お試しチップ

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。この機会に打ち明けますが、わたくし実は、大航海時代が好きなのです。まだ見ぬ新天地とか、開拓者とか宣教師とか、とってもロマンがありますよね。むしろロマンしかない」

「ああ、わかるよ」

「そんな大航海時代の面影を求め、わたくしはマカオへ行きました。今から15年前のことです。当時は、マカオの歴史地区が世界遺産に登録された直後で、ちょっとしたマカオブームが起こっていました。ただ、ですね。わたくし、すべての史跡を見たのですが、マカオ自体がさほど広くないこともあって、最終日の観光時間が予想外に余ってしまったのです。なので、暇潰しにカジノを見学しました。本当に見るだけのつもりでした」

「なるほど、そこが地獄の始まりだったわけか」

「シクシク……」

「けど、言葉もルールもわからない中で、よくチャレンジする気になったな?」

「それがですね、入口で50ドルのお試しチップを貰ったのですよ。香港ドルの50ドルは、円にすると700円程度ですが、使わないのも勿体ないと思いまして」

「まあ、そのまま日本に持ち帰っても意味ないからな」

「なので他人の真似をして、適当にテーブルに置いたら、よくわからないまま勝ってしまい、50ドルが一瞬で100ドルになりました。1分で700円稼いだということは、時給換算で42,000円です。ただ、その後色々なカジノに幾度となく出入りしましたが、お試しチップを配っていたのは本当にその時だけです。果たして運が良かったのか、それとも運が悪かったのか」

「そのお試しチップの存在が、カジノに通うキッカケになったわけだな」

「はい、タダほど怖いものはありません。皆様も充分にお気を付けくださいませ。恋愛とギャンブルはハマったら負け、です」

「経験者は語る」

「まあ恋愛は、ハマって負けるのも楽しいですけどね。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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