第50話「女性冒険者の災難……その名はジャイアントオクトパス」
宴もたけなわ、そこそこ遅い時間になり村人もそろそろ帰宅をしはじめる時間だった。
村人達はそんな都合よくあんな旨い干し肉のレシピなど聴けるはずもないと思っていたが、当の本人は全く意にも介さず、「バリエーションに必要な魚醤はこのマッコリーニさんが引き受けますので」等と言って、レシピを教える物だからあまりの無頓着さにある意味心配になった。
教わる手前多少の出費は覚悟していたが、まさかの元手ゼロで教えてもらって半信半疑だった所にマッコリーニが魚醤1瓶を提供して、干し肉加工実践まで行い結果的には同じものが出来た。
他にも魔の森に何種類か生えている、香木という物を使った燻製も教えて貰いレシピが増えた所に今度は売り方(主に量)と入れ物の伝授はマッコリーニが教えてくれて、更に魚醤代金は出来たウルフジャーキー買取含めてその都度応相談で決済となった。
食糧難や冒険者の買取量でウルフジャーキーの値段もそれなりに変わるのでと言うマッコリーニの配慮だった。
今売れる魚醤の数がそこまでは無い為、必要数は村長が纏めて買う事で決まり、取り敢えずは軌道に乗るまでは森の香木を探しつつウルフとウサギの肉を確保し村の特産として作る方向で皆協力しよう!と村長の一言で締め括られた。
至れり尽くせりの状態に舞い上がった村人は、聴けることも全て聴いたので皆でめでたく宴会するかという流れになった……それを聞き漏らさず飯屋の女将さんが酒場にすぐさま連絡した。
場所は食堂なのに酒場の出前で酒の提供をしてもらい、摘みは食堂任せの大宴会だった……お陰で飯屋も酒場も大儲けだった様だ。
村人的には冬の収入が大きく変わるのと、冬における村自体の食料問題の解決にもなり大助かりだった。
今までは肉をただ天日干しで乾燥させボソボソのただ腹を満たすだけの粗末な保存食だっただけに、この変化は嬉しかったのだろう。
だいぶ酒がまわり千鳥足で家に帰っていく村人達。
最後の客が帰って、つまみを食いながらちびちびやっている3組の冒険者達。
皆は宝箱も手に入れて念願のギルド入団テストの確約もされ彼らはこの後気分上々で自分のねぐらの宿屋に帰ると思っていたのだろう…。
残念だがこの後阿鼻叫喚の地獄絵図になるとは思わない女性陣は、飯屋の女将さんが作るつまみに舌鼓を打ちながらカップに残っている酒を煽る。
「エ…エクシアさん……そう言えばレア素材のG・オクトパスの討伐部位どうしましょう。そう言えば預かったままです。」
その一言で3組のパーティーの女性が敏感にビク!っと反応する。
そして、金の匂いを嗅ぎ分けたマッコリーニも酔っ払って半分トロンとした目をパチリとさビクッ!っとしていた。
「忘れてたー取り敢えず適当に4頭分して渡しちゃって、欲しい部位は各パーティーでとっかえっこで良いんじゃ無い?」
「価値が分からないアンタがテキニーン!」
エクシアもいい感じに酔っ払っていた。
一気に酔いが覚める女性たちにマッコリーニ……特に彼は今まで眠そうだったのが嘘の様だ!
僕は飯屋の女将さんに許可を貰って素材を出す準備をする……嫌がる女性陣に訳はわからないが今を逃してはいけないと直感が訴えるマッコリーニ。
「お嬢さん方、良ければこのマッコリーニが相談に乗りましょう!」
「話では討伐部位で間違い無いでしょうか?ハンス!今すぐ金貨袋の準備を!」
酔って潰れているハンスがビク!っとしてすぐ様がっちり抱え込んでいたトランクをマッコリーニに渡す。
酔っていても肌身離さないハンスはすごいと思った。
G・オクトパスの討伐部位をクロークの内側から順に全部机に出す……とんでもない量に飯屋の女将もメイメイもマッコリーニもビックリする。
今机に乗っている素材は全てレア素材の討伐部位だ。そうそう拝める物ではない。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
Gオクトパスの嘴 1個
Gオクトパスの吸盤 30個
Gオクトパスの眼球 2個
Gオクトパスの足 4本
巨大な墨袋 1つ
粘つく墨 10瓶
オクトパスの身 40kg
外洋の水 4瓶
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
僕が貰った分は異世界組で分ける旨を言ったら全員から絶対受け取らないと言われてしまった、鑑識結果をコッソリ伝えるも結論は変わらずで、お金に変える悩んでいたらそうまが
「腐らないんだったら今後の為にしまっておいて、必要に応じて売ればいいと思う。売るのは簡単だが得るのは大変なもんだよ。何事も」
と言われたので、それもそうだと思い売るのを僕は辞めた。
僕は出した討伐部位を適当に4等分にして、その分け方でいいか了承を得る。
Gオクトパスの嘴1、Gオクトパスの眼球2、巨大な墨袋1は各パーティーに一つずつランダムに分け、Gオクトパスの足、外洋の水は丁度4個あるので均等分け、オクトパスの身40kgは割れる数なので10kgに分けるそしてGオクトパスの吸盤と粘つく墨は吸盤を新加入予定の3パーティーに渡して墨をエクシア達にした。
