桃太郎
「どうも、浦島太郎です」
「わたくしは講師の亀でございます。浦島殿は、『桃太郎』の童謡をご存知でしょうか?」
「あんな野郎の歌なんて知りたくもないぜ」
「わたくしもまったく同感ですが、ここは1つ、ライバルの調査と参りましょう」
「その歌ってあれだろ? お腰につけたきび団子……ってやつだろ?」
「はい。2番までは有名ですが、3番以降の歌詞が結構ひどいんですよ」
「どんな風に?」
「3番では、お供がこう歌います『行きましょう、行きましょう、貴方について何処までも』」
「きび団子たった1つで、たいした忠誠心だな」
「お供チョロ過ぎ。あるいはヤンデレ。さらに4番は『一度に攻めて攻め破り、潰してしまえ鬼ヶ島』」
「潰すのか」
「はい。悪いのは鬼だけなのに、問答無用で島ごとぶっ潰したようです。血も涙もありません」
「島の住人は気の毒に」
「極めつけは5番です。『面白い、面白い、残らず鬼を攻め伏せて、ぶんどり物をエンヤコラ』」
「面白い……だと?」
「ええ。鬼を血祭りにあげ、宝物を略奪した上で、さらには面白いと嘲笑しているのです。しかも、殺しは手下にやらせております」
「自分の手は汚さないってことか。なんたる悪人」
「でも彼、モテるんですよねぇ」
「ぐぬぬ、納得いかない」
「理不尽ですが、いい男性よりも、悪い男性の方がモテるって言いますからね。浦島殿も鬼を倒して、身ぐるみ剥ぎ取って、高笑いしつつ生き血をすすってみては? モテるかもしれませんよ」
「でも俺、武器とかないし」
「そこはほら、わたくしが援護しますので」
「亀って戦えるのか?」
「攻撃力は低いですが、守備力は最強ですとも。甲羅に隠れてしまえば、仲間が全滅しても本人は無傷」
「それ、援護してないんじゃ……」
「そうですね」
「そうですね、じゃねえ! 俺を殺す気か!」
「ははは。浦島殿もモテるために、こういうブラックさを身につけてください。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」
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