねられないか心配でなりませんでした…」


「まさか魔法契約がエクシアさんと男爵様ではなく…承っていたことの続きとは…このマッコリーニも予想していませんでした。」



「荷馬車を追加で2台用意していて良かったです…私がこっちに来てしまった今、商会では荷馬車の用意が出来ませんから…今は街の荷馬車が出払っていますからね…討伐任務で!」



「そうか!うっかりしてたよ!マッコリーニさん。助かったありがとう。」



「いえいえ!私に出来ることなど限られていますからね!お役に立てて何よりです!」



 エクシアがマッコリーニに依頼した2台の荷馬車は既に、マッコリーニと異世界組が男爵邸に来るのに使用済みだ。


エクシアはこうなる事を予想して、荷馬車の1台はギルドで保持する為に2台頼んだのだが、マッコリーニが乗ってきた物をウッカリと輝きの旋風のパーティーに貸し出してしまいギルドに戻せなかったので、結局2台ともこっちに運んできてしまった。



 男爵邸にエクシアが向かったその様子を見て、マッコリーニは何が起きても良い様に自分の商店で抱えていた分の2台を更にギルドの前に待機させていた。



 これから下手すれば討伐戦にファイアフォックスは駆り出されるのだ…鉱山の魔物討伐は思ったより難航していた様で、街へ帰ったばかりのマッコリーニの耳にまで聞こえていた。



 連合討伐戦は長期にわたる事が多い…その為自分のパーティーで必要な荷物は荷馬車に積んでキャンプに持って行く必要がある。

飯も寝床も全部自前で用意する必要があるからだ。



 荷馬車が用意できない場合、酷く苦しい討伐戦になるのは目に見えているのだ。



 思ったより進捗の良く無い討伐戦にファイアフォックスが呼ばれる事を考えた場合、荷馬車の用意を終えているのとそうで無いのでは領主の心証は大きく違う。



 マッコリーニが用意したのはその為の準備用の荷馬車だった。




「それで、今日の予定はロズさんが魔の森の外縁からお帰りになったら…終わりと言うことで宜しいですかな?話していた一席を設けていますので、時間が宜しければ後ほど皆様を接待したく…」



「踊るホーンラビット亭という、料理屋ですがなかなか人気のある店でして是非長旅の疲れを癒して頂きたくご用意させおります。」



 エクシアとマッコリーニがジェムズマインの街の正門で並んでいる時に話していた事で、実は行商旅の成功と半月もの間マッコリーニ達の命を守ってくれたファイアフォックスに感謝を込めて祝いの席を設けたと言われていたのだった。



 エクシアもまさか男爵家でこんな事になるとは思わず、マッコリーニには今夜皆でご馳走になると言っていたのだ。





 しかしその話をしている時、男爵家の執事から声がかかる。




「時に!エクシア殿!そしてマッコリーニ殿…本日は我が男爵家でお宿泊でよろしいですかな?このままですと日も暮れますし、今は生憎と鉱山の魔物退治に村人を駆り出しており、彼らの家族である村人達を保護している状況ですので若干騒がしいですが…静かな南部屋を皆さんの分ご用意できますので。」



 急に男爵家での宿泊の話が出てたのでエクシア達はビックリして失礼に当たらない様に辞退する事を伝えると、執事の次は男爵と夫人までがエクシアとマッコリーニに所に来る。



 エクシアとマッコリーニが、村人を保護して大変な時に自分たちも世話になったら迷惑をかけるので…と男爵の申し出を機嫌を害さない様にやんわり伝える…マッコリーニが男爵家に居るために宴会をキャンセルしようにも難しい、マッコリーニはハンスを連れて来るべきだったと激しく後悔した。



 男爵は非常に残念がりながらも了承したが、ベンのお馬鹿さんが男爵とエクシアが話している事に気がつかず…



「エクシア姉さん!マッコリーニさん!今日はこれから踊るホーンラビット亭でご馳走食えるんですよね?エールは飲み放題ですか?マッコリーニさん!なんてな!」



 ロズも大概だが…ベンもなかなか空気を読めない…。



 しかし、問題はこれからだった…それをたまたま聴いてしまった3人娘は、ホーンラビット亭と聴いて野営飯で出たホーンラビットの絶品飯を思い出し、勘違いして一緒に居た夫人に聴き始める…。



「お父様!お母様!今日は!ジェムズマインの街でお夕食なのですか!結菜さんの手作り料理ですか?」



「「嬉しぃーーー!」」



 ベンの言葉を聞いて勘違いではしゃぎ始めた3人娘に、夫人は困った口ぶりでそうではないと告げる…




「アープ、イーファン、ウーファン違うのよ?エクシアさんと、マッコリーニさん達が今日は街で御夕飯という事なんです。私達はお家で御夕食ですよ?領民もいるのですからお家を離れるわけにはいかないでしょう?」


「「でも〜……行きたいです〜!私たちも〜」」


「お母様!外で食べるご飯はすごく美味しいのです!この数日間この御屋敷で出るお食事では味わえない凄い美味のお食事をずっと頂きました!マッコリーニさんのコックは街一番です!」



「お母様!お父様!私も行きたいです〜!今日だけ特別はダメですか?」



 珍しく長女まで行きたいとごねて駄々を言い始めた…男爵と夫人は困った顔をして…



 急に駄々をこね始める辺りは年相応だろう…それを見ていた村の住民は男爵と夫人に行って来たらどうか?と口々に言って、最後には男爵夫妻が不在の間は男爵邸は自分たちが守る!とまで言い始めた…普通ではあり得ない光景だがこれがこの領主が得た領民との絆なのだろう。



「マッコリーニさんがお願いした料理の量もあるでしょう?私たちが行ってもその分は無いのです…だから今度一緒にいきましょう!」



「そうね…じゃあ清めの儀の帰りにジェムズマインの街で御夕食にしましょう!ちゃんと清めの儀が出来たならマッコリーニさん達が食べたお店に行きましょう!それで如何ですか?」



 夫人が一生懸命娘を説得するも娘達は駄々をこねて泣き出し、終いには3人娘の目がマッコリーニを見て離れない。



 マッコリーニも困った物だ、席も料理も十二分に有るが、男爵を連れて行く様な店では無い…如何しようか困ってた矢先テロルの声が門の方から聴こえてくる…話を変えるには絶好な助け舟だ。

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