サンタの正体

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。今でこそ、この世に絶望して出家を検討中のわたくしですが、子供の頃はとても純真でサンタクロースの存在を信じていました」

「何歳くらいまで?」

「小学校2年生までです。クリスマスが近付いたある日、わたくしは、サンタさんに手紙を書きました」

「ははは、微笑ましいな」

「かわいいでしょう? もっと褒めてください? まあ実際は、サンタのプレゼントチョイスに毎年不満があったので、『今年は文房具セットはやめてください』という要望を書いたわけですが」

「え、かわいくない……」

「自己主張は大事ですぞ」

「それで親に怒られて、サンタがいないって気付いたのか?」

「いいえ。わたくしは、封筒にしっかり封をして、表面に宛名を書こうとしました。ですが困ったことに、サンタの住所を知りません」

「現実的だな」

「その頃から郵便が好きだったんですよ。ほら、今でもレターパックライトで離婚届を受け取るのとか得意ですし」

「いや得意じゃないだろ得意だったらおかしいだろ」

「住所の件を親に相談すると、サンタさんは有名人だから、名前だけで届くのだと説明されました」

「それで嘘に気付いたのか?」

「いいえ、気付きませんでした。ところが、いざ名前を書いてポストに入れようとすると、母にものすごい剣幕で止められたのです。『やめなさい、それはママが預かっておくから!』と」

「まあ、そうなるな」

「純粋の結晶だったわたくしも、その様子を見てさすがに『おかしくね?』と思いました」

「それでサンタの正体に気付いたんだな」

「はい、そうです」

「で、その年のクリスマスプレゼントは?」

「文房具セットでした」

「草」

「クリスマス直前だったから、すでに用意してたんでしょうね……。あ、翌年からはちゃんと別の物になりましたよ。ともかく、皆様も素敵なクリスマスをお過ごしください。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る