第61話「異世界特有の出来事……それは安定のヤツ」

僕らは焚き火を囲みスライムを見ていた。


 このスライムが何故チャームの中にいて平気なのかは未だに分からない。


 なにか理由をつけて森に入り鑑定したかったのだが僕だけで森に行くことは出来ないし、冒険者でもない僕は森に用事などある筈も無く…。


 このスライムは意思疎通ができる様で、話をすると理解してジャンプ(肯定)激しくふるふる(否定)の簡単な意思疎通を見せてくれた。


 コレに激しく興味を持ったのが、僕を含めて異世界組の美香に雛美そして魔法使いのゲオルにレンジャーのベロニカ、そしてこの旅で外の世界を初めて知ったレイカが続く。


 ベロニカとゲオルは自分の食べていた残念パンやら肉の切れ端をスライムに与えては観察していた。


 勿論スライムは雑食なので何でも溶かして捕食するのだが、この餌付けで2人の敵性感知は青に変わっておりどうやら魔物との相互理解が敵性感知の切り替えになっているらしい。


 元々魔物は僕の事を『味方』と位置付けた為このチャームの効果の例外になった様だと言う結論にした…何故なら誰も分からないからだ。


 マッコリー二の計らいで、鑑定のスクロールを渡されたので皆の前で鑑定しようとしたら逃げ回っていた。


 スライムからすれば鑑定は何かも分からないので当然と言えば当然だし、それ以外の理由があってもおかしくは無い。


 一応危険があると困るのでエクシアが鑑定スクロールをマッコリー二に返すと、スライムはマッコリー二には寄り付かなくなってしまった。




「もしかしたら、従属のスクロールとか強制従属スクロールと勘違いしてるにかもしれないですぜ?前に例のフォレストウルフのテイマー(調教師)に見せてもらったんですが、それを使うと従属契約を強制できると言ってましたしね。」


「普通の契約時でも使うとか言ってましたが、基本は強制させるときに使うみたいですぜ。まぁ詳しくは街に帰れば聴けるんでその時に聴いてきますよ!」




 僕らはロズを見て…知ってた事があったらそれを早く言えと言いたかった。


 僕らが寝ようとした時スライムが僕の寝床に入ってきたので、チャンスだと思い小声で鑑定して良いか聞いたら、ぴょんぴょんと肯定のジャンプをしたので皆に聞こえない様に鑑定をした。




◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 ー・ー・ー・ーー・ー・ー・ー・ー・ー


   !上位種中級魔石3個溶解中!

    魔石取得場所 水精霊の魔窟


     溶解必要時間 72時進


 ー・ー・ー・ーー・ー・ー・ー・ー・ー


 スライム (小型種) 使役中 : 野口 洋


 『使役可能個体』第一次系統進化前個体 


・ステータスには個体差、系統差あり


LV.3


HP.25/25 MP.20/20


STR.5 ATK.15 VIT.5 DEF.15


INT.11 REG.20 DEX.8 AGI.10 LUK.50


    条件により使役可能

 捕縛の魔物罠、使役強制スクロール、

 従魔契約スクロール、使役の絆…etc


 ・必要条未達成により開示不可。


 粘体を持ち、身体の中には核があり絶えず

核を動かし身を守る。


 常に動かす核の中に魔石を持つ。


 スライムの粘体は錬金素材として使える。


 スライムの核を別素材(液状、ゲル状)に入

れる事で系統変化させ素材体積を増加させる

事ができる。


 系統変化先 LV、経験値不足で鑑定不可。


 稀に宝箱を落とす。(ダンジョン個体のみ)


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 まさかの使役中になっていた。


 何故この様な事になったのか全く分からないが、ある条件とすれば使役の絆と言う項目だろう。


 そして何故か中級種の魔石を溶解している真っ最中だった。


 やんわり鑑定情報が増えているので、鑑定レベルが完全に上がりきらずでも内容の変化が望めるらしい。


 因みに魔石が食料なのか聴いたら…激しく横にふるふるしていたのでどうやら違うらしい、魔石を溶かすのにスライムでも時間がかかる様だ。


 まぁ雑食なので、たまたま取り込んだのでは無いかと思い気にするのは辞めた。


 それよりも気になった事があった……水精霊の魔窟と書いてあるのだ…あのダンジョンの名前は本来は水霊性の魔窟なのだろう。



 考えてみればダンジョンコアを封印し続けてかなり長いと言っていたので、あの階層の本当の主は今や水の精霊で間違い無いのだから、水精霊の魔窟でも名前は間違っていないのだ。


 このスライムが上級種のスライムの魔石を溶解しているのだが、とても上級種の魔石を得るほど強いとは考えられないので何故だろうと考えていると、一つの仮説が思いついた。


 壁スライム事件だ!水っ子が目にも留まらぬ早技で壁ごとぶち抜いたあの事件…あそこの瓦礫に魔石が埋まっていてもおかしく無いし、その魔石を偶然生き残っていたこの個体が手に入れていてもおかしく無い。


 次に考えられるのが、エクシアさん達が進んだ時だ…先を急ぐため魔石を取りこぼしている可能性もあり得る。



 なんにせよ雑食だということだけは分かったので、食事の心配はしなくて済みそうだ…と考えていたら、いつの何か僕は寝ていた。



 ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 ロックバードを出発し2日目の行程はと言うと…僕らの世界で言う午前中はわりと順調に進んでいた。


 ただし僕等だけの話だが…前日のぴょんぴょんと飛び跳ねていた可愛らしいスライムをレイカが非常に気に入って自分が乗っている荷馬車に連れて行くもんだから、娘愛が止まる事を知らないマッコリー二さんの緊張具合が常にマックスだった。




「エクシアさん娘に悪い影響ないんですよね?酸で溶かされたり、取り込まれて消化されたり…レイカが魔物になったりはしないですよね!」



「マッコリー二さん、ひろが言うにはこのスライムは酸を使う種類じゃ無いらしいから平気だよ、それにそもそも私の住んでた洞窟のスライムだよ?子供でも叩き潰す相手にレイカがどうこうされる訳ないだろう?」



「ですが!万が一ということもありますし!ほら魔物は存在進化するとか言うじゃないですか!進化したらレイカに何か危害があるかもしれませんし!」



「た…確かに進化するって言うが条件が揃わないとしないもんだしね…因みに危険って言うのは…あの状態でか?もはやあのスライムの飼い主はレイカって言われても誰も疑わないよ?コレじゃ…」




 当のレイカは干し肉を千切ってはスライムに与えて餌付けをしていた。


 暫くそんなやり取りをしつつ、食事休憩をとるマッコリー二商団…休憩を含めて食事になった。


 基本的に朝晩の食事はするものの昼食を食べる文化は異世界には無かった。


 僕らの住んでいた世界とは食料の総生産量はたかが知れている。



 その為、裕福な層は食べ物こそ困らないが、貧困層は1日に1度食事が取れれば良い位でもある。


 冒険者は食べれる時にしっかり食べなければ身が持たない…『食べてないから力が出ない』では魔物に勝てないのだ。


 僕ら異世界人にとっての昼食を食べ終わり、足早に出発する。


 この世界では食事後の昼寝休憩などでのんびりなどしていられない……早く移動して少しでも安全な街に辿り着かないとならないのだ。


 スライムを安定の位置に置いたレイカ…それを心配しながらレイカに聞こえる様にエクシアに話すマッコリー二、その様を見て笑うお付き達。


 僕が空間感知に異変を感じて空を見上げると同時に、そんなマッコリー二達に緊張が走る。

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