シングルライダー

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。遊園地に行ったら、まずはジェットコースターでテンションを上げたいですよね」

「けど、ジェットコースターって人気だから、どの遊園地でもたいてい長蛇の列なんだよなぁ」

「わかりますぞ。進まない列、しびれる両足、不機嫌そうな彼女の顔。あれはとんだ苦行ですよね。そんな時は『シングルライダー』を活用しては如何でしょうか?」

「シングルライダー?」

「その名の通り、人数の都合で出来てしまった空席に1人で乗って、人気アトラクションの待ち時間を大幅に短縮する制度です。今はこういう状況ですが、コロナ以前はTDRやUSJなど、多くのテーマパークで実施されておりました」

「けど、デートなのに1人で乗るのは……」

「と、思うじゃろ? しかしですね、利用者を実際に見ていて気付いたのですが、そもそもジェットコースターに乗っている最中は会話しないので、恋人と席が離れてしまっても意外とそんなに問題ないんですよ。それでいて、終わった後の興奮は共有できて、まさしくイイトコ取りなのです」

「そういうもんか?」

「そういうもんです。節約した時間で他のアトラクションに乗ったり、食事やショッピングを楽しんだり、もはやこの制度を活用しない手はありません」

「確かに、待ち時間が長くて疲れると、デート全体の印象が大幅に下がるからなぁ。それがないのは大きなメリットかも……?」

「はい。その利点に比べたら、ジェットコースターで席が離れるデメリットなど、微々たるものかと」

「わかった、俺も今度からその制度を活用してみるよ。さすがは亀、色んなデートテクニックを知ってるな」

「知ってるも何も、そもそもわたくし1人遊園地が趣味なので、アトラクションは常にシングルライダー利用でございます。えっへん」

「それ、威張るところか……?」

「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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