既に3組のパーティーは一度受け取りに断りを入れていた以上文句はないらしいが受け取り辛い。
そして女性陣は非常に嫌がっている。
エクシアは適当にうなづくので、渡して終わろうとするも触るのも嫌がる3パーティーの女性陣。
自分達の宿泊場所に置きたくないらしい。
エクシアのパーティーは何事もなく見慣れた感じだが、他の銅級パーティーはそうではない。
見掛けることさえ稀な素材だが、見てくれが取り敢えずグロテスクなのだ。
そして、ひとつひとつが…とにかくデカイ。
しかし、マッコリーニだけは商人の目でキラキラしていた。
「私の受け取り分はマッコリーニさんの買取でお願いします!今すぐ受け取り分決めるので、今すぐ買い取ってください!触らないで済むなら少しくらい安くても構いません。」
「わ!私もそれでお願いします!」
マウニーの言葉に乗っかるミミ…水の精霊と仲が良いのにオクトパスの滑りは許せないらしい。
ルーナに至ってはパクパクして言葉にもならないので気を回したマッコリーニが
「そちらの回復師の方も同じでよろしいので?(コクコクコクコク)それ……とも、オッホン……わかりました!では分配数分かり次第すぐに調べて買取代金を用意いたします。」
「まずメンバーの方々と受け取る分のご相談をお願いします。」
「コクコクコクコク(ルーナ)」
少し話し合った結果3組のリーダーがマッコリーニに買取でお願いするようだ。それもこれもロズ先輩の一言がデカかった。
「お前さんがたが受け取りにくい気持ちもわかる。俺も前はそうだった!でもお前達はもうギルド ファイアフォックスの準メンバーであると言っても良いよな?テスト受けて(受かるだけ)なんだから……だったら同じギルメンとして受け取るべきなんじゃないか?」
「「「!!!!!」」」
「そして冒険者は金が入り用だ!リーダーがしっかりしてないとメンバーが露頭に迷う!メンバーに何かあってから、金がありませんだったら仲間はどうなる?」
「「「!!!!!」」」
「今は上手く使いこなせない素材でも、金貨にすれば仲間の装備が買える、町や村に拠点が作れる、遠距離の旅の資金にもなる!そして仲間の命を救う為の大切な資金にもなりうる…助けられるその時に必要な金が無いとお前達は今の仲間との絆を確実に失う……昔の俺が居たパーティーの様にな…」
「「「え!」」」
彼ら各リーダーはロズとウマがあったようで、今度4人で簡単な討伐依頼をしてみようと言う脳筋パーティーを組む話をしていた……接近戦4人のパーティーなんて何かあった場合どうしようもないだろうに…。
その話の中、僕がG・オクトパスの部位の話をしたのでロズは話の方向性を変えて冒険者のリーダーのあるべき姿、そしてその話の中にロズは自分の昔話を混ぜてしたようだ。
彼のような冒険者がなぜ銅級なのか僕も3人共わからなかったが、少なくとも3組のリーダー達には彼の思いは伝わったようだ。
「「「いえ!マッコリーニさん!僕らの分は全て買取でお願いします。少しでも高くお願いします!万が一の時の仲間の為に!」」」
この後、リーダー3人とロズは大いに盛り上がり翌日はそれは酷い二日酔いだったらしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
==登場人物・用語集==
『精霊』
モンブラン(性別不明) (聖樹の精霊)
水っ娘ノーネーム(水の精霊)
『ギルド』
ギルド・ファイアフォックス ギルド等級 銀3級
紅蓮のエクシア R「ギルドマスター」♀ (銀級2位)
ロズ(戦士・タンク)♂銅級3
ベン(戦士)♂銅級3
ベロニカ(弓使い)♀銀級3
ゲオル(魔法使い)♂銀級3
ザッハ「サブマスター」♂
リープ(事務員)♀
フィーナ(販売員)♀
ゴップ(解体担当)♂
マッコリーニ商団
パーム(妻)♀(店長)
レイカ♀(娘)
ハンス(執事)
御付き1♀
御付き2♀
売り子A♀
売り子B♀
売り子C♂
売り子D♂
水精霊の洞窟村
レン爺 (村長)♂
バフゥ (武器屋の親父)♂
飯屋の女将 ムイムイ♀
飯屋の料理人 ドムドン♂
飯屋の娘 メイメイ♀
冒険者パーティー
スノウ・ベアー
銅級4人組冒険者、R戦士(ショウ3位)、タンク(ペタ3位)、シーフ(ピック3位)、レンジャー(ゼム3位)
男4人標準パーティー
レッド・アイズ
銅級5人組冒険者、R戦士(ルーム3位)、タンク(バウ3位)、魔法使い(ゼムド3位)、回復師(ルーナ3位)、薬師(ミミ4位)
男3人、女性2人の回復特化パーティー
アイアン・タンク
銅級4人組冒険者、Rタンク(ダウ3位)、タンク(ガウ3位)、回復師(マウニー2位)、シーフ(ルーナ3位)
男2、女性2の重装型パーティー
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