月が綺麗ですね
「どうも、浦島太郎です」
「わたくしは講師の亀でございます。今日は十五夜、中秋の名月ですね」
「団子を用意して月見をする日だな。しかし、どの方角を見ればいいんだろう?」
「基本的に、満月は日没頃に東から昇ります。なので、夕食後にお月見をするなら、南東の方角を見ればよろしいかと」
「日没頃……つまり、昼間に満月が出ることはないのか」
「小学校の理科で、そう習いませんでした?」
「もう忘れたけど、確かに言われてみれば、昼間に見えるのは細い月ばっかりで満月じゃないな」
「はい。そもそも確実に見られないなら、十五夜にお月見するなんて風習は生まれません。ところで、かの夏目漱石は、英語の『I love you』を『月が綺麗ですね』と訳しました。出典が明確ではないので、後世の創作とする説もありますが、文学的でロマンチックな告白ですよね」
「そうだな。ただし、センター試験でやったら×になりそうだけど」
「センター試験本番に遅刻ギリギリで到着して、入口にいた道案内のお姉さんと教室まで一緒に猛ダッシュした話をしていいですか?」
「しないでくれ」
「わかりました、しないでおきます。もうしたも同然ですが」
「お前はともかく、何故お姉さんまで猛ダッシュしたんだ?」
「口頭の道案内だけでは何となく不安で、わたくしが教室に入るのを見届けてくれたんですよ。親切じゃないですか」
「なるほど、お前1人じゃ教室に辿り着けないと判断されたわけか」
「そうとも言いますね」
「そうでしかないだろ」
「ちなみに、センター試験の結果はズタボロで、国立の受験をあきらめたことを言い添えておきます」
「お前は、お姉さんの親切を無駄にしやがって……!」
「今はこういう世相ですので、夜は外出しづらいですが、好きな人と満月を見上げたら是非『月が綺麗ですね』と伝えてみましょう」
「強引にまとめたな」
「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」
